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  • 1人~4人
  • 45分前後
  • 14歳~
  • 2022年~
44名
4名
0
約6時間前

【レビュー】拡大していく自分の領域を眺める楽しみ!匠の技で作られた心地良いゲーム感!

【評価8/10】

カードフリップ✖️ネットワーク構築

本作は2024年ドイツ年間ゲーム大賞エキスパート部門の最後の3作に残った作品。惜しくも受賞は逃したが、シンプルなルールの中に確かな爽快感と面白さが感じられる良作だ。

既に多くの方がレビューされているので、せっかく読んでいただける方のために少し違う視点を提供できるように頑張ってみたい。


喪失と成長のスパイラル

本作はズバリ「拡大と縮小を繰り返しながら、最後には『こんなに置いても良いの?』というくらいに盤面に広がって終わる解放感」が心地良いゲームだ。

本作の序盤は6枚の「調査デッキ」からカードを1枚ずつ捲り、指示に従って地図中心のスタート地点隣接マスからキューブ(探検家)を配置していく。デッキの構成は最初、5枚の基本カード+1枚の時代探検カードのみ。時代Ⅰではスタート地点の近くをうろうろするだけで精一杯だろう。


しかも、調査デッキが尽きると1つの「時代」(他のゲームで言うラウンド)が終了してまずは「縮小」が起こる。各プレイヤーは時代の終わりに盤面に置いたキューブを全て除去しなければならないのだ。

ただしこの縮小は若干押し留める事ができる。実はキューブを置く流れの中で、同じ地形(草原、砂漠、山地)のひとつながりを全てキューブで埋めることができたら、キューブのうち1つを「村コマ」に置き換えることができる。時代終了時に取り除くのはキューブなので村コマは盤面に残せるのがポイントだ。

そしてこの村コマ、縮小への抵抗でもありながら拡大への足掛かりともなる。これ以降の時代では、村コマの隣からキューブを置き始めることができるようになるのだ。言ってみればスタートマスが増えるようものだ。これにより、時代が進むにつれどんどんキューブを置きやすくなっていく。

さらに拡大への足掛かりはもう一つある。調査デッキの拡大だ。新たな時代に入る際、調査デッキには「時代探検カード」が1枚追加される。こうして調査デッキの枚数は時代Ⅰでは6枚だったものが時代Ⅱで7枚、時代Ⅲで8枚と徐々に増え、最後の時代には9枚になる。

しかも、時代が進むにつれて増える時代探検カードは単にカードが1枚増えるという以上の意味がある。というのもデッキから時代探検カードが捲られた時、プレイヤーたちは強力な「調査カード」を発動できるのだ。時代探検カードはいわばパワーカードのトリガーである。28枚ある調査カードはどのカードでも基本カードの2〜3枚分に匹敵する効果を持っており、最後の時代にはこんなパワーカード達を4回も使えるのだ。これが気持ち良くない訳がない

本作をプレイした時の心地よさはこうした「縮小によるストレスと、縮んだ以上に広がることで得られる代償的な快感」、いわば「喪失と成長のスパイラル」が波のように何度も押し寄せることで生まれるのではないかと思われる。人間心理をついた巧みなゲーム構成だ。

最終時代の終了時。時代Ⅰの時は考えられないような広範囲の移動も可能になる。なお、写真左下のメタルコインは筆者の私物であり、本作の付属品ではないのでご注意を。


「捲り切りフリップ」によって選択肢を適度に抑制

もう一つ、本作のゲームシステムが「捲り切りのフリップ式」である事も心地よいプレイ感に寄与していると思われる。

本作の捲り切りフリップは以下のような特徴を持っている。

  1. プレイヤーはフリップカード山(調査デッキ)の構成を知っている
  2. カードが出る順番は分からない
  3. 一度出たカードは(同じ時代のうちは)もう二度と出ない

これらにより、最もランダム性が高い「シャッフル後、山から最初に捲る1枚」はおよそ見当もつかないが、我々は調査デッキの構成を完全に知っているためカウンティングが可能だ。よってカードを1枚、また1枚と捲るごとに残り山のランダム性は低下し、推測の正確度はどんどん上がっていく

カウンティングしやすいように捲ったカードを置くボードもある


この仕組みが本作に心地よい範囲の、適度に悩ましい選択肢」を提供してくれる

各時代の最初は捲られるカードが何かは全く分からない。しかしいくらランダム性が高くとも、時代の最初はしょせんスタート地点または村の隣接マスからキューブを置き始めるしかないのだ。よって選択肢はある程度絞られる。

