- 1人~4人
- 60分~120分
- 10歳~
- 2024年~
エンデバー:ディープ・シーwinterkoninkskeさんのレビュー
二人プレイ時の感想を書きます。
エンデバー:ディープ・シーは、海洋を調査するスペシャリストとなり、潜水艇で深海に潜りながら、研究発表と環境保護に務めて世界にインパクトを与えることを目的としたマネジメントのゲームです。
本家「エンデバー」を今の流行に合わせて作り直した作品のようですが、筆者は本家を未プレイなので、比較なしで本作のみのレビューを行います。
ゲームは6ラウンドで行われます。
海洋のロケーションを模したモジュラーボード上で自分の潜水艇コマを動かし、目的の場所に着いたら各自が所有する「スペシャリスト」のタイルにディスクを置いて、対応するアクションを実行していきます。
アクションは「移動」「潜水」「ソナー」「論文」「保護」の5アクションのみで、アクションによって得られたボーナスで個人ボードのパラメーターを上昇させたり、後述する「インパクト表」にコマを置いたりして、目的を達成して勝利点を得ましょうというもの。
スペシャリストはそれぞれに得意な(実行可能な)アクションがあって、ラウンドの始めに一人ずつ加入します。このスカウトにはランクがあって、ゲーム中にパラメーターを上げるとより良い人材が手に入りますが、他にもアクションに必須となるディスクを増やしたり、目的の海域まで辿り着くために潜水艇の性能を高めるパラメーターも同時に上げなくてはならないので、さてどれから上げましょう、という悩ましさがあり、このさじ加減のジレンマがゲームの基本的な方向性を決めています。
もう一つの特徴として「インパクト表(選択式シナリオ)」があり、ゲーム開始時に10枚のシナリオの中から1枚を選びます。
インパクト表には、ゲームの開始状態を示すモジュラーボードの配置(中央上)が書かれています。ここから「ソナー」のアクションを誰かが使うことで、ボードが追加されていきます。
ゲーム中に「インパクト」と呼ばれる星型のアイコンを取得すると、ヘックスのマスにマーカーを一個置けます。
シナリオ毎に形状の異なるマスは早い者勝ちで、マスに記されたアイコンを得るか、黄色のマスやオレンジのマスに置いて勝利点を得ます。
そして右端に三つの目標設定がしてあって、今回はこの縦列でソナーアクションをしなさいとか、この横列で保護アクションをしなさいなどと書かれていて、指示通りに行うと、回数によるもの、マジョリティによるものでそれぞれ勝利点が入ります。
このゲーム、基本的に勝利点は「個人パラメーターをどれだけ上げたか」と「インパクト表からの勝利点」しか入りません。
個人パラメーターはシステム上どんどん上がっていくので、他人との大差がつく要因にはなりません。つまり、インパクト表の指示にどれだけ従えたかが勝敗の決め手になるわけです。
じゃあ、インパクト表の指示に個性を出して、シナリオ毎に全く違う行動をプレイヤーに取らせよう、と考えてシステムが組まれているのが、本ゲームのもう一つの特徴なのです。
アクションは何を選択してもほぼ必ず何らかのボーナスが入るようになっていて、非常にポジティブに拡大していく快感があります。
かと言って漠然と上げていると、一定の値でランクアップするパラメーターに数値1だけ足りなくなって損してしまったり、偏って思ったような行動ができなかったりするので、プレイングで展開は大きく変わってきます。
ソナーによって開かれた新たな海域のタイルはランダムで個々のクセも強く(そのタイルだけの独自ルールが適用される変なタイルなど)、引きの要素で行動指針も常に変化します。
何より全てのアクションは早取りで、プレイヤーは常に他人の動向を視野に入れる必要があります。「あの位置に潜水艇があるからあのアクションはすぐに取られるな…」とか、直接的な攻撃はないものの、インタラクションは強い部類に入ります。
この早取りは「アクション不可能になる」のではなく、「別の場所でアクションしに行く」程度の誤差にとどまり、窮屈になりすぎないバランスなのも特徴ですね。
