- 2人~5人
- 45分前後
- 8歳~
- 2019年~
ファスト・スロースBluebearさんのレビュー
緑色のボックスデザインにこだわり続ける『電力会社』で有名なフリードマン・フリーゼ氏がデザインした動物たちの明るいレースゲームです。
テーマとなる動物の主役は…なんと『ナマケモノ』!
タイトルの『Sloth(スロース)』とはナマケモノの事で、従ってタイトルの意味は『早いナマケモノ』ということになります。
元版は2019年の発表で一部輸入版が国内流通していたようですが、評判が良くてなかなかお目にかかれない作品でした。
そんな折、日本のサニーバードさんから日本語版として手ごろな価格でリリースされたので、これを機に入手することにしました。(5人プレイできるというのも大きい)
思ったより大形の箱の表紙にゆるいタッチで大きく描かれたナマケモノのインパクトがなかなか強烈です。(持ち運び&収納はちょっと大変です。)
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さっそくメンバーを招集してプレイしてみたところ、…やっぱりナマケモノ。
非常に平和でゆる〜い(悪い意味ではないです)ゲームでした。
攻撃や妨害要素がほとんどなく、動物好きの女性陣には特に好評でした。(大人の男性諸氏には毒が無さすぎる気もしますが…)
■大きな両面ボードを組み合わせて地形を作る
この大きなボックスに両面2つ折りのボードが2枚。
これを広げて2枚つなげると広いマップが出来上がります。(思ったよりけっこうでかい)
そこには六角マスで区切られた森や草原や川や荒地などの地形が描かれており、ここをいろんな動物が移動してゆく形です。(どうしてもこのマップボードを見ているとウォーゲームがやりたくなるのはオッサンゲーマーの悪い癖だな、笑。渡河侵攻に対する遅滞戦術とかやりたくなります。ごめんなさい、気にしないで…)
従って地形の組み合わせは2×2=4通りですね。
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■登場する動物たちは12種類中6種類だけ。
この動物たちの楽園(?)には全12種類の動物たちがいるのですが、一度のゲームに登場するのは、そのうちの6種類だけ。
列記してみると、「ロバ」「ゾウ」「ワニ」「ユニコーン」「アリ」「ワシ」「ヤギ」「キリン」「ウサギ」「ヒト」「オランウータン」「イルカ」です。
あれ?ひとつだけ想像上の動物が混じっているけど…まあ気にしない(笑)
あと「ヒト」も動物の1種として想定されているけど…まあこれも気にしないでおきましょう。
ゲームに使用する動物の選択は「最初のゲーム」では推奨動物と配置が決まっており、推奨とあれば一応そのデザイナーの意図に従うのが筋でしょう。(これ非常に面倒くさかった!ちょっとマイナス)
その後は、6枚の動物カードの両面のどちらかを選ぶ形で6種類の動物を選んで使用することが推奨されています。(この動物カードはなぜか切り離されておらず、1枚のA4厚紙シートになっていて、自分で勝手に切り離せということらしい。ちょっと不親切かな)
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2の6乗なので64通り。
従って、ルールブックに記載のある通り、ボードの組み合わせと合わせると256通りの異なるゲームができる事になりますね。
うん、こういうバリエーションの多さは大好きです。
慣れればカードの両面の制限に従わずに、ランダムな6種類の動物でプレイすることも可能です。
その場合は、動物の組み合わせだけで12C6=924通りですから、ボードと合わせて3696通りの組み合わせとなりますね。(どんなに繰り返しプレイすることを想定しても、100通りを越えていれば、もう充分のような気も…)
■ナマケモノはやっぱりナマケモノだった
ここのナマケモノは、各地に点在している葉っぱが食べたいのに、自分で移動する気がありません(笑)。
そのため各地に散らばっている動物たちに働きかけて、《乗っけてもらう》ことで移動します。
各手番に1種類の動物を選んで移動させ、隣に来たら乗っけてもらい、移動後に隣に下ろしてくれます。(動物たち、なんて親切なんだ~!きっとナマケモノたちは皆に愛されているんだな~)
これらの動物たちは、ボード上に点在していますが、誰かの《所有》や《支配》になる事はなく、常に誰もが動かす事ができ、誰のナマケモノでも利用できる、っていうのが、このゲームのキモです。
この動物の移動ルールが、動物ごとにそれぞれ違っていて、うまく利用しないとなかなか上手に移動できない仕掛けですね。
ロバはいろんな地形を進めるけど遅い、とか
ワニは早いけど川と川岸しか動けない、とかですね。(喰われないのだろうか?)
