- 2人~5人
- 60分~120分
- 12歳~
- 2021年~
ロレンツォ・イル・マニーフィコ:拡張セット同梱版winterkoninkskeさんのレビュー
二人プレイ時の感想を書きます。
ロレンツォ・イル・マニーフィコは、ルネサンス期のイタリアの領主となり、領地や町といった拠点をカードを買うことで発展させながら、より豊かに統治を行った人が勝つゲームです。
本商品は拡張二種を含む完全版ボックスとなりますが、レビューでは基本+上級ルールで遊んでみた感想を述べていきます。
基本は手番プレイヤーが順番にワーカーをアクションマスに配置して効果を解決するアクションを繰り返す、ワーカープレイスメントとなります。
3〜4個のワーカーを全て配置しきると1ラウンド。これを6ラウンド行い、最も勝利点トラックを進んでいるプレイヤーの勝利となります。
まず、本作を決定的に面白くしている要素が、「ワーカーの能力値が毎ラウンド変化する」点でしょう。各ラウンド開始時に色の異なる三つのダイスが振られ、出た目に対応する色のワーカーがその目と同じ能力値となります。
例えば黒のダイスで3、オレンジは6が出たから、今のラウンドは黒のワーカーが3、オレンジは6…というように、ラウンドが始まってみないと分からないランダム要素を受け入れることになります。
アクションマスは「カードの獲得」「生産アクションの起動」などと選択できますが、基本的には高い目のワーカーを置くほど有利になります(そもそも目が足りていないと置けない)。そしてアクションマスはかなり早取りが有利になるバランスになっていて、プレイヤーは「いち早くマスを先取し、より高い目のワーカーで高い効果を得る」ことを考え始めます。
更に「0」の値に固定された追加のワーカーと、「いずれかのワーカーの目を上げる資源(使用人)」の存在が難しさを助長します。プレイヤーはある程度リスクを覚悟して使用人を獲得し、然るべきタイミングでラウンド毎に決められた目の数値を自分だけ上げ、他のプレイヤーより先にアクションマスを押さえなければならない。これだけで相当なジレンマです。
勝利点を最も上げるための基本は、カードの購入です。
4色あるカードが毎ラウンドランダムにメインボードに並び、自分に必要なカードを睨んでコストの支払いを計画します。カードは色によってそれぞれ「収穫アクション」「生産アクション」「永続/即時スキル」「終了時得点」と特化しており、同じ色を集めるほど高得点となるセットコレクションの要素も絡んでいます。
それなのに、同じラウンドで同じ色を続けて獲得するのにはより多くの資源や金が必要で簡単には行きません。更に前述したダイスの出目が悪いと、使用人の消費も激しくなります。
カードには石材や木材などの資源を必要とする物もあり、ギリギリの資材管理を迫られます。
もう一つ、重要な要素が「信仰点」です。
プレイヤーはワーカー、資源の管理をしながら、「信仰点」の獲得も目指さなければなりません。
2ラウンドに一回、信仰点のチェックポイントがあり、一定の点数を満たしていないと大きなペナルティが永続的に発生します。
カードの獲得が不利になったり、生産アクションが弱くなったり…とにかくハイリスクです。
プレイヤーはなるべくこれを避けたいわけですが、ゲーム中どうしても信仰点より優先したいアクションが出てきます。ここが非常に上手く出来ていて、ペナルティは受けても勝利が絶望的になるようなものでなく、ゲームによっては敢えて受けることも許容できる絶妙なバランスになっています。なので「ペナルティを受けてでも他のことを優先するか?」というジレンマが発生します。
しかも信仰点は使わずに貯めると高得点。ペナルティ内容は毎ゲームランダムなので、絶対に受けてはならないペナルティなのかどうかを見極めなければなりません。
このように、早取りがシビアかつランダムなワーカー、取得に手間がかかるカード、信仰点…他にも幾つものジレンマが折り重なるように巧妙に仕込まれており、プレイヤーは常に判断を揺さぶられることとなります。
いつも1金足りない、1石材足りないといったカツカツの状況の中で、いかに臨機応変なやりくりをし、最終ラウンドで大量の勝利点を得るに至るか…じっくり思考したい重ゲー好きにはとても好まれる作風と思います。
使用人でワーカーの価値を変える部分以外には、それほど珍しいメカニクスも無い普通のゲームといった印象なんですが、単純にそれらを鋭く深く洗練させていくことでここまで面白くなるのか、と感動を覚えるような作品であります。この辺りの、凡庸なシステムを非凡に磨き上げた精巧さが、本作を傑作と言わしめた所以と思われます。
私は二人でしか遊んだことはありませんが、その人数でも十分にマスの取り合いや信仰点のジレンマが発生し、楽しむことが出来ています。
コンポーネントはワーカーや資源コマが木駒になっていて程よい質感です。ただしワーカーコマにシールを貼ったり、最近のものであればプリント駒になっているような仕様もあるので、少し古いと言えば古いです。逆にそれが良いと思えるようなルネサンス期がモチーフのアートワークとの相性の良さで、気になることはありません。
そのアートワークですが、華やかでたいへん美しいです。一見するとメインボードなんかは地味に見えますが、こちらは視認性のためにシンプルにしてある印象。しかし個人ボードなどを裏返すと美しい模様が現れたり、見えない部分まで細心の注意を払って作られていることが分かります。高級感があり、持っているだけで美術品でも所持しているような満足感があります。
なかなか手が出しにくい値段ではありますが、拡張を入れずとも満足している状態です。ここから二つの拡張ルールが加わるわけですから、後の二つは実質無料みたいなもんです。
長く遊ぶ価値のあるものなので、是非とも、思い切った購入までお勧めしたいです。
- 86興味あり
- 262経験あり
- 90お気に入り
- 295持ってる
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