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  • 2人用
  • 20分~30分
  • 10歳~
  • 2020年~

2人でお茶をきままんさんのレビュー

318名
9名
0
1年以上前

”「このゲーム、ぜんぜんフェアじゃないのよ。」アリスは文句たらたらの調子で切り出しました。「それにみんな大げんかするから、自分の声だって聞こえやしない ーとくにルールはないみたいだし、少なくとも、ルールがあったとしても誰も気にしちゃいないのよー」”

                    ー ルイス・キャロル 『不思議の国のアリス』 ー


「 2人でお茶を」は勝手に戦い続ける二つのデッキをランダマイザとして、そこから出てくるリソースを管理しながら、できるだけ状況を自分の有利なようにコントロールし、相手より多くの得点を稼ぐことを目的とする2人用対戦ゲームです。

プレイヤーには最初に1~9が一枚ずつ9枚からなるデッキが与えられ、毎ターンそれをただ自山札の上からめくりあって数字が大きい方が勝ちとして勝った側が自分のターンを行います。自分のターンが取れた場合、①「勝ったカードのキャラクター効果を適用する」か、②「相手カードとの差分の購入ポイントとタルトトークンを使ってカードを購入する」かを行い、続いて砂時計トークンを使用することで懐中時計ボードの効果を使用することができます。以上を繰り返し、自分のデッキが切れたら捨て札にウサギ(ランク1)を足し、リシャッフルして新しい山札とします。これを繰り返し、合計7枚のウサギカードがすべて使用されて次のウサギが引けないか、購入できる5種類5枚ずつの予備カードの山が4つ切れた時点で、現在のラウンド終了後に盤上に表示されたボーナスポイント分の得点を足してその合計点の多い側が勝利となります。

このゲームはゲーム用語でのジャンルが「戦争ベースのデッキ構築ゲーム」だったり、概略説明がどうしても上のようになってしまうので、非常にゲーム性を誤解されがちなゲームです。説明を聞いて「ああ、いろいろ構築したデッキで戦うゲームなのね!」と最初に思われてしまうのです。しかし、実際はバトル?部分はただの「戦争」です。順番にカードをめくって比べるだけで戦闘部分にプレイヤーの思考や判断の入る余地はありません。状況をつくる特殊なランダマイザでしかないのです。…まるで、女王陛下のクロッケー場のように。

では、プレイヤーはゲーム中、なにを考え判断してゲームを動かし、なにで得点してゆくのかと言うとメインは懐中時計ボードの5つの効果です。サイクリックになっている懐中時計ボードの効果は①自分の捨て札から一枚破壊(≒得点)、②自分の山から2枚公開(捨て札)し、そのカードの点を得点、③ただ2得点を得る、④相手の現在の捨て札の効果を自分のものとして使用(≒得点)、⑤勝負で同ランク時に勝利するフラミンゴマーカーを獲得する。と5つの効果のうち実に4つが得点絡みなのです。

そして、これらの効果たちをプレイヤーがプレイ中に適切に使うためにはデザイナーが使った「戦争」という特殊なランダマイザの特性を知っておかなければなりません。

このゲームのランダマイズエンジンはトランプゲームの「戦争」です。そう、あの「せーんそっ!」と言って山札をただ一枚ずつめくっていって数が大きい方が勝ちというキッズゲームです。実は「戦争」のシステムにはいくつかのちょっと面白い性質があって、デザイナーはそれを利用してゲームをデザインをしています。

1つは引き自体は完全にランダム勝負でしかないのですが、デッキのカード構成は決まっているので強いカードが出て勝つと弱いカードが山に残り少しずつ負けやすくなり…と、かなり強力な勝敗平均化がかかることです。「運の流れ」が物理的に発生するのです。実際どの程度になっているのか1~9の初期デッキでデッキ一周を勝負した場合の勝敗率分布を出して驚きました。

最初のデッキ9枚の勝敗率概算

9勝0敗:0.0%

8勝1敗:0.15%

7勝2敗:4%

6勝3敗:24%

5勝4敗:43%

4勝5敗:24%

3勝6敗:4%

2勝7敗:0.15%

1勝8敗:0.0%

0勝9敗:0.0%

実に6勝3敗から4勝5敗の3パターンに90%以上が収まってしまうのです。(勝ちが多い側は同ランクで勝利するフラミンゴを所有している側。)

”2D6を振ったら7が1/6で出る”ようなもので、かなり強力にシステムが一方の手番ばかりにならないように確率を縛ってるのがわかるでしょう。そして同ランクの場合に勝利するフラミンゴを持つということが実際に1~2勝(手番)分のポテンシャルを持っていて、ゲームにおいて重要だということもわかります。「こんなのただの引き運ゲーじゃん!」というわけでもないのです。