チームメンバーが増え、パラメーターが上昇し、追加海域が増えていくと、最終ラウンドではかなりボリュームのある選択肢になっています。この最後のやりごたえはなかなかのもので、脳が熱くなること間違いなし。そして重さが終盤に偏るので、全体的な比重は重すぎず、遊びやすい範囲にもなっています。
戦略8、運2くらいの、中級者が心地良いと感じるようなバランスではないでしょうか。
珍しいメカニクスもなく、オーソドックスなシステムの組み合わせで真新しさはないはずなんですが、不思議な没入感があって、むしろこの理解のしやすさがプラスになっている例だと思います。
二人プレイだと、インタラクションが減るので難しさは少し穏やかだと言えます。しかしインタラクションがキモになっているシステムなので、やはり三人は欲しいところ。それでも、「二人でこんなに面白いのにベスト人数じゃないのか!」とか思っちゃう。
四人になると終盤の盤面がえらいことになるらしい(システム上、人数が増えるとソナーで出てくる海域タイルも増える)ので、ベスト人数は3と答える人が多いと思いますが、個人的には四人でゴチャつかせた方がワイワイ遊べる、ボードゲームとしての本来の娯楽性というか、他人と一緒だから面白いんだよって部分が浮き上がってくれる気がします。
今どきらしく、協力プレイとソロモードも用意されています。
協力は人数に応じてインパクト表の四項目+ランダムの三項目の目標と数値があって、ゲーム終了時に全員の数値を足して目標を何項目達成したかを計算して、勝敗を決めます。
ソロモードは協力を実質一人で行うようなルールですが、前述したようにインタラクションが楽しいゲームでもあるので、個人的にあまりハマりませんでした。拡張でオートマなんかがあればかなり評価も変わってきそうではあります。
コンポーネントはモジュラーボードや個人ボードまわりをチマチマと行き来する木駒が大量に入っていて、単色のプリントも入っており豪華です。
手札として持つようなカード類はなく、じっくりとテーブル上を眺めてウンウンうなるプレイスタイルになるかと思います。
スペシャリストタイルを置くトレーはそのままディスプレイになっていて、しまう際にタイルを戻してスリーブにスポッとはめれば、次のゲームでのセットアップが完了しているのが面白いです。
また本作のテーマは海洋の研究と保護です。少しオーバーテクノロジー(深海に比較的容易に潜れる技術)を借りてゲームとして成り立つバランスの調整はしてありますが、「海って美しいよね!大切にしなきゃね!」という制作チームのメッセージ性がアートワークに現れた、素晴らしいコンポーネントです。
"これは発見、理解、そして保護のゲームです。海洋からなにか物質的な利益を得るゲームではありません。あなたが海洋から得るのは、自分をより優れた自分にする形なき利益です"
箱にはシュリンクがなかったり、コンポーネント用の袋も恐らく環境に配慮した不透明な白いものが付いてたりで、最近の流れに沿ったものになっています。これは海洋の環境保護がテーマの作品として必要な対応と思います。
ルールブックを読んで、「こりゃ面白いに決まってるだろう」と遊ぶ前から想像のつく分かりやすい作風です。
ポジティブに終盤に向かってどんどん拡大されていく自身の能力や、相手と一緒に埋めながら発展していくメインボードのインタラクションなど、これぞボードゲーム、と呼べる楽しい部分をきれいにまとめ上げた良作と思います。
マイナス要素がなく、戦略性が高くインタラクションも強いけれども平和的なもので、公平感のあるちょうど良いゲームバランスでもあるので、そりゃ面白くなるでしょうと。
テーマ性も含め、今だから生まれたゲームだと思います。
なんだか難しいメカニクスのゲームを始める前に、普通に面白いから遊んでみてよ!と言いたくなる、親しみのあるゲームです。
- 70興味あり
- 123経験あり
- 33お気に入り
- 119持ってる
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