- 3人~4人
- 70分~90分
- 10歳~
- 1999年~
ギガンテンSato39さんのレビュー
《テキサスの石油王を目指せ!》
名前すら知らなかったゲームを遊ばせてもらい非常に盛り上がって楽しかったのだが、レビューが全くないようなので感謝を込めて簡単にレビューしたい。
【1999年ドイツ年間ゲーム大賞ノミネート】
クラマー&キースリング黄金コンビのティカルがドイツ年間ゲーム大賞(SDJ)を受賞した1999年に、SDJノミネートを果たしたのが今作。デザイナーは、ヴィルコ・マンツ(Wilko Manz)。後に「五番街」 を発表したデザイナーで、このときは無名の新人だったようだ。ちなみに同年のもう一つのノミネート作は、アラン・ムーンのユニオン・パシフィック。当時のことはよく知らないが、これらの名作に肩を並べるということはかなり高い評価だったのではないだろうか。
【テーマはテキサス油田開発】
1901年1月10日、テキサス州南東部ボーモント郊外で小高い丘に開けた穴の中から突然、黒い液体が間欠泉のように噴き出した。高さは40メートルに達し、制御するまで9日間続いたという。当時世界最大のスピンドルトップ油田の発見であり、テキサス州石油ブームの幕開けだった。
引用:Wikipedia「スピンドルトップ」 |
石油の探鉱において、油層の存否並びにその位置および広がりは、坑井を掘って油層に掘り当てないと認知できない。まだ知られていない油層を探し当てるために掘られる坑井を試掘井(しくつせい:exploration well、またはWildCat)といい、そしてこの「一か八かで石油を掘り当てる山師」は俗にワイルドキャッターと呼ばれる。
原油を生産する特定区域を油田(ゆでん)というが、推定埋蔵量が5億バレル以上の巨大油田はジャイアント(ドイツ語でギガンテン)、50億バレル以上をスーパージャイアント と分類される。(参考:JOGMEC 石油・天然ガス資源情報「試掘井」「油田」)
テーマはアメリカ合衆国テキサス州の油田開発。プレイヤーは、原油を掘り当てるワイルドキャッターとなり一攫千金を狙う。見事に巨大油田(ギガンテン)を掘り当てた者が、石油業界の巨人(ギガンテン)となるのだ。
【気分を盛り上げる武骨で豪華なコンポーネント】
目を引くほど大きなメインボードには広大なテキサスの荒野が広がっており、所々に油田マスが配置され採掘塔タイルが並ぶ。ボードの左側がスタート位置になっており、各プレイヤー色のトラック駒と汽車駒がレースゲームさながらにスタートを待つ。トラックが隣接した油田では採掘塔が立ち原油が採掘されオイル駒が座布団のように積み上げられる。なんとも洒落っ気のない武骨なアートワークだが、テキサスの荒野で一攫千金を狙う油臭い男達の雰囲気がたまらない!
【ゲーム概要】
プレイヤーはアメリカ合衆国テキサス州の荒野で一攫千金を狙うワイルドキャッターとなり、トラックで油田を掘り当て、鉄道で運搬、採掘した原油を3つの石油会社へ売却する。最後に最もお金を稼いだプレイヤーの勝利だ。
ゲームの流れは以下の通り。
<1. 市場価格の変化、黒い機関車の進行>
スタートプレイヤーは、3つある石油会社(Hudson Oil Industries, Jet Oil Inc. , US Standard Oil Trust)の市場価格について特殊なダイスを振り、目の数だけ市場価格を上げ下げする。市場価格は$5000から始まり、オイル缶マーカーで表される。
次に赤いアクションカードをめくり、カードに示された数字分だけ黒い機関車を進める。この時、黒い機関車が最後のマスに到着したらゲームは即座に終了し、得点計算を行い所持金の最も多いプレイヤーの勝利となる。
<2. アクションカードの選択、アクション>
各プレイヤーは順番にアクションカードを1枚選択する。選択したカードに記載された数だけの売却許可書をもらい、移動ポイント分だけトラック、汽車を移動させる。この時、トラックが採掘タイルに隣接するとタイルを確認して採掘塔を建設しても良い。その場合、採掘タイルに記載された埋蔵量だけのオイル駒を採掘塔の下に設置する。
<3. 石油の採掘と鉄道での輸送>
全てのプレイヤーは自分の採掘塔からオイル駒を1つずつ採掘しなければならず、輸送には汽車駒がその採掘塔の列と同じか前の列にいなければならない。自分の汽車で運搬できない場合は、黒い汽車か他プレイヤーの汽車に運搬してもらう必要があり、輸送代として$3000支払う必要がある。