このルールがそれぞれ別に理解しなければいけないので、ちょっとやっかい。(しかも全12種類いますからね。一度に6種類とはいえ、初心者は混乱しやすいです。)
ここ気を付けた方がいいです。(ルールブックの表記も少しわかりにくいので…)
特徴が違うので全員がちゃんと正しく理解するのに、我々でさえ少し時間がかかってしまいました。特に「アリ」は独特なルールになっているので要注意です。実際最初のプレイで途中までルールを間違えてプレイしておりました。(1コマしか動かせない、という基本ルールが適用されないことを失念しておりました。ご注意下さい。ちなみにオランウータンもです。)
…しかし、ナマケモノを乗せて運ぶことができるアリって…ありですか?(笑)
■移動スピードが独特
動物の移動スピードは、指定した動物カードを好きなだけ出して(ユニコーンのみ1枚限定ルール)その合計だけ進めます。たまればけっこう大きい。
しかし独特なのはこのカードをひく方法。
それぞれの動物カードは混ぜたりせずに別々の山になっており、なんと《数字の小さいもの順》に並んでいるのです。
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使ったカードも捨て山にせずに、やっぱり《小さいもの順》に、山の下に入れます。
だから最初に動かすプレイヤーはあんまり早く動けない。
手札が進むと、いつの間にやらスピードアップ!
しかし手札が循環するとまた最初に戻るので、ガタンと落ちるので、そのタイミングを計らなければならないところがちょっと独特で面白い。
また、盤上に9枚あるある葉っぱのうち8枚を取れば勝ちなのですが、なんと葉っぱを取ればとるほど引けるカードの数が少なくなり、出せるカードの枚数も少なくなります!
普通は後半にかけて《加速》しそうなものじゃないですか。
ですがこのゲームは逆です。
誰かがトップをあえて妨害しなくても、勝利に近づいたナマケモノほど自動的に動きが鈍くなってくる仕掛けです。
だからあえて妨害要素をなくしてあるのだとわかる粋なデザインですね。勝利条件に近いプレイヤーほど、自動的にブレーキがかかるシステムは優秀です。
おそらくデザイナーは、これがやりたくて「ナマケモノ」という題材を選んだのでは?と推測されます。
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1人の女性プレイヤーが言いました。
「きっとこの子たち、葉っぱを食べると眠くなっちゃうんだね」
うん、…納得です。
■のんびりしながらも《やりくり》が必要な競争
上記のように直接的な、妨害要素のないゲーム展開は、のんびりまったり進みます。
個人的な好みでいけばもう少し邪魔したいところですけど…テーマがナマケモノですから、攻撃・妨害っていうのもちょっとイメージに合わないですね。
せいぜい相手が使おうと計画している動物を先に使ってしまう、ぐらいでしょうか?
あと、各動物は同じマスに止まれないので、目的の葉っぱエリアの前で止まって邪魔するのもある程度できます。
ただ、どちらもそんなに強烈な妨害じゃないので、ギスギスしたりはしないでしょう。
そういう強い干渉が嫌いなプレイヤーさんや子供たちには好みだと思います。
うちらの場合は女子チームも含めて、非常に楽しかったんだけどやっぱりちょっと物足りなかった感じ。
そんな平和なゲームでした。
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【追記】
このゲームには別売りでかわいい木コマが発売されているそうです。
もともとの仕様だと、木のディスクに付属のシールを自分で張る形式。(「海賊組合」を思い出した。)ちょっと安っぽい感じ。
今後購入を検討している人は気をつけて下さい。各種の紹介記事で、オリジナルの木ゴマがかわいい!と絶賛されていますが、このゲーム基本のセットだけを購入すると、このようなディスク型のコマしか入ってません。(そのコマが当然入っているものと思い込んで買ってしまわないように注意です!)
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その別売りの評判がやたらいいみたいですが、別にオリジナルの木製ディスクでもプレイ自体には何の問題もありません。ゲームの完成度に影響がないなら私たちは別にこのままで全く問題ないです。(他のゲームでもありがちなアップグレード駒とか3Dマップとか、…すみません、個人的には全く興味がありません、笑。ゲームの出来じたいが変わるわけじゃないので…。)
でも、このように自分たちの好みでバージョン変更できるって言うのは、とてもいい事だと思います。(女子チームは欲しがって「買って買って♪」とうるさい。でも今品切れで売ってないのですね。残念だな君たち♪)
よりかわいく、ほのぼのしたイメージでやりたい人は今後購入を検討してみてもいいでしょう。
【追記】
今回の日本語版セットには、プロモカードである『カメレオン』が含まれています。他の動物と同様に手札に確保しますが、「他の動物と混ぜて唯一一緒に出す」ことができます。
使用するとちょっと作戦のバリエーションが増えますね。
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