- 1人~6人
- 45分~120分
- 18歳~
- 2016年~
ディス・ウォー・オブ・マインダイスケさんのレビュー
サラエボ包囲をテーマにしたビデオゲーム、This War of Mineのボードゲーム化。
サラエボ包囲や元のビデオゲームがどういうものか、というのは詳しくはググってもらうとして、簡単に説明すると、武装勢力に包囲されて都市機能が停止し、スナイパーに常に狙われているせいで外出もままならない、という極限状況で、兵士ではない一般人がどう生き延びるか、という内容。
常に厳しい選択を迫られるイベントや、足りない食料や水、次第に厳しさを増していく寒さを乗り切るため、有り合わせのもので設備を作ってしのぎ、時には危険を冒して外に物資をあさりに出かけなければならない。
そういう点では、同じサバイバルジャンルである「ロビンソン・クルーソー~呪われた島の冒険」に近いシステム、プレイ感と言えなくもない。
ただし、プレイヤーが操作するキャラクターたちは一般市民なので、他人を傷つけることや、命が奪われることに強いストレスを受けるし、そもそも戦いに向いていないキャラクターも多い。
本当に必要な時以外は争いは避け、時にはやっとの思いで発見した物資をあきらめなければならないこともある。
そのほかに、前述のロビンソン・クルーソーと異なる大きな点として、イベントの要所でゲームブックのようにシナリオブックのパラグラフを参照するというシステムがある。
シナリオブックはA4サイズの分厚い装丁で、2000近いパラグラフがびっしり記載されている
これのせいで言語依存度はかなり高く、日本語版が出る望みも相当薄いと言わざるを得ない。愛と情熱があるパブリッシャーがあればワンチャンなくはないが……。
ゲームの流れは朝・昼・日没・夜・夜明けの5フェイズに分かれていて、夜はさらにスカベンジと夜襲の2つに分割される。
朝:その日に起きるイベントを公開し(当然状況が悪化する)、追加される寒さと共に処理を行う
昼:能動的に屋敷内を探索したり、リソースを使って施設を作ったり、作った施設でアクションを行う
日没:食事(というか飢え)の処理
夜:スカベンジに出かけるキャラクターと、屋敷内で休む、もしくは夜襲に備える
夜明け:キャラクターのステータスやスカベンジ先のロケーションの更新
というように、受動的・能動的なフェイズが交互に訪れるようになっている。
ゲーム的に行動するのは昼と夜のフェイズで、昼は屋敷マップ内に敷き詰められた廃材や扉のカードを除去して、その先のリソースを入手したり、リソースを使って暖房や調理器具、ベッドなどの施設を作成したり、作成した施設を使用したりするというクラフト的なフェイズ、夜はスカベンジ先で探索デッキを引きながら、住人との接触を避けながらリソースを獲得する、というアドベンチャー的なフェイズとなっている。
屋敷に残ったキャラクターは、夜襲デッキを引いて防衛の判定を行う必要があり、失敗すればリソースを失ったり、ケガを受けたりしてしまう。
このゲームでは、キャラクターは飢え、苦悩、ケガ、病気、疲れの5つのパラメータがあり、いずれかが4点たまってしまうと(パラグラフ先の文章に従って)ゲームから退場となってしまう。
その際に残されたキャラクターは共感チェックを行い、失敗すれば苦悩が増加する。
当然それによって苦悩が4点に達するとリタイアの連鎖が発生し、残されたキャラクターはさらに苦悩が増加するという厳しいシステムになっている。
初回プレイの際にイベント効果で苦悩が2点増加し、一気に2人退場、残されたキャラも判定に失敗し、一瞬で全滅した図
ちなみにこのステータストークンに書かれている黒と白のドットは、これによって減少するアクション数を表している。
全快状態のキャラクターは昼フェイズに3回のアクションを行えるが、黒のドットの分(一番黒ドットが多いトークンのドット数を見る)アクションが減少してしまう。
ペナルティが軽いからと苦悩を放置していると、ちょっとしたことで4点に達してしまうので注意が必要だ。
各フェイズで様々なトラブルが襲ってくるのに加えて、行為の成功判定にダイスロールが必要な場面も多々あり、苦労を重ねて積み上げたものが、ダイスの目ひとつで台無しになることもある。
理不尽さを感じざるを得ないが、そもそものテーマが理不尽な状況ではあるので、なんとなく納得できてしまうのもこのゲームならでは、と言えるかもしれない。
このように元のビデオゲームの要素を忠実に再現したシステムとなっているが(そういうゲームなんです)、その分処理やセットアップは重く、要求されるプレイスペースはかなり大きめ。
また、イベントなどを発生させるデッキの種類も非常に多く、一時的に作成されるものを含めると13種類、内容が公開されているカードスタックが3種類に加え、膨大なトークン類などもあり、いろいろな意味で重量級となっている。
それに加えて前述のスクリプトブックの存在により、言語的な壁もそれなりに厚い。
ただ、このスクリプトブックに関しては、公式のコンパニオンアプリが存在し、スマホやタブレットで内容を見ることができるようになっている。これを使用してスクリーンショットを撮り、Googleレンズと組み合わせることで簡易的に翻訳を読むことができるのが多少の救い。
コンパニオンアプリは他に鍵開けとスカベンジ処理の機能も付いているが、本編の処理とは異なり、なぜかアクション性のあるミニゲームになっていて、なぜボドゲのコンパニオンアプリでこれを……? と首をかしげるような内容だったので、スクリプト機能しか使用していない。
テーマもシステムもヘビーで、気軽にプレイするのは難しいタイトルだが、その分やりごたえはある内容なので、雰囲気に惹かれる人、元ゲームのファンかつボドゲ好きにはお勧めしたい。
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