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  • 1人~4人
  • 30分~120分
  • 14歳~
  • 2023年~

ドッガーランドSato39さんのレビュー

672名
12名
0
5ヶ月前

《部族を率いて厳しい狩猟生活を生き延びろ!》

木を伐採し石を採掘して道具を作り、動物を狩猟して糧とする。そんな原始的な狩猟生活にはどこか生物学的な魅力があるように感じるのだが、現代の我々にはあまり体験する機会がない。そんな狩猟民族の生活を体験させてくれる「ドッガーランド」をレビューしたい。


【ゲーム概要】

1万5千年前の大氷河期の終わり頃、のちに北海に沈んでイギリス海峡を形成する土地がまだ存在していた。獲物を狩り、天然資源を利用して毎日を生き延びていた土地は「ドッガーランド」と呼ばれている。

プレイヤーは先史時代の部族の長となり、生き延びるために狩猟や採集を行いながら周囲の土地を探検し、発展することを目指す。

ゲームは8ラウンドからなり、が交互に訪れる。各ラウンドは5フェイズで構成され、プレイヤーが順番にアクションを計画した後、同時にアクションが解決される。生き残った動物が移動するとラウンド終了となる。


【原始時代の狩猟生活を楽しむ!】

大きなメインボードの中央には初期配置タイルが9枚並べられ、中央にはプレイヤーの村が存在している。その周囲には木の伐採地、石の採掘場、貝の採れる湖、兎が飛び回る草原があり、夏の季節にはウマトナカイが姿を現し、冬はバイソンマンモスが闊歩する。

自然の恵みに感謝しながら、これらを採取して日々を暮らしていく。現代の我々が失ってしまった悠久の暮らしはとても雄大で、思わず原始的な生活に引き込まれてしまう♪

本作ほど原始時代を感じさせてくれるボードゲームは遊んだことがないと思う。


【基本はワカプレだが、変化するマップが面白い!】

基本的なゲームシステムはワーカープレイスメントになっており、アクションは8つ。

①居住地の建設
②手工芸品の作成
③誕生
④資源
⑤大きな獲物の狩猟
⑥フレスコ画の制作
⑦能力の向上
⑧シャーマンアクション

これらのアクションを部族駒を配置して計画していくのだが、ワーカーには2人分の働きをする「族長」や独自のアクションを行える「シャーマン」など特殊な駒もいる。

基本的にはアクションスペースにワーカーを配置していくオーソドックスなワカプレスタイルなのだが、面白いのはトナカイや馬など大きな獲物の狩猟はマップ上の動物駒のあるマスへ移動しなければならないことだ。

しかもこれらの動物は毎ラウンド終了時に一定の規則に沿って移動する。もっと詳しく言うと配置された地形タイルに動物の移動方向が示されており、その矢印に沿って動物駒が移動していく。これはあまり見たことのないシステムで、大型の獲物を追いかけて狩猟するのは何とも面白い。

またマップ外周へ移動すると外の世界を探検し、果物や資源を採集できる地形がランダムで配置される。タイルにより採集できる数が違ったりするので、刻一刻と変化するマップに合わせて村を移動させて柔軟に対応することが求められる。安定した生活のできない原始時代を感じられる面白いシステムだ。


【資源は有限、賞味期限のある苦しい生活】

個人ボード左側は住居スペースとなっており、一つの住居にワーカー3人が住めるようになっている。ワカプレなので当然ワーカーを増やしていきたいのだが、それには新しい住居が必要だ。住居建設には木と石と道具が必要なので、まずはそれを調達しないといけない。・・・なんだかアグリコラみたいだ。

右下は食物の貯蔵庫になっている。ラウンド終了毎にワーカーは食事をしないといけないので食物の確保は欠かせない。果物1つで1ワーカー、肉1つで2ワーカーを養っていける。食事をできなかったワーカー1人毎に−2点の不足タイルを受け取ることになるのだが、50点ほどのゲームなのでかなり痛い。

そしてなんと食べ物には賞味期限があり、食べずに置いておくと腐っていく!果物は3ラウンド肉は2ラウンドしか持たないので、常に新しい食材を求めて活動していく必要があるのだ。非常に過酷で厳しい生活を要求されるところが辛くも面白い。


【多彩なアクション】

8つあるアクションについて、いくつか簡単に触れておく。

<変化をもたらすシャーマン・アクション>

ワーカーには部族駒、族長駒の他にシャーマン駒もある。シャーマンは独自のシャーマン・アクションを行うことができ、ゲームに変化をもたらしてくれる。

シャーマン・アクションは8種類あり、スタートプレイヤーを取れるものや、双子の誕生を祈願したり、メンヒルなどの巨石を建てたりできる。いずれもゲーム展開を変える特殊なアクションでシャーマンしか実行できない強力なものなのだが、各アクションはゲーム中1回しか実行できない。

特に2ワーカーを同時に増やせる双子の祈願は強力で早いほど有利と考えられるため、先に取られてしまうとぐぬぬとなってしまう。このシャーマンをいつ使うか悩ましく面白い。

<フレスコ画制作によるエリアマジョリティ>

メインボード左上部の洞窟ではフレスコ画を描くことができる。フレスコ画の種類はラウンドが進行するにつれて追加されていき、大型動物を狩猟するとその獲物の形状が個人ボードに記録され、その絵を描くことできるようになる。

