- 3人~6人
- 30分前後
- 8歳~
- 2005年~
ポイズンBluebearさんのレビュー
『モダンアート』などで切れ味の鋭いジレンマを得意とするライナー・クニツィア氏のバースト系ゲームです。
状況を見てうまく立ち回らないとマイナス点を食らうので、これをどれだけ少なくできるかを競う、ハラハラドキドキのカードゲームです。
もともとは2005年にドイツで発売されていたものが、2014年に日本語版としてCOSAICから発売されました。…とは言っても、内容に言語依存は全くなく、ルールが日本語表記なのと、イラストの変更くらいですね。
ちなみに旧海外版は、黒地のカードに毒々しい薬品が描かれていて、ボックスアートにも見るからに怪しい魔法使いが描かれています。これが日本版では白地に一新。九月姫さんのかわいらしい魔女さんが描かれたパッケージに変わり、怪しい雰囲気から明るい雰囲気に変わりました。(おかげで女性陣のいるボドゲ会でも気軽に出すことができました。これは大きいですよ。もとのバージョンだったら、たぶん却下されたのではないかと思います。)
ただし、各カードに描かれているのは、相変わらず薬の種類(色)と、量(数字)だけなので、実際にゲームを進めるにあたって、残念ながらせっかくのこの可愛い魔女さんたちは一度も登場しません。(笑)
設定としては、プレイヤーは見習いの魔女になって、秘薬の調合をおこないます。そのための窯が3つあって、それぞれに材料となる薬(カード)を入れてゆくのですが、それぞれの窯には「ちょうど13」の薬しか入りません。もしあふれさせてしまったら、罰としてその窯の調合薬を飲み干さなければならないのです!
手元には4色の薬カードがランダムに配られて手札として存在し、手番が来たらどれか好きな窯に1枚置いていきます。
色が3色あって、窯が3つなので、それぞれの窯にはどれか1色の薬しか入れられません。ただし緑色の「毒薬」だけはワイルドカードで、どの窯にも放り込むことができます。
手番には必ずどれかの窯に1枚置かなければならないので、窯にはどんどん数字がたまっていきます。これがまでは13まではセーフですが、14以上になった瞬間に、あふれさせたそのカードを残して、それまで窯にあったカードを全部引き取らなければなりません。
この枚数がペナルティとなって、これが最も多い魔女が負けとなります。
置いたカードは公開なので、今合計いくつで、どれだけ入れたらバーストするかは一目でわかります。だから手札を見て溢れないようにしながらカードを出していけばいいわけですが、これがそう簡単ではなく、ジレンマに悶え苦しむことになるのです。(このへんのバランス加減が絶妙だからクニツィアデザインはお気に入りなんですよね。)
①山札からカードを引いて、手札に…なんてやりません。初めっから全部のカードを全員に配ってしまいます。そのカードを結局ぜんぶ出し切ることになるので(パスなんてありません)、自分がどの色のいくつのカードを持っているのか、最初から全部わかっています。
普通ならカードを引いて、出して、の組み合わせになるであろうときに、あえてそうしません。引くカードは、最初からすべて配ってしまいます。
最初の配り運はあるものの、カードの引き運なんて無いわけですから、じっかり計画を立てていかないと、あっという間に行き詰ります。偶然いいカードが来たおかげで勝てた!なんてことは絶対起こらないわけですね。
②合計数が「14」になったらバーストするのに、出せるカードの数字はわざと偏ってるんですよ。
1・2の次が4・5。その次が7で、それ以上はありません。7を出されたら、もう7は出せないじゃないですか!
この偏りで、微妙にうまく13に抑えることが難しいんですよ(やってみるとわかります。)。さすがにクニツィア氏は数学者だけのことはあります。
③3色の薬には1本だけ「解毒薬」がある。という設定で、その色のカードを最もたくさん引き取ってしまった魔法使いは、特別にその薬をもらえるので、その色のペナルティだけが無しになるのです。(1本しかないっていう設定だから、同着だったらもらえないというルールにも説得力がありますね。)
…ということは、引き取らなければならなくなったカードが全部ペナルティのはずが、逆に一番引き取ってしまえば、その色のペナルティはチャラになるので、他のプレイヤーが今何枚持っているかを常に見ながら、思い切って引き取るかどうかも微妙な戦略として関立するのです。この加減を見定めるのが非常に難しい!(なんせどんどんカード状況が変わってゆくので)この他者とのからみがもたらす緊張感がたまらないです。
④カードには基本の3色以外に、緑色の「毒薬」というのがあって(数字は全部4に統一されている)、上記の解毒薬をもらったとしても、この毒薬だけは引き取ったが最後、打ち消すことができません。
さらにこのカードは1枚で「ペナルティ2枚分」としてカウントします。これはきついですよ~。
このように単純なゲームに見えて、かなり意地悪な仕掛けがしてあるので、かなり盛り上がります。
ルールを簡単に説明すると、半数くらいは「な~んだ、簡単じゃん」という顔をするのですが、ゲーム慣れしていてキモが分かる奴は「ああ、これってキツイやつだ」と渋い顔をします。
前者の「楽勝」顔だった奴が、後半に苦しみだすのを見てるのも楽しいゲームですよ。
「じゃあ俺、赤の4出すから、これで9だね。」
「じゃあ私はこっちの青に7ね。」
「ぎゃあ、早い早い!もう12じゃん!やばいって!」
「ふふふ、じゃあ私はそこに青の1ね。これで13~♪」
「ぐっやられた!(ニヤ)でも俺もう青ないも~ん♪」
「くそっ!まじか」
「じゃあ次私ね。えい💛」(紫の窯に毒薬を放り込む)
「おいおい!さっきから○○ちゃん、ニコニコしながら毒薬ぽんぽん入れてるぞ!怖い怖い(笑)」
「それで10じゃん。確か3のカードって無いんだよね。」
「ううう~、どれ出してもアウトじゃん!最悪!じゃあ赤を全部引き取るわい」
「あれ?もしかして赤の枚数トップじゃない?」
「う、まずったか!!」
こんな調子で、思ったよりにぎやかに盛り上がります。
基本的に3戦の合計ペナルティで最終勝者を決めるのですが、6人でやっても1戦15分くらいだから、1時間かかりません。
お手軽で、なおやった感がある切れ味鋭いゲームを望むなら、ぜひ一度お試しあれ!
【余談】
海外版では、『Friday the 13th』という、ネコちゃんデザインのバージョンとか、なぜかドーナツのデザインになっているものとかも発売されているようです。お好みで選んでみてはいかがですか?
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