輸送したオイル駒は3つの石油会社のうち1つを選び、その会社の倉庫に置く。オイル駒はいくつでも置けるが、ラウンドの終了時には2つしか保管できず、余った分は破棄される。
<4. 石油の売却>
各石油会社について順番に売却許可書を用いて競りを行い、落札したプレイヤーのみがオイル駒を市場価格で売却することができる。3つの石油会社全ての売却が終わると余剰の石油を破棄してラウンドは終了。次のラウンドへ進む。
上述の通り、ゲームは黒い機関車が最終マスに到達した時点で即時終了となり、その時に最も所持金の多いプレイヤーの勝利となる。
【一攫千金を狙うギャンブル性が面白い!】
このゲームの最大の魅力はそのギャンブル性だと思う。しかも何重ものギャンブルが仕掛けられており、一筋縄ではいかない。
まずは、油田に置かれた採掘タイルだ。とにかく埋蔵量の多い油田がなければ話にならない。このため各プレイヤーは荒野をトラックで駆け回ることになるのだが、タイルに描かれた採掘塔の数により埋蔵量が違う。採掘塔1本のタイルは2〜4、2本のタイルは2 or 5、3本のタイルは4〜6。基本的に遠い所にある採掘タイルの埋蔵量は多くなっているが、中間にある採掘塔2本の赤タイルは2(ハズレ)または5(当たり)になっておりさらにギャンブル性が高い。
またラウンドの初めにダイスを振ることで、各石油会社の市場価格が上下するのだが自分の狙っている会社の価格が上がるか下がるかはダイス運次第であり、一喜一憂することになる。
【他プレイヤーとの読み合いが熱い!】
各プレイヤーの手番が終了すると各採掘塔からオイル駒を1個ずつ採掘し、好きな石油会社の倉庫に保管しなければならない。やはり市場価格の高い会社で売りたくなるのが人情というもの。しかし、当然のごとく他プレイヤーも同じことを考えているわけで、市場価格の高い会社を虎視眈々と狙っている。このいつ、どこの会社へオイル駒を売却するのか、という読み合いが非常に熱く、どこかで賭けに出る必要がある。
【競りは意地の張り合い!】
全てのプレイヤーがオイル駒を倉庫に置いたら、3つの石油会社それぞれについて売却権を競りで決める。そう、各会社につき原油を売却できるプレイヤーはたった1人だけ!当然、市場価格の高い会社で売却しようとオイル駒を積んでいるわけで、もし競りに負けてしまえば余剰のオイル駒はたったの$1000で処分されてしまうのだ。
つまり売ると決めたからには負けられない競りに身を投じることになる。これは辛いw。苦労して貯めた売却許可書を湯水のように使い、男の意地と意地のぶつかり合いである。それだけに売却する会社選びは慎重にならざるを得ず、競りに勝利した時の気分は最高だ。
<良いところ>
- 武骨で豪華なコンポーネントで気分が上がる。
- ギャンブル性の高い仕掛けが満載で一喜一憂できる。
- 「負けられない競り」が面白い。
<悪いところ>
- タイルのめくり運が悪いと、どうにもならないことがある。
- マップに変化がない。
- プレイ可能人数3〜4人と幅が狭い。
とても魅力的な作品なのだが上記の通りやや欠点も目につくため、後にデザイナー本人によるリメイク作品として「Black Gold(2011)」が発表されている。プレイ人数2〜5人、モジュラーボードを採用しており上手く欠点を補っているようだ。
<重量>
BGG Weight: 2.57(2022/6/16現在)、中量級。
【感想】
とてもクセの強い作品だ。メインボード一杯に広がるテキサスの荒野とそこに散在する油田。華やかな要素など微塵もない武骨で荒々しい環境の中、汗と油にまみれた男達がトラックで走り回り一攫千金を夢見て採掘する。そんなアメリカンドリームを体験させてくれる野心あふれる作品と感じた。
恥ずかしながら「ギガンテン」という作品名すら私は知らなかったが、1999年のドイツ年間ゲーム大賞ノミネート作品となっている。その年の大賞は私の大好きな「ティカル」、ノミネート作品は「ユニオン・パシフィック」である。さらに同年のドイツゲーム大賞ランキングには、クニツィアの「ラー」も名を連ねている。これらの名作に肩を並べてノミネートされたことはとても素晴らしく、また高く評価されたことも納得の作品である。
好き嫌いの分かれる作品だとは思うが、私は粗削りで不器用なところがむしろ気に入った。いささか古さも感じるが独特の魅力にあふれたこの作品に興味を持たれた方は、ぜひ一度試してみて欲しい。
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