- 1人~4人
- 60分~120分
- 13歳~
- 2017年~
ネモの戦い ~海底二万マイルを超えて~maroさんのレビュー
ソロゲームとしての完成度が評判のネモの戦い、ソリティアはあまり好きではないが、日本語版が良いタイミングで発売されたのをみて購入。
まずはかなり自由度の高いシステムに好感が持てる。選択肢の広さと、どこからでも得点がとれる仕組みが目を引く。
といってもマップ上に増えつづける敵船は邪魔な上に敗北条件になり得る。まずはちゃんと生き残ることを目指すが、その上でノーチラスを改良しつつそれらの船を破壊し、財宝を得たり、イベントを攻略したりして勝利点を稼いでいく。
やっていることはクトゥルフ系の〇〇ホラーとかなり似ている。マップ上の移動、敵との戦いあるいは回避、イベント、艦の改良、探索など。戦闘の結果含め、多くの判定がダイス次第である。ただ、当然ながら運の要素はある程度軽減する配慮はされている(リソースの消費や船体改造、キャラクタータイルの使用などで条件を緩和できる)。
リソースはネモの精神力、船員の体力、ノーチラスの船体の3つあり、開始時は満タンだが、一定数以下になると敗北。敵船からの攻撃やイベントで減少するほか、ダイスロールをプラス修正するために消費できる。ただしダイスロールが成功した場合は消費分が復活するのが面白い。休息、修理アクションでリソースの回復ができる。
特定の敵船を沈めると悪名というパラメータが上昇し、強力な敵船が追加される。これも一定の値を超えると敗北となる。
毎ラウンドマップ上に追加される敵船であるが、これがすべての配置マスを満たしても敗北。敵船を屠るのは船体の改造に必要で、また勝利点にも寄与するが、悪名があるため戦いに明け暮れるわけにもいかないというバランスがとられている。
行動はアクションポイント制である。冒険(イベントカードを引く)、攻撃、扇動、移動、休息、修理、装備、探索(財宝の獲得)などがある。イベントなどでなにか起きなければ、相手から仕掛けてくることはないため、強く束縛されることはない。ただ、毎ターン引かれるイベントカードが枯渇するまでゲームは進行するので、増殖する敵船との緊張は続くことになる。
その他、ゲームの難易度調整やバリアブルプレイヤーパワーなど抜かりなく採用されており、さらに役割を分担することで協力プレイや半協力プレイのモードも備わっている。
いままで述べなかった大きな特徴に、アドベンチャーの要素がある。各ターンの初め、または冒険アクションで引くイベントカードはいわば物語の一部を表している。もちろん順序がランダムなので時系列としての一貫性はないが、これらのテーマをどれだけ楽しめるかということもこのゲームを評価する際には大切な部分だと思う。出てくる敵船には名前や属国、船影(絵、どれも似たようなものであるが)が描かれているが、史実に合わせているようなことがマニュアルに書いてある。
難点をあげると、不確定要素が大きい中での勝利点の獲得には、自分の戦略・戦術の関与が見えづらいところか。戦闘のほか、イベントやアクションなど、あらゆる状況でダイス判定を行うことになる。ダイス目を調整する要素は存在するものの、ちょっと頻度が高すぎるきらいがある。
また、最終得点計算もやや煩雑である。ソリティアとしては長時間を要し、2時間にわたりダイスを振り続けるのも疲れる。
あとは2人以上のプレイモードはあくまでもおまけ程度である。リプレイ性は悪くはないが、長時間のソロ専用と考えると遊べる回数も限られると思われ、コストパフォーマンスとしては良いともいえないだろう。
やはりこのテーマとフレーバーを楽しめることと、重めのソロゲームも苦にならないことが条件の、人を選ぶ作品ではあるだろう。敵の操作にまわるなどして2人以上のプレイがもっと凝ったものであれば良かったのだが。
ただここには、デジタル(のソロゲーム)とはまた異なった世界があることも確かだ。複雑さという面で制御しきれる範囲内で悩み、運を試し、世界観を堪能する。このようなゆとりを受け入れられるであろう海外で人気があるのもわかる気がする。また、一つのボードゲーム作品として見た時には、各メカニクスの構成は素晴らしいと感じる。
であると同時に、ボードゲームは多人数で囲んでも充実した時間が得られることが前提でのソリティア、というのが大切な事を学んだ思いであった。
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