また、もう一つは残カードによる引き運の流れと共にデッキの残りが3~4枚になった時にそこにどんなカードが残っているのかはっきりとわかるという点です。これはルール的にも(捨て札の)”表のカードはいつでも確認していい”と明記してあって、自分や相手のデッキ構成を知っていれば残りの山での勝ち負けや強いカード、あるいは弱くて得点になるカードが山に残っているかをほぼ推測できるということです。実際、このタイミングは山札をカードの特殊能力や懐中時計効果のターゲットにするべき機会で、相手の強いカードが残った山をスキップさせたり、自分の弱いカードしか残っていない山をスキップして自ら得点化したり、あるいは相手の強いカードを破壊したりと、減った不確実性を有利に利用する重要な戦術上のチャンスなのです。

一般的に「デッキ構築」のようなゲームだと自分のデッキの弱いカードを捨てて回転を速くするデッキ加速は良い戦術だと考えられていますが、このゲームの場合デッキが切れるたびにランク1のうさぎを足してからリシャッフルされます。相手より著しくデッキ枚数が少なく、リシャッフル間隔が小さくなりすぎると必ず負けるうさぎを相手より多く抱えることとなり、このゲームではむしろ相手よりデッキ枚数は大きい方が良いかもしれません(特にデフォルト推奨の「相手よりデッキ枚数が多い場合」のボーナス得点がある場合などは)。しかしまた、うさぎ自体は数値比べでほぼ必ず負ける上に破壊で2得点なので懐中時計効果の「自分の捨て札の1枚を破壊する」のメインターゲットでもあります。

カードの購入は基本的にランクが高い方が強いというか、そのまんまほぼ数字(ランク)が勝率と考えていいので、ただデッキを強くするだけなら高いカードを買うのが基本です、しかし勝った時に得られるリソースも考えなければなりません。5割6割のハートのジャック(タルト×3)やイモムシ(砂時計×2)は7割8割の王様(タルト×2orフラミンゴ)やアリス(砂時計×1)とどちらがお得でしょうか?相手はデッキにどんなカードを購入していますか?

処刑人(4)以下のカードは積極的にカード勝負で勝って自分が能力を使うというよりは、むしろ負けてターンを取られ、懐中時計効果で相手に能力を使われるというねじれた使われ方をするケースの方が多いでしょう。「なんだよこいつら役に立たない」どころか、自デッキから出ると互いに相手が使ってくる不利カードというロジックの狂い具合が最高に不思議の国のアリスしています。ルイスキャロル(本業:数学者)大喜びです。しかも、低位のカードでもしっかり勝って普通に能力を使ってくるパターンがランダムにそこそこ出るのも実にカオスです。


「これはまったく難しい試合だという結論にアリスは達したのでした。」

                     ー ルイス・キャロル 『不思議の国のアリス』 ー

このゲームはなにを選ぶとなにが変わるというシステムの筋道が一通り見えると俄然楽しさがわかってきます。つまり、引きで起きたこと生まれた状況とリソースで、3%なり5%なりわずかでも有利になることを判断して積み重ねていく…すると状況がだんだんと良くなって行ったり、ままならなかったりする(笑)という運と判断の積み重ねのゲームなのです。

実際、このゲームはプレイ時間20分程度の軽い対戦ゲームでありながらデッキ4回転50ターンもある、短時間ゲームでありながら長期的な状況コントロールの面白さにフォーカスしたというユニークな特徴を持ったゲームで、個人的にわりとゲームは見てるはずですが、他にいままでこれに似たようなテーマと面白さを持ったゲームを見たことがありません。

ところが残念なことにこのゲームは前述のようにゲーム説明などから「カードバトルゲーム」という先入観を持って捉えてしまうと、そこはまったくコントロールできないので箸にも棒にもかからない適当にでっちあげた初心者向け雰囲気ゲームという評価になりがちですし(実際BGGなどでも大きく平均点を引き下げている1~3点の評価はそういう判断なのでしょう)、逆に各ターン中にやることは極めてシンプルなので、よくわからないままなんとなく手なりでプレイして勝った負けた…?でプレイヤーが初プレイ中に判断基準がなにも見えなくても「なんかただの引き運試しのゲームみたい??」で終わってしまうのもなかなか難しいところです。運と技術のゲームはおおむね期待値がある程度みえて「予想が当たった!予想が外れた!」がないと楽しさにつながらないものなので、「戦争」の部分で”つまりそういうレベルのゲーム”として考えるに値しないとされれば、やはりピンとこない適当に作られたゲームとして押し入れ行きだからです。

それではあまりにも野心的にデザインされた独自の面白さを持ったこのゲームがもったいないのでいろいろ書いてみました。このゲームに8点をつけるような我々が見ているものが少しでも伝わり、「2人でお茶を」が押し入れから引っ張り出されて再評価されることを願って止みません。

…いやこれ、そもそも「宝石の煌き」や「アンクォール」「ジャイプル」が並ぶスペースカーボーイズ社の小箱ラインの一本なんですよ? 適当な粗造フィラーなどではまったくないのです。


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