一方で時代の後半では「キューブの隣接地にもキューブが置ける」ようになっているため、キューブ設置場所の候補が膨大になってしまう懸念がある。しかし捲り切りフリップを採用している本作では、未来がある程度予測できる。捲られる順番は分からずとも、調査デッキ山に何のカードが残されているかは分かるため、高得点を狙うための選択肢はある程度限定されるのだ。

このように、1つの時代を通して、どの時点でも選択肢を増やしすぎないことはゲームテンポを維持する上で極めて大事だ。いわゆる「ジャムの法則」からも、人間は選択肢が多すぎると選択行動が困難となることは知られている。

本作はカードを捲るほど未来予測がしやすくなる「捲り切りフリップシステム」を採用することで選択肢を増やしすぎない仕掛けを組み込んでおり、これが爽快なプレイ感に繋がっているのではないかと思う。


弱点

このように、本作は巧みな構成力で「喪失と成長のスパイラル」を演出し、多すぎない選択肢を用意する事で「悩み疲れ」が生じない程度の心地よいプレイ感を生み出してくれている。匠の技が効いた作品であり、大きな弱点というものはない。

ただし、いくつかの特徴を弱点と捉える人もいるだろう。人によっては弱点となりうるという意味で挙げておこう。

1つは箱が渋い事だ。色合いは淡く、最近の派手なパッケージを見慣れていると目立たないと感じるかもしれない。遊んでみると「人はどういう時に気持ち良くなるか」を巧みに突いたゲームであり爽快で気持ち良いプレイ感なのだが、箱からはそうしたプレイ感を想像するのは少し難しいかもしれない。

2つ目はソロプレイ感が強い(と推測される)点だ。実は筆者はまだ対人戦で遊んだことはないため推測という断りを書いたのだが、ルール的には他人の盤面に干渉する方法はないため、他者と関わるのは共通目標の早取り要素くらいだと思われる。ただ、本作のプレイ感は非常に良いので、個人的には「同時多人数でこの遊び口を味わっても良いのでは?」とも思う。ただ、濃厚なインタラクションを好む人には進んでお勧めはできない。

3つ目は色味の淡さだ。私が老眼がかってきたせいもあるとは思うが、油断していると草原と砂漠の基本カードを間違える時がある。交易路を開設した際に都市に置くトークンもかなり危険だ。世界観を大事にしたという事だとは思うが、できればもう少し色が見分けやすいと有り難かった。

4つ目は時代の終わりにキューブを取り除く際、都市マーカーや空いた宝箱マーカーをずらしてしまう場合があるという点。これも人によっては「そんな事ないよ、不器用なだけじゃない?」と思うかもしれない。ただ、人によっては「心地よいプレイ感を妨げる要素」と感じてしまう人もいるかもしれない。

上記の弱点は若干「無理矢理ひねり出した感」もある。あえて言えば、というレベルの話だ。

それくらい本作には目立った弱点はなく、良いデベロップが施された良作と言えるだろう。


まとめ

以上で見てきたように、本作は

・時代ごとに縮小はあるものの、一部押しとどめる方法も提供されており

・さらには縮小した以上に拡大していく仕組みが組み込まれているため

・ストレス要因とその解消がセットになって何度も波のように押し寄せる。

・人がどういう時に気持ち良くなるかを理解し、巧みに利用した構成力が光る作品である。

・また、捲り切りフリップシステムを採用する事で、選択肢を膨大にしないよう絞り込むことに成功しており

・心地良いプレイ感が生み出されている。

・一部、人によっては弱点と感じられる要素も無くはないものの

・総じて隙の無い良作として仕上がっている。


以上です!ソロ感があるゲームが全く受け付けない!という方にはお勧めはしませんが、それ以外の方であればぜひ一度遊んでみてください♪

最後までお読みいただきありがとうございました!正統派の紹介は既に素晴らしいレビューが複数投稿されていますので、私は違う視点をご提供出来ればと思い、このようなレビューとなりました。

皆様に「これもまぁ、有りかな」と楽しんで頂ければ、加えて願わくは皆様の良きボドゲライフに貢献できましたら何よりです^ ^


✳︎一つだけ再度注意点を。本レビューの中でメタルコインが写っていましたが、写真にも付記した通り筆者個人が本作とは別に所持しているものであり、本作の付属品ではありません。何とぞご理解をお願いいたします。



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hiro
山彦
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18toya
18toya
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