- 1人~5人
- 90分~120分
- 12歳~
- 2016年~
テラフォーミングマーズYYYKKKさんのレビュー
何世代にもわたって火星を人類が住める星にテラフォーミングしていく、壮大なゲームです。
火星ボードに、タイルを置いていくので、一見エリアマジョリティのゲームにも見えますが、実質は、主たるシステムは、200枚のユニークなカードを使って場の構築をしていくことにあります。そういう意味で「ボードも使うカードゲームである」といってもいいかもしれません。
2時間は覚悟したほうがよい重量級ゲームでありながら、それぞれまったくちがう企業の能力と、カードの引きによって、同じ展開がほぼ絶対にない、やればやるほどおもしろいスルメゲームです。1ラウンドが1世代というスケールの大きさ、各カードのフレーバーと雄大な火星ボードによって表現されたSFや科学好きならたまらない世界観などが相まって、大人気なのも頷ける傑作ゲームと言っていいと思います。ただし、「傑作」と感じるにいたるまでにはいくつか条件がありました(最後で述べます)
イメージがつかめる程度にゲームについて簡単に説明していきます。
まず、こんな風に、能力の違う企業を選択します。基本的には、どの企業の能力もみなそこそこ強いです。
ボードはこんな感じです。
-
真ん中は当然火星
六角形のヘックスに合わせて森や都市、海のタイルを置いていきます。 -
上部は、酸素濃度トラック
0%で開始して、14%で完成です。 -
右側は温度です
-30°でスタートして8°で完了です。 - 周囲のトラックは、TR(テラフォーミングレート)と言います。
最初は全員、20からスタートします。このトラックは、企業がテラフォーミングに貢献すると、上がります。
基本的には、TR(テラフォーミングレート)は海を置く、森を置いて酸素を作る、温度を上げる、といったことであがります。最終的にはこのTRは勝利点になりますが、ゲーム中は毎ラウンドのお金の収入にも直結するので、非常に大事な値です。
ゲームは、上部の酸素濃度トラックと、右側の温度トラックがそれぞれマックスになったら終了します。つまり、酸素と温度がマックスになるまでに、手札からカードをプレイして場を作って自分を強化しつつ、テラフォーミングに貢献することを中心に、勝利点を確保する、がこのゲームでプレイヤーがやることです。
こちらが個人ボードです。
左上から、右にむかって、お金、土木建材、チタン。左下から、植物、電気、蓄積した熱源です。中央の背景が茶色の部分が、それぞれの資源の毎ラウンドごとの生産量です。上段は手札のカードを場に出すために使い、下段は森(酸素)や気温など、ボードを変化させることが多い感じです。ただ、お金は基本万能ですし、とにかくいろいろなカードや企業があるので、一概には言えません。
以上のシステムの上で、ゲームは基本的には手札のカードをお金などの資源を払って自分の場を構築していくことで進展します。カードを場にだすと、算出できる資源が増えたり、カード自体がアクションになって出来ることが増える、つまりどんどん強くなっていく「拡大再生産」ゲームです。
しかしやはり特徴は、とにかくユニークカードが200枚と膨大にあり、やはりユニークで強力な各企業の能力と相まって、展開が無数に存在すること。またそれらを駆使して、さまざまなコンボが存在し、ゲームに恐ろしいほどの深みが発生していることです。
この世界観が好きで、かつこのゲームの深みに触れたプレイヤーグループであれば、膨大な回数を遊び倒せるのではないでしょうか
さて、冒頭でこのゲームのことを「傑作と感じるまでに条件があった」と書きました。
このゲーム、もちろんそもそも人を選ぶゲームです。そもそも火星やSFに興味を持てない、とか、2時間超のテキストだらけのゲームが苦手な方は、触れない方がよいと思います。
しかし問題は、このゲームについては気に入る素地があったとしても、そこに気がつかないで離れてしまう可能性があるのではないか、ということです。あくまでサンプルは僕自身ですが、その可能性を乗り越えるポイントは次のようなものでした。
-
最初の1-2プレイはインストだと思うしかない
ゲームの勝ち筋やコンボ、戦略などはすべてカードに集約されています。2回程度のプレイスルーでも、すべてのカードに触れることすらまだ程遠いですが、輪郭くらいは見えてくるのではないでしょうか。僕は、3回目でやっとこのゲームが表現したいこと、プレイヤーに体験させたいことが見えてきました。
(プレイしなくてもカード能力をすべて熟読すればこのポイントはクリアできますが、プレイのみで輪郭を把握するなら、という話です)
- 拡張「企業時代」のカードは使うべき
強すぎるカードもけっこう入っている拡張カードですが、やはり入れると戦略の幅が広がります。 - 「企業時代」の拡張ルール「初期の資源生産量がすべてゼロ」は必須
基本ルールは、「初期の資源生産量はすべて1」です。これをすべてゼロにし、各企業の特殊能力による生産量アップをそこから加えます - バリアントルール「カードドラフト」は採用するべき
上記の拡張カードとセットです。カードの引き運の偏りの是正をしつつ、戦略がかぶらない場合に欲しいカードが回ってきやすくなって行動がしやすくなったり、逆に相手を妨害できる可能性もでます。すこしプレイ時間は伸びますが、ランダムピックよりも圧倒的におもしろくなります
以上4点が、僕にとってはこのゲームの乗り越えポイントでした。
さらに述べると、僕自身はこの中でもっとも面白さの認知につながったのは、「初期の資源生産量はすべてゼロ」だと感じています。ルール上は、拡張「企業時代」の導入とセットですが、拡張を入れないプレイでもゼロの方が面白いのではないかとすらおもいます(慣れてきたら拡張は必ず入れると思うのでこの案はあまり意味はありませんが)。
「初期生産すべて1」だと、(何もしなくてもすべての資源が手に入ってしまって)各企業の能力が丸まり過ぎてしまうのに対して、「すべてゼロ」では、企業の長所の優位性も強まるとともに、短所による制約も大きくなります。つまり長所と短所それぞれが際立ちます。ここに、ドラフトも入れば、何を伸ばし、何を捨てるかのジレンマも強く結びついてきます。
以上が、テラフォーミングマーズという大型ゲームに対する僕の感想です。
なお、何種類かあるらしいんですが、各マスのトークンを固定できるギミックのあるプレイヤーボードはぜひ欲しいところです。トークンがけっこうすべって動くので、快適にプレイに集中しようとすると必須な気がします
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