- 1人~4人
- 60分~100分
- 14歳~
- 2022年~
ティルトゥムハナさんのレビュー
「ツォルキン」「マルコポーロ」でお馴染み、ルチアーニ&タッシーニコンビによる中~重量級ゲームです。ゲーム内容は省略して、感想を中心にレビューします。
後でちゃんと褒めるので、まずは気になった点から。
【気になった点】
プレイした第一印象は「地味で古くさいユーロ」でした。最近のゲームに多い個人ボードの固有能力も、テキストで溢れたカードもなく、特別で目新しいギミックもなし。とにかく堅実、裏を返せば地味。
まずはテーマとコンポーネントがめちゃくちゃ弱いです。プレイヤーはヨーロッパの商人になってヨーロッパを旅して回るのですが、プレイしててまったく商人感も旅感もないですね。メインボードのヨーロッパ地図は驚くほど飾り気がなく、取って付けたように地名が書いてあるだけ。試作段階のようです。ゲームのシステムもテーマと全然連動してません。重要な要素の「見本市」からはまったく見本市っぽさが感じられませんし、商人なのに建築家を旅させて謎の柱を建てて回るのもかなり謎です。なぜ契約達成で柱が解放されるのか?食事を払って貰える紋章ってなんなのか?ゲームシステムありきで、無理やりテーマを後付けした感じがします。
そしてそのゲームシステム。ダイスドラフトもアクションポイント性もボード上の陣取りも契約の達成も、他で多用されるシステムばかり。堅実ですが全体的に目新しさがなく、個性が乏しい印象でした。
知ってる範囲のルチアーニ作品では、「ツォルキン」には独創的な歯車ギミックとテーマの連動性が、「マルコポーロ」には固有能力による強烈すぎる個性が、「バラージ」には水力発電をギミックに落とし込む美しさと悪辣な干渉が、「ダーウィンズジャーニー」にはロマンチックなテーマと見事なコンポーネントがあったと思います。ティルトゥムはテーマもコンポーネントも個性も欠けている気がしました。
また、大きな欠点としてセットアップの手間が挙げられます。大量のタイルはプレイ人数毎に使用しないタイルを仕分けなければならず、とにかくめんどくさいです。
【良い点】
結構ぼろくそに叩きましたが、このゲーム、何回かプレイするとなぜかクセになります。個人的にかなり好きです。
このゲームが何より面白いのは、ボーナスタイルとフリーアクション(職務)によるアクションの連鎖だと感じます。ゲーム自体はダイスドラフトによるアクションを1ラウンド3回、4ラウンドで計12回実行するだけなのですが、ボーナスタイルやフリーアクションにより1ターンで想像もできないほど激しく動く事ができます。まるで濃密なパズルをプレイしている感覚ですね。綺麗に1ラウンド3ターンを最大化できたときはアドレナリンが出てきます。
また、限られた手番と盤面で出来ること、出来ないことの取捨選択が非常に悩ましく、「見本市(ラウンド目標)にはできるだけ参加したいがこのラウンドは間に合わなそうなので、今回の見本市は捨てて他で稼ぎながら、次のラウンドの見本市で大量得点を目指す、、」みたいな思考が本当に楽しいです。作戦がはまったときの達成感はたまりません。
目的を達成する手段が複数あり、得点ルートも複数あり、初期セットアップにより展開も毎回かわるので、何度もプレイしたくなります。プレイすればするほど味が出てくるゲームだと思います。
【まとめ】
希薄なテーマといまいち弱いコンポーネント、地味なゲームシステム。初回プレイ時の印象は正直「わざわざティルトゥムじゃなくても良いかな」でした。印象に残るボードゲームは他にたくさんあります。
しかし、何回かプレイして「これはかなり面白いかもしれない」に変わりました。きっちり悩ましく、様々な戦略、戦術を試したくなってきますし、上手くはまったときの快感や他プレイヤーに先を越されたときの悔しさはまさにユーロゲーム。インパクトは弱いですがやり込み甲斐がある、好きな人にはたまらないゲームだと思います。
プレイ人数は4人だとダウンタイムが気になるので、3人くらいがベストかなと感じました。
ちなみにプロモカードを使うと、初期位置や初期リソース等の非対称スタートが可能になります。個人的には同じ場所からスタートした方がインタラクションが強くて好きですが、気分転換には良いと思います。
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