- 1人~4人
- 60分~120分
- 14歳~
- 2020年~
デューン:インペリウムmaroさんのレビュー
目的は勝利点10点を獲得することという、どこかで見た条件を持つワーカープレースメント。これによりレース的な展開がもたらされ、ワカプレとしてはやや珍しい感触となっている。デッキビルド+ワカプレというメカニズムが特徴である。
基本的な進行は一般的なワーカープレースメントそのもの。各アクションスペースには資源・カードの入手、軍隊の派遣(リザーブおよび紛争ゾーン)、資源の変換、ワーカーの増員などがある。また、特定のアクションスペースを使用することでファクションの影響度を上げることができる。
勝利点の獲得方法は、ファクション(派閥)への影響度を上げる、コンフリクト(紛争)に勝利する、勝利点獲得の効果をもつカードを入手する、といったところが主たるものである。
ワーカープレースに際して手札からデッキカードを使用するがその際にはカードの種類とアクションスペースの種類が適合してなければならない。このとき、スペースの効果に加え、使用したカードの能力も発動される。
派閥の影響力を高めるには派閥関連のアクションスペース使用が必要だが、特定のカードの獲得・使用によっても可能だ。当然、各アクションの円滑な遂行のためにも効率の良い資源の入手というのが当然重要になる。
デューンインペリウムでは一般的な定期収入や定期コストの支払いはなく、拡大再生産よりはその場や各自の目的に応じたアクションの選択がクローズアップされている。その分、前述したアクションスペースとデッキカード効果の組み合わせや、リソースマネージメント、イントリーゲカード(後述)の有効利用、紛争の勝利などを計画的に行う必要がある。
紛争について記すと、各ラウンドに1回、戦闘フェイズがあり、各プレイヤーは軍隊コマの数を競い合い、順位ごとに紛争カードのボーナスを得る。ボーナスには勝利点の他、各種リソースなども含まれる。なお、10枚ある紛争カードが全てめくられる(10ターン経過する)ことも終了のトリガーとなる。
軍隊コマの置き場所はリザーブと、紛争ゾーンにわかれており、プレイヤーはその前段階のアクションフェイズでストック→リザーブ→紛争ゾーンと軍隊を移しておく必要がある。あくまで当ラウンドで解決される紛争では紛争ゾーンにあるコマの数が比較される。ちょうどエルグランデのような感じだ。この紛争ゾーンは1箇所だけなので、エリアマジョリティ的な要素はすくない。純粋な数量によるマジョリティ争いである。
なお、判定には軍隊コマの数の他、ストレングス(武力)パラメータが相加されて参照される。政略カードの中にはこの戦闘フェイズで使用可能なものもある。紛争カードには勝利者(1-3位)に対する報酬が記載されている。
イントリーゲ(政略)カードは紛争の際のベースとなる武力を高めたり、資源を得たり、勝利点を獲得したりのほか、さまざまな特殊能力を持つ。
そしてこのゲームで重要なファクターであるデッキビルドについて。デッキカードの扱いはクランクと類似したものである。おおきな特徴は2つ。
まず1つめは、アクションスペースの使用には記号が適合したデッキカードを使用しなければならない。これが実行できるアクションに対する制限となる。
ここがやはりデューンインペリアムの特徴的なところだ。勝利点獲得のプロセスは意外と単純だが、この、採れるアクションが抑制されており、なおかつそれをデッキ構築でなんとかするのが悩ましい。プレイ感は全く異なるが、オルレアンもバッグビルド≒デッキ構築であり、引いたチップにより使用できるアクションスペースが制限されている(思考回路的には逆であるが)ところが似ている。
2つ目として、アクション後には(他のデッキビルドでよくある)デッキカード購入のためのターンがある(reveal公開ターンと呼ばれる)。ここではリザーブカードと呼ばれる常設のカードも購入できる。アクションで使用しなかったデッキカードはここで新規カードの購入コストに充てられる。これらのデッキカードは購入時、使用時、公開時にそれぞれ異なる効果を有している。リソースを得たり、軍隊や武力を充当したり、影響力を上げたり、まれには勝利点を獲得したりという特殊な能力を持つデッキカードも存在している。トラムウェイズでもそうであったが、デッキカードに2重、3重の役割を持たせているところは興味深い。
