- 2人~5人
- 30分~40分
- 9歳~
- 2011年~
ヴォーパルスBluebearさんのレビュー
『マグノリア』『ボルカルス』で知られる上杉真人氏が2011年にリリースした、カードによる領土発展のゲーム。
純国産の同人リリースでしたが、高く評価されて、海外で『ペーパーテイルズ』として再販されたのは有名な話。(ごめんなさい、ルール的にはどこか変わっているのかはわかりません。ただイラストはガラリと雰囲気を一転し明るくなっているようです。)
プレイヤーは5人まで。
プレイ時間はおおむね60分以内ってところです。(人数が変わっても、進行はほぼ全員が同時におこなうのでそれほどダウンタイムは感じません)
カードイラストも渋く、異世界の年代記っぽい雰囲気は、女性陣にも好評でした。(ちょっとカード色も含めて全体の色調が地味で暗すぎるとの評価でした、笑。特にパッケージ表紙だけ見ると何のゲームだかさっぱりわかりませんね。
◾️基本はカードドラフト
アナログゲームにおける《ドラフト》とは、《選抜》の事で、手札のカードの選び方に特徴があります。有名なものに『世界の七不思議』『イッツ・ア・ワンダフルワールド』がありますね。
手札は5枚なのですが、最初に配られた5枚をそのまま使うのではなく、1枚選んで自分のものにしたら、残りの4枚は隣へ回します。これを繰り返して自分の手札を《選抜》するわけです。
なので、自分が欲しいカードを考えるだけでなく、誰が何のカードを選んだのか、相手に何のカードを渡したのか、を考えるため、スタート時点から運の要素の少ない駆け引きが生じるので、最近流行りのシステムですね。
そんな《ドラフト》方式特化のゲームをシンプルかつコンパクトにまとめた軽量〜中量級の作品でした。
1時間以内のゲームとしては、しっかり『ゲームやった感』が味わえます。
◾️テーマは島の覇権争い
プレイヤーは島の支配を争う領国の領主となり、100年に及ぶ争いでその支配権を得るのが目的です。
そのためには限られたカードで
①隣国との戦争に勝利する。
②必要な資源や資金の確保
③発展に必要な建物の建設
を全てやらねばならないわけですから大変。
なぜ大変かって?
何とたったの4ラウンドしかないからなんですよ!(100年戦争なのに!)
そのため、何をどうするのか、ちゃんと計画を立ててプレイしないと思うように点数が伸びず、勝てない仕掛けですね。
(つまりテキトーにやると勝てないゲームって事ですね。うん、これ大事です)
実際やってみると、自分がやりたい事が達成できないうちに終了して悔しいので、個人的にはせめて5〜6ラウンドあって欲しかったかなぁ…。
◾️プレイ感は『世界の七不思議』と似た感じ
戦争すると言っても直接攻撃の要素はなく、各ラウンドごとに自動的に両隣と戦力を比べるだけ。勝てば得点ですが負けても特にペナルティはありません。(個人的な好みで言えば相手を選んで戦争を仕掛けたいし、負けたら損害が出る緊迫感が欲しいところですが…まあ、時代なのでしょうね。)
《木材》《食料》《鉱石》などの資源も、トークンなどでストックするのではなく、カード表示数だけ『産出したもの』として使い切りです。お金だけは専用コインで管理します。(このコインがデザインもカッコよく厚みもあって、なかなか良い♪)
《建物》は、共通で5種類あり(元々から拡張が同梱されており、あと2種類増やせるのはありがたい!)これを建設する事で様々な特殊効果を得ることができるので、これが勝利のカギとなるわけですね。
《建物》カードには裏表の2段階があって、レベルが上がるとさらに効果が高まる仕掛けです。このために各種資源や資金が必要になるわけです。
このようにやるべき事は盛り沢山なのに、前述したようにたったの4ラウンド!(だから建物もどっちにせよ4枚までしか建てようがない)
戦力も増やしたいけど、そのためにお金も欲しいし、資源も必要。
方針を定めた戦略が必要なゲームなのですが、正直言って1回目はどうしていいやらわかりませんでした。(わからない時はみんなとりあえず戦力アップに走り、激しい戦力競争になりましたが、慣れてくると他の戦略が取れるようになってきます)
◾️カードに寿命がある!
このゲームの最も特徴的なルールが、この《寿命》です。
前述したように4ラウンドで100年戦争をやるので、何と1ラウンドは《25年》です。なのでほとんどのカードは、せっかく場に出しても2ラウンドもすると(50年ですからね)寿命で引退です。
なので、このローテーションも考えて運用しなければなりません。
この感覚がけっこう斬新。
オマケに、ラウンドごとに載せて寿命をカウントする《経年マーカー》がやたらカッコいい!
年を経ると強くなる《民兵》《鉄巨兵》とか、寿命を延長できる《癒やし手》とか、強いけど最初っから経年していて1ラウンドしか戦えない《古参兵》とか、寿命に関してもいろんな戦力に影響するので、ここもけっこう布陣を考えます。
せっかく活躍した戦力が経年によって亡くなっていくのは、わかっててもなんか寂しいですね。
このルールのおかげで、たった4ラウンドにも関わらず、100年戦争を戦った気がするのはGoodです。
大変面白かったです。(連続3ゲームやりました!)
