- 2人用
- 120分前後
- 12歳~
- 1976年~
宇宙の戦士Bluebearさんのレビュー
SF小説界の巨匠、ロバート・A・ハインライン氏が1959年に書いた傑作『宇宙の戦士(Starship Troopers)』を基にした、旧アバロンヒル社製のシミュレーション・ウォーゲームです。
当時ホビージャパンから、詳細な日本語ルール付きで発売されておりました。
この作品は、奇怪な昆虫型の異星人と全面戦争になった未来世界を舞台に、軍隊組織内で成長する若者の姿を描いたものですが、どちらかというと登場する戦闘強化服《パワードスーツ》のほうが日本では有名になってしまいました。(宮武一貴氏デザイン、加藤直之氏画のパワードスーツは惚れ惚れするくらいカッコよく、あの有名なガ〇ダムのベースになったことでも有名です。)
※家にある製品は古すぎてもはや箱がボロボロです(泣)。
■地上と地下の2面で進行する立体作戦を再現
「サブマリン」のような潜水艦のゲームだと、《海面上》と《水中》の2面で展開される戦力の相関が魅力ですが、この作品は《地上》と《地下》で展開するという、ちょっと他に比較例が思いつかない、変則的な構成となっています。
人類側は、パワードスーツ小隊を中心に、軌道降下により登場したり、着陸船から展開したりして、主に地上面から進軍します。(戦術級の歩兵戦ゲームを想像してもらえば問題なし)
対してバグズ(蜘蛛状なのでアレクニドと言う)の勢力は、地下に《頭脳》に相当する親(女王)があって、そこから張り巡らされた地下通路で構成された《巣》があって、基本的にそこを移動する戦闘体が地上への《突破口》を作ることで地上にうじゃうじゃ展開してくるという構図。
人類側は基本的に普通のゲームのように、コマをボード上に配置して、移動させたり戦闘させたりします。
しかし、アレクニド側は、この《巣》を記録用紙(A4に縮小したマップ図)上に密かに記録。少しづつトンネルを広げていきます。人類側はこの位置関係を、ソナーのような《地中聴音機》や、ESPでアレクニドを感知する《特殊才能者》を利用して探りつつ、巣の中心の《頭脳》を、戦術核爆弾で吹き飛ばしたり、重神経ガスで抹殺したりするわけです。
バグズは、突然意外な方向から突破口を作り、いきなり強力な大群が湧いてくるので、人類側は強力な《パワードスーツ》を装備していても非常に脅威であり、ここに互いの腹のさぐりあいがスリルたっぷりに進むことになるわけです。
さらにアレクニド側には、あらかじめ仕掛けて置いて、移動してきたらドカン!といく地雷(HEタイプだけでなくこちらにも核地雷があるという強烈さ。)まであります。
このスリルはけっこう特筆ものです。
■多彩な兵器群が魅力
まずは何と言ってもこの主役《パワードスーツ》がカッコいい!(断言!)
ただし念のため申し添えておくと、このアバロンヒル版のボックスアートは、スリットの入った金魚鉢のようなヘルメットをかぶった潜水服のような古めかしいダサさ!(笑)。これがカッコよく思えてくるのには、ひとえに日本版イラストの美しさで脳内変換されていたせいでしょう。今の時代ならイラストをすべて差し替えての日本語版となっていたことでしょう。(発表された時代が違っていれば…)
この《装甲強化服》がカプセルに入って軌道上に展開、降下するイメージに我々はしびれてしまったのです(笑)。
肩に装着されたロケットランチャー(榴弾であるHE弾や核弾頭が発射できる)、弾数に限りがある高性能な遅発性爆薬、戦闘工兵が使う戦術核爆弾やエアカー、アレクニドの巣を探るのに必携の《聴音機》など。これらをすべて小隊に振り分け、専用の記入シートに秘密に書き込んでいきます。配備数に限りがあるので、この必殺の切り札をどう運用するかもスリリングだったりするのですね。(アレクニドからすれば最強の核弾頭は絶対に潰したいところですからね。)
対するアレクニド側も決して負けてはいません!その名も《重火器光線砲》という強力な長射程兵器があり、いかにも古き良きSF的なツボを刺激してくれます。(こいつが小隊のすぐ後ろに突然開いた穴から、大量のアレクニド兵戦闘体とともに出現する光景を思い描いてみるといいです。ゾクゾクしませんか♪)
しかしうかつに突破口を開きまくると、その位置関係から《巣》の位置を推測されてしまうというジレンマに悩まされます。
非常に楽しいです♪
■ステップアップ方式で全7章のシナリオ構成
上記のように、ちょっと変則的な戦闘形態に当たるため、シンプルな第1章から少しづつルールを追加していけるような構成に工夫されており、シミュレーションゲーム初心者にも(当時高校生だった私たちにも)無理なくルール習得ができました。
第1章では残念ながら蜘蛛野郎のアレクニドは出てきません。第3勢力の痩せっぽち異星人の《ヒューマノイド》と戦います。(地下ルールがないので非常に簡単。これによって主役の《パワードスーツ》の運用を学ぶのですね。これ自体もけっこう楽しくて、しばらくこればっかりやってたのも良い思い出です。
第2章からいよいよメインのアレクニドの登場です。
ここから小説のストーリーに沿うかたちでシナリオが本格的になっていきます。(パワードスーツによるトンネル突入やアレクニド頭脳の捕獲などもできるようになります。)、
最終的には互いにポイント制で強力な部隊を編成し、地球軍とアレクニドを複数人で担当するというスケールの大決戦シナリオまでいけます。(さすがに我々もここまではチャレンジできておりません。いつかやりたいなあ…)
