- 2人~4人
- 90分~150分
- 14歳~
- 2019年~
ドミナント・スピーシーズ:マリンmaroさんのレビュー
ドミナントスピーシーズ(DS)は種の繁栄をテーマとした重量級の名作だが、今回、海洋に舞台を移して10年ぶりに帰ってきた。
このテーマでは昨年日本語版も発売されたエボリューションが記憶に新しいが、エボリューションが動物種ごとの特殊能力をフィーチャーしたハンドマネジメントであるのに対し、DSはワーカープレイスメントとエリアコントロール/マジョリティを主軸とした、かなり複雑なボードゲームである(BGGのウェイトは約4)。 2019年に逝去されたchad jensen氏はウォーゲームのデザイナーでもあることから想像できるとおり、ROOTにも似た強いインタラクションを持つ。むしろ、インタラクションというより直接的な闘争と言っても良いくらいである。
DSとDS marine(DSM)の違いを見る前に、DSMの概念を簡単に説明する。
まずプレイヤーはそれぞれ異なる生物(頭足類、甲殻類、魚類、爬虫類)を担当。盤面には、熱水噴出孔、外洋、砂の平原、海草の草原、海山、珊瑚礁、昆布の森、陸地の8種類の地形タイルが配置されている。これらのタイルには、さまざまな種の餌となる要素が存在しており、それは藻類、腹足類、プランクトン、海綿、ミミズ、太陽などである。生物種によって必要とする餌(DSではエレメントと称する)は異なる。
プレイヤーは、自分の担当する生物に適した環境を作り出し、また生物の特性を変化させ、地形タイル上でのマジョリティを得るように操作していく。
アクションはワーカープレースメントの様式である。豊富、独立栄養、枯渇、適応、退行、種分化、放浪、地殻変動、移住、競争、進化、支配の12種類がある。
これらにより、ボード上のエレメントを追加/削除したり、生物種の餌適正を変化させたり、探検/移動したり、他者を排除したり、特定エリアでのスコアリングを行っていく。
DSMでは生物種の特性を規定するカードや、進化アクションでのボーナスカードなども用意されている。
悩ましいワカプレとウォーゲームライクなマジョリティ争い、エレメントをめぐるパズル要素が渾然一体となった素晴らしいシステムである。
とはいえ、DSはプレイヤーあたり1時間程度の時間を要する長時間ゲームである。ルール自体も結構難解である上に、エレメントまわりの要素は思考性も複雑で、ヒマなマニア向けと思われてもおかしくないものであった。
DSMでは、いくつかの点でルール変更が取り入れられており、結果としていくぶん簡潔でプレイ時間の短縮を達成し、コアとなる要素により集中できるようになっていると感じる。
大きい変更点としては、DSではワーカーの配置が計画と実行に分かれていたのが、実行のみとなっている。また、DSでの生物種による非対称性は割愛されている。ドミナンスの計算もいちいち行う必要性がなくなっており、進化アクションによる勝利点獲得と、支配アクションの特殊ポーン(ワーカー)の運用にまとめられている。
煩雑とも言える要素はばっさりカットし、より一般プレイヤーのストライクゾーンに合わせて調整してきたといえるのではないか。とはいってもまだゲーマー向けの作品であることには変わりないが。
対象人数もDSでは2-6人であったのが2-4人に変更されている。プレイ数が少ないため断定できないが、より少人数に特化されリバランスされているように感じる。ただ、特記しておきたいのは、DSMの発売によりDSの価値が下がることは決してないということだ。マルコポーロでも同じ思いであったが、それぞれの良さがあり、どちらが上と一概に判断することは難しい。
先程は内容的にウォーゲームのようであると記したが、エレメントをめぐる攻防は現実の世界と同様に共生・共闘の要素も多分に含まれており、決して他の生物の抹殺が目的ではない(マジョリティ達成の手段としてそのような行動を行うことがあるにしても)。タイルとエレメント配置のランダム性もあり、リプレイ性の高さも折り紙つきである。
10年以上前の作品でありながらいまだにBGGの100位以内にいるDSはまさにオンリーワンといえる様式をもつゲームであるが、本格的な体裁は保ちつつそれがより洗練されて手軽にプレイできるようになった。
アグリコラができるようであれば充分楽しめるだろう。興味があったが遊べていない人はもちろん、ワカプレ+エリアマジョリティと聞いて食指が伸びる方にも是非プレイしていただきたいと思う。
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