スノープランナーいかさんのレビュー

拡張のキックスターターが行われる（掲載時既に終了済）とのことで、基本版のレビューを。

ダイスを振らないダイスプレイスメント。ゲレンデのホテルを経営するゲーム。

手番ではダイス（ワーカー）を配置し、アクションエリアの効果を得る。ダイスの目に応じて得られる効果が変わり、大きいほど効果が良くなる。

・良く感じた所

目標カードの調整 /ホテルの景観を改善することで達成される目標カードは基本的には、最も早く達成した者が得点を得られるが、テラフォの褒賞のように、ゲーム終了時カード毎の条件を比較して最も優れた者に得点を与える。　獲得が出遅れたとしても、終了時の条件でまだ得点を得る機会が全プレイヤーに与えられている調整は終了時までプレイヤーのモチベーションを維持させるよい効果をもたらしていると感じる。

テーマ性 / プレイヤーは閑散期から繁忙期までのゲレンデそばのホテルを経営する。ダイスは従業員であり、ゲストを自らのホテルに宿泊させてリソースを得られるが、ゲストは毎ラウンド帰宅しようとするため、プレイヤーは連泊してもらえるよう景観を整えてゲストの機嫌を伺う。ホテルの質が高くなれば、VIPの宿泊や練度が上がってより強力なプレイヤー能力が得られるようになる…と、テーマの再現と拡大再生産の循環が丁寧かつ見事に再現されている。

・良く感じなかった点

アクションエリアの単調さ /ゲーム中のワーカーを置ける場所は、資源を得られる4箇所、カードを得られる箇所、プレイする箇所、わずかな資源と次ラウンドの手番順を得られる箇所、大きな得点を得られ、次以降自分のみダイスを配置できるカードを得られる箇所と一時的なダイスを得られる箇所に分けられる。ゲームを通して成長するダイスの目により効果がわずかに上昇するものの、初めから全ての箇所に配置可能であり、しかもほとんどがただ何かを得るだけなのは単調に感じる。

例えば同ジャンルであるアグリコラでは毎ラウンド新たなエリアが公開され、しかもゲーム毎に変化するためプレイヤーを飽きさせず、毎回異なる戦略を取りたいと思わせる。このゲームでは各プレイヤーの個人能力、カードが変化するものの、アクションエリアが変化しないためキャラの能力に沿わせつつほぼ同じ戦略を取るか、カードに沿って手なりでプレイするかという選択肢しかない。

個人能力はいくつもバリエーションがあり、どれもある程度は特化するインセンティブを与えてくれる。しかし、残念なことにカードは少ないリソースを払ってやや多いリソースを得る効果がほとんどであり、戦略に幅を持たせられるとは思えなかった。カード毎によりタグの種類がありタグ毎のシナジーがある、ゲストカードのように山札の他に何枚か公開されていて、プレイヤーはそこから何を得るか決められる等で、イベントカードの手なり感は軽減できたと思うが、そういう調整がないため引きに左右される点を強く感じてしまう。そのため、数ゲームやれば満足してしまった。

説明書の不親切さ / 一度ソロルールでプレイしたが、ソロイベントカードの使い方に記載がなく、結局他の人のプレイ動画を参考にせざるを得なかった。他にもそこそこの頻度で起こり得るであろう事態に対する記載が欠けていて、その処理は不明であった。年に複数、より難しいゲームの説明書も読むためある程度慣れているはずの自分ですらこう感じたため、記載は不十分で適切でないと言わざるを得ない。別紙FAQが同梱されていなかったが、改善されたのだろうか…？

・総評

プレイ時間は標準的な中重量級、難易度は決して高くなくテーマ性がしっかりしているため、ボードゲーム中級者から上級者のステップアップとしてやや難しめのゲームのデビューに向いている。2時間〜のゲームを遊ぶ人には上述の理由から少し物足りなく感じてしまうと思う。