◾️追記:拡大再生産について
拡大再生産は、自分の勢力が大きくなっていく事が、そのまま楽しいものですよね。
一般的に言って拡大の加速度が大きいほど爽快感も大きいのですが、その場合初期の拡大に失敗すると他者との差が挽回出来ずにワンサイドゲームになりやすいという欠点を持ちます。
そのためほとんどのゲームではカウンターとしての《反作用》を構造に組み込みます。
何かしら加速を食い止める《反作用》が存在するのです。
たいていのゲームは《反作用》として以下の3パターンのどれかを入れます。
①ルール的に加速が自動的に鈍るような仕組みを入れるか(ドミニオンとかウィングスパンですね)
②大きな差にならないうちに数ターンでゲームが終わるようにするか、
③他者にどんどん妨害介入をさせるか(昔のゲームはたいていこれ)ですね。
じゃあこのゲームはどうしているかと言うと
拡大再生産でありながら非常に加速が抑えられている。(そしてターン数も短い)
ドラフトによってどんどん新しいカードが手札に回って来て、どんどん資金や町が増えていくので、一見すごく加速するように見えるのですが、何とこのゲーム、置いたカードに《寿命=タイムリミット》が存在するわけです(それもほとんどのカードがわずか2ターンしか残らない)。
また場に出せるカードも基本4枚(ランクアップしても5枚が上限)なので、たくさん場に並べて圧倒する事がそもそもできない。
だから加速しても加速しても、そのトップスピードは思ったより早くならないようになっているわけです。
ここをうまく戦略に組み込まないと勝てないゲームになっているところが非常に良く出来ていると感じました。
昔は反作用のやり方が③の強い介入ばかりでしたからね。(だから挽回のチャンスも含めて総ターン数も長かったものです。個人的にはこっちの方が好きなんですけどね。途中途中の凸凹や長期的な流れの変動を楽しめるので)
やっぱり最近の洗練されたゲームなんですねー。(ターン数も短いし)
- 89興味あり
- 344経験あり
- 92お気に入り
- 276持ってる
Bluebearさんの投稿
- レビューNORAD3:米ソ戦略核戦争おそらく僕が知る限り最も簡単に熱い対戦が楽しめる《戦略核戦争》ゲームで...3日前の投稿
- レビューまじかる☆ベーカリー〜わたしが店長っ!〜最近は絶滅寸前かと思うほど珍しい、直球の《殴り合い》《どつき合い》満載...約2ヶ月前の投稿
- レビュー10 デイズ・イン・ザ・USA『チケットtoライド』『エルフェンランド』等が有名なアラン・ムーン氏が...約2ヶ月前の投稿
- レビューたたらばと森大阪の『たなごころ』というゲームサークルがデザインした、森との共存をテ...3ヶ月前の投稿
- レビューエルグランデ中世スペインの領主となって勢力争いをするテーマの古典的名作。1995年...3ヶ月前の投稿
- レビュースターシップ・サムライ今作はなんと《サムライ》をモチーフにしたスーパーロボット兵器(笑)を駆...3ヶ月前の投稿
- レビューウィッチャー・ザ・ボードゲームポーランドのベストセラーファンタジー小説をボードゲーム化した作品。原作...4ヶ月前の投稿
- レビュー翡翠の商人『ナショナル・エコノミー』で有名なゲーム工房スパ帝国がリリースした競り...4ヶ月前の投稿
- レビューコズミック・エンカウンター簡単に言えば、もう何でもありのメチャクチャな大宇宙戦争ゲームですね。い...4ヶ月前の投稿
- レビューレッド・ライジングピアース・ブラウンのベストセラーSF『レッド・ライジング/火星の簒奪者...7ヶ月前の投稿
- レビューレベル・プリンセススペイン発のユニークな《トリックテイキング?方式》と言われるカードゲー...7ヶ月前の投稿
- レビュー銀河英雄伝説/アスターテ・アムリッツァ会戦田中芳樹氏の人気SF長編小説(アニメ版も人気)である『銀河英雄伝説』に...7ヶ月前の投稿
会員の新しい投稿
- レビューカバンガ!4人でプレイ。誰かが上がってしまいそうな時にその人がカバンガ!されると...1分前by ぷにたろちゃん
- レビューインフェルノクニツィアジレンマを感じられる作品。UNOのようなルールなのでインスト...13分前by ぷにたろちゃん
- レビューコロレットカードゲームなのに、手札がない。丸見えの選択。結果は点数。どれもこれも...約1時間前by マツジョン@matz_jon
- レビューニア&ファー荒野の町を拠点に、伝説の遺跡を探す冒険がはじまる。ゲームブックで展開す...約1時間前by マツジョン@matz_jon
- レビューワイアームスパン08/10点 ウイングスパンよりもプレイがスッキリしていて個人的にはこ...約2時間前by グレン
- レビューハートオブクラウン~極東辺境領~第二版最強!圧縮系女子オウカ姫 ハートオブクラウン第二版の第1拡張が、この極...約3時間前by TM of Yokohama
- レビューハートオブクラウン:セカンドエディション【メイン要素】デッキ構築【ルール理解】姫の擁立で直轄地を作るのが少し分...約4時間前by TM of Yokohama
- レビュー世界の七不思議ドラフトゲームの鉄板。ゲームの進行自体は配られたカードから一番良いもの...約4時間前by きゃぷ
- リプレイ大なり小なり水族館『大なり小なり水族館』【スコアアタック】案今回は前回3人で行った【スコ...約5時間前by あんちっく
- レビュータイムボム:新版正体隠匿系の中では人狼などと比較して、気軽に嘘がつける。ゲーム途中で脱...約8時間前by 43
- レビューサイレンベイ警察組織に新たに出来た捜査部門、音声分析班。そこは犯罪捜査を音のみで捜...約8時間前by リーゼンドルフ
- レビューハートオブクラウンデッキ構築なので、「ドミニオン」好きとしてはもちろん知っていたけど、ア...約9時間前by ヒロ(新!ボードゲーム家族)