このフレスコ画はゲーム終了時に勝利点をもたらすほか、各段でエリアマジョリティになっており、ゲーム終了時に上段、中段、下段のそれぞれにおいて1位は4点、2位は2点が与えられる。なかなか自分の狩猟した獲物とマジョリティが合わず苦労した。

<手工芸品の作成>

ボード左下の村では手工芸品を作成することができる。これもゲーム終了時に勝利点となるのだが、正直なところただでさえリソースはギリギリなのにこれらを作成している余裕はない。ただそれだけに作成すると他プレイヤーよりもリードできることは確かだ。苦労して作成する意味はある。

<居住地の建設と冬のアクション>

基本的にはワーカープレイスメントなのでワーカーは多い方が良い(食料に余裕があればだが)。しかしそれには住居が必要なので、このアクションで家を建築する必要がある。

居住地には「質素な居住地」と「豪華な居住地」の2種類があり、入れる人数と勝利点が異なっている。自分に必要な方を建築すれば良い。

またこれまで紹介したアクションのほとんどは、冬に行う場合に毛皮が必要となる。きっと原始時代も冬は寒かったのだろう。しかし冬だからとしゃがんだりしていると遅れをとってしまうので、毛皮を払ってでもアクションを行う必要がある。ほとんどフレーバーのためのコストのような気もするが、忘れがちなルールなので注意したい。

<目的タイルが指針となる>

ボード右上には目的タイルがランダムに置かれることになり、ゲーム進行の目標となる。先取り要素となっており、最初に達成すると5点、2番目だと3点となる。これも達成がかなり難しくなっているが、達成すると他プレイヤーよりも有利になることは間違いない。なんとか達成したいものだ。

ちなみにソロゲームではソロ専用の目的タイルとなり、それらの達成が勝利条件となる。ソロゲームは、通常ゲームとはまた違った目標の面白さがあり楽しい。


【細かいルールが多く、計算が面倒】

ちょっとネガティブな点にも触れておこう。

ゲーム全体を通して細かいルールが多いのだが、特に狩猟する際には獲物の種類によって遠征隊に必要な人数と能力値が設定されている。能力値は道具を追加することで増やすことができるが、人数はその数のワーカーが必要になる。ただし族長は2人分でカウントされる。

このゲームの最大の見せ場である大型動物の狩猟なのだが、この計算がやや面倒だ。特にアクションを計画しているときにこのややこしい計算をさせられるので分からなくなってしまうし、テンポが悪い。これは少々残念なポイントだった。

画像


<良いところ>

  • 原始時代の狩猟生活の再現が素晴らしく没入感がある。
  • 移動するマンモスなどを狩猟するのが楽しい♪
  • 毎ラウンド要求される食事の確保が厳しく辛く悩ましい。

<良くないところ>

  • 遠征隊の編成などやや細かいルールがあり煩わしい。
  • 広いスペースが必要。

<インスト、プレイ時間>

インスト:40分、プレイ時間:100分(2人プレイ)
BGG Weight: 3.58(2024/7/27現在)

重量級ゲームだが、予想よりもプレイ時間は短め。アクションの処理が全プレイヤー同時処理となっているので慣れるとサクサクとプレイしていける印象だ。それでいてインタラクションもしっかりとある。


【感想】

何と言っても没入感が素晴らしい。原始時代を感じさせる狩猟生活が楽しく、特にマップ上を移動していく大型の獲物を狩猟するのは斬新で面白いと感じた。その獲物も夏と冬で現れる季節が違うため、計画性も大事になってくる。

またアグリコラ以上に食料確保が厳しく、毎ラウンド果物や肉の確保で頭を悩ませることになった。ただ食料を準備できなくても−2点の減点をもらうだけであり、脱落するようなことはないのでシステム的な配慮は感じられる。

土地の資源は採集するだけなので簡単だが、2人プレイだと1回で枯れてしまうため常に新しい土地の探索が必要になる。不便だがこれも狩猟生活の醍醐味を感じられて面白い。そして大型動物の狩猟に行くのだが、それほど多くは出現しないので取り合いになり、良いインタラクションになっているように感じた。

その大型動物はマップ上のどこに移動するか分からないのだが、出現ポイントは決まっている。そのため、トナカイやマンモスなど美味しい獲物のタイルにはすかさずメンヒルなどの巨石を置き、他のプレイヤーに取られないようにする必要があり、その駆け引きもまた面白い。

ただ残念なのは、遠征隊を編成する際にワーカーの数や能力値などを計算しなければならず、これが何ともややこしく、他のアクションにもワーカーを使いたいのでカウントが実にもどかしい。具体的な表があれば解決できるかもしれない。もう少し自由度が高ければプレイしやすかったと思う。

そういう意味で、面白いのだが万人におすすめできるゲームではないように思う。テンデイズゲームズさんが少部数生産ラインナップにした理由は、きっとそういうところなのではないかと感じてしまった。

ソロプレイも試したが、案外オートマの処理は簡単でプレイしやすい。ちょっとファミコンレベルのランダムな動きに笑ってしまうが、3体のオートマキャラが進むと大型動物は狩られ、資源も枯れていくのでドキドキする。勝利条件の目的達成は難易度が高く、やりごたえもありそうだ。ちなみにまだクリアしたことはないw

原始時代をテーマにしたボードゲームはいくつかあると思うが、ここまで狩猟生活をリアルに再現したゲームは他になくその存在は唯一無二である。とにかく雰囲気が最高なので、テーマに興味のある方はぜひ一度試してみて欲しい。

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