BGGでも非常に評価が高く、現時点では海外でもプレ値となっている。クランク程度の言語依存はあるが、8割方のカードはアイコン化、あるいはごく簡単な英文であるので少し準備をしておけば問題ないと考える。
有志の方のカード訳は公開されている。一つ一つのメカニクスは既存のものであり、ワカプレやデッキビルドの経験があれば感覚的に理解しやすいだろう。
BGGののウェイトは2.8くらい。ワカプレとしては単純だが、そこにいろいろな要素、メカニズムが内包されていて、中量級程度のプレイ感であるが十分ヘビーゲーマーも楽しめる作品となっている。10点の勝利点で勝ち(正確には10点で終了フラグとなる)、のカタンの例にも似て、派閥による勝利点獲得のところは、最多〇〇的なインタラクションも含まれている。10点の勝利点獲得というレース的要素と、デッキ改良による加速というのは相性が良く、システムは異なるが、クランク譲りの理念を垣間見ることができる。
その他、他のプレイヤーのリソースに対して干渉するカードも存在するが、必要以上に強いインタラクションは持たず、ソリッドな展開とバランスの良さが光る作品である。前にも述べたが拡大生産要素は弱く、その部分はデッキの改良に依っている。ワーカーも初期は2人、増やせるのはそこから1人のみだ(臨時ワーカーは存在する)。勝利点1点1点の重みがあり、いたずらに収束性が高まることなくルール量の割にはじっくりとプレイできる。
他の多くのワカプレのように細かい勝利点を積み重ねるというより、簡単には取れない勝利点を確実にものにしなければならない。
逆に言うと、派手な拡大再生産を好む人にはやや地味で退屈と感じる可能性もある。また、「面白さ」の本質的な部分はデッキビルドに負っているといえ、コンボ的な連鎖が存在するにしても限定的なものであり、爽快さは感じなかった。ドミニオンのようなカスケード様の連続技はなかなか使えないシステムであり、このあたりが楽しめない人がいるかも知れない。
この作品におけるワカプレ要素、デッキビルド要素はそれぞれ単体で見たらいささか物足りない。ワカプレ面での複雑さ、デッキビルドによる気持ちよさに欠けているのだ。しかしデューンという世界観がおまけに見えてしまうほど、これらのメカニズム同士の結びつきはまるで当たり前のように、素晴らしく体現されている。
対応する人数は1-4となっているが、対人プレイを楽しみたいのであれば3人以上が推奨となる。1-2人プレイでは総勢3人となるようダミープレイヤーが入る。ダミーは専用デッキにより制御され、アクションスペース、紛争についてプレイヤーの邪魔をしてくる。ただ、ソリティアでのプレイも十分以上楽しめるレベルだと感じた。
興味がある方は、外国のRohdo氏などのプレイスルーの動画を見るのもおすすめだ。これまでに挙げたようなゲームの予備知識があれば、画像だけでもおおよそやっていることは分かるだろう。
評価8/10 重さ6/10 リプレイ性7/10
- 41興味あり
- 16経験あり
- 5お気に入り
- 7持ってる
タイトル | デューン:インペリウム |
---|---|
原題・英題表記 | Dune: Imperium |
参加人数 | 1人~4人(60分~120分) |
対象年齢 | 14歳から |
発売時期 | 2020年~ |
参考価格 | 未登録 |
ゲームデザイン | ポール・デネン(Paul Dennen) |
---|---|
アートワーク | クレイ・ブルックス(Clay Brooks)ネイト・ストーム(Nate Storm) |
関連企業/団体 | ダイアウルフ(Dire Wolf)アスモデイタリア(Asmodee Italia)ラッキーダックゲームズ(Lucky Duck Games) |
maroさんの投稿
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