シナリオタイトルを紹介するので、雰囲気だけでも読み取って下さい。
①「ヒューマノイドへの牽制攻撃」
②「オペレーション・バグハウス(虫の巣)」
③「スキニー5への侵攻」
④「反撃!」
⑤A「シーオウル(地獄)オペレーション・コークスクリュー」
⑤B「シーオウル―退却そして撤退」
⑥「オペレーション・ロイヤルティ(王族)」
⑦「クレンダツウ:決戦」
ちなみに各シナリオは、全ルール適用でプレイするための補足事項もちゃんと盛り込まれています。
このように全く形態が異なる2つの強力な軍事戦力が派手に激突するゲームは、当時の私にも斬新で、惚れ込んでプレイしておりました。
ゲームとしては今でも十分通用する傑作だと思っていますので、どこかで見かけることがあったらぜひ体験して欲しいと思います。(慣れた人がインストしてくれるのと、原作『宇宙の戦士』を読んでいることが条件なのがちょっと厳しいかな…。映画『Starship Troopers』でもいいのですが、あの映画は予算の都合上なのか肝心の《パワードスーツ》が全く出てこないんですよね。いい作品なんですが…。)
新人たちへの紹介用に、ボックスのイラストを本気で張り替えようかと思案中です。
ちなみにインストやゲーム進行を円滑にするため、記録用紙やチャート類はすべて日本語版に作り直しました。これでプレイはばっちりです♪
- 24興味あり
- 29経験あり
- 10お気に入り
- 26持ってる
Bluebearさんの投稿
- レビューNORAD3:米ソ戦略核戦争おそらく僕が知る限り最も簡単に熱い対戦が楽しめる《戦略核戦争》ゲームで...2日前の投稿
- レビューまじかる☆ベーカリー〜わたしが店長っ!〜最近は絶滅寸前かと思うほど珍しい、直球の《殴り合い》《どつき合い》満載...約2ヶ月前の投稿
- レビュー10 デイズ・イン・ザ・USA『チケットtoライド』『エルフェンランド』等が有名なアラン・ムーン氏が...約2ヶ月前の投稿
- レビューたたらばと森大阪の『たなごころ』というゲームサークルがデザインした、森との共存をテ...3ヶ月前の投稿
- レビューエルグランデ中世スペインの領主となって勢力争いをするテーマの古典的名作。1995年...3ヶ月前の投稿
- レビュースターシップ・サムライ今作はなんと《サムライ》をモチーフにしたスーパーロボット兵器(笑)を駆...3ヶ月前の投稿
- レビューウィッチャー・ザ・ボードゲームポーランドのベストセラーファンタジー小説をボードゲーム化した作品。原作...4ヶ月前の投稿
- レビュー翡翠の商人『ナショナル・エコノミー』で有名なゲーム工房スパ帝国がリリースした競り...4ヶ月前の投稿
- レビューコズミック・エンカウンター簡単に言えば、もう何でもありのメチャクチャな大宇宙戦争ゲームですね。い...4ヶ月前の投稿
- レビューレッド・ライジングピアース・ブラウンのベストセラーSF『レッド・ライジング/火星の簒奪者...7ヶ月前の投稿
- レビューレベル・プリンセススペイン発のユニークな《トリックテイキング?方式》と言われるカードゲー...7ヶ月前の投稿
- レビュー銀河英雄伝説/アスターテ・アムリッツァ会戦田中芳樹氏の人気SF長編小説(アニメ版も人気)である『銀河英雄伝説』に...7ヶ月前の投稿
会員の新しい投稿
- レビューサイレンベイ警察組織に新たに出来た捜査部門、音声分析班。そこは犯罪捜査を音のみで捜...10分前by リーゼンドルフ
- レビューハートオブクラウンデッキ構築なので、「ドミニオン」好きとしてはもちろん知っていたけど、ア...約1時間前by ヒロ(新!ボードゲーム家族)
- レビュー黙談(もくだん)これが新時代の協力・コミュニケーションパーティゲームだ!ザ・クルーが2...約3時間前by 俊平太郎冠者
- レビューフラッシュポイント:水害の恐怖(拡張)拡張の6作目で、マップ付きでは最後となる5作目として2014年に出版...約9時間前by chaco
- ルール/インストフラッシュポイント:名誉と義務(拡張)「飛行場」の方ですが、炎上している旅客機の内壁や外壁に対する説明が不...約9時間前by chaco
- 戦略やコツフラッシュポイント:火災救助隊 絶体絶命(拡張)「研究所」の攻略法は『2nd Story』と大差ありません。有毒物質...約10時間前by chaco
- レビュー九頭竜館の殺人画家役で通過しました。9人でプレイしました。大人数で密談がごちゃごちゃ...約11時間前by Emi
- レビュー腐草館からの招待状 マーダー☆ミステリー ~探偵・斑目瑞男の事件簿~猿渡香織役で通過しました。他の役の中には演じるのが恥ずかしいものもある...約11時間前by Emi
- レビュー禁断の島パンデミックが好きなので遊んでみました。ルールやプレイ感はすごく似てい...約11時間前by Emi
- ルール/インストフラッシュポイント:火災救助隊 絶体絶命(拡張)「研究所」の方は『2nd Story』の別ヴァージョンと言える内容で...約12時間前by chaco
- レビューグレート・ウエスタン・トレイル :ニュージーランドGWT新版3部作のラストを飾る本作、プレイしたのはもうかなり前になるが...約12時間前by 山本 右近
- レビューバトルライン2人用ゲームでオススメできる作品。準備も駒を9つ並べてカードを配るだけ...約12時間前by きゃぷ