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  • 3人~5人
  • 60分~90分
  • 10歳~
  • 2000年~

モルゲンランドSato39さんのレビュー

324名
11名
0
約1ヶ月前

《魔法のランプの力で、アーティファクトを掴み取れ!》

以前から気になっていたモルゲンランドをプレイすることができた。2000年発表の古い作品だが、色褪せることない名作と感じたのでレビューしたい。


【ゲーム概要】

デザイナーは、「キーフラワー」で有名なリチャード・ブリーズ(Richard Breese)。R&D Gamesの創設者であり、たくさんのキーシリーズを作製している。実は本作もキーシリーズの一作「キーダムズ・ドラゴンズ(Keydom's Dragons)」としてリメイクされている。1~6人用となり遊びやすくなったようだ。

舞台は中東の都市モルゲンランド。アラジンの世界観がテーマとなっており、街は市場で賑わっており、丘の上はカリフの宮殿、地下は宝石を守るドラゴンの巣窟となっている。

カリフの宮殿には不思議な魔力を持ったアーティファクトが保管されており宝石と交換してくれるのだが、肝心の宝石は地下でドラゴンが守っている。ドラゴンの目を盗み宝石を手に入れ、アーティファクトを出来るだけたくさん入手することを目指す。

ゲームはラウンド制で、1ラウンドは2フェイズで構成されている。
①チップ配置フェイズ
②アクション実行フェイズ

メインボード上の最後のアーティファクトが購入されるとゲーム終了。最も多くのアーティファクトを所持しているプレイヤーの勝利となる。

<①チップ配置フェイズ>

各プレイヤーは1〜9(3はない)の強さが書かれたチップを持っており、手番ではこれらを1枚ずつメインボード上に置いていく。8枚のチップを全て置くと配置フェイズは終了となり、次のフェイズへ移行する。

<②アクション実行フェイズ>

このフェイズでは、左下の赤ドラゴンの巣窟から順番に処理を行っていく。下段のドラゴンの巣窟が終わると中段の市場を解決していき、最後に上段の宮殿の処理を行う。処理は、まずその場所のチップを全て表向けにする。

基本的に合計数字の一番大きいプレイヤーが、その場所のアクションを行う。ただしドラゴンの巣窟だけは上位のプレイヤーから順番に宝石を獲得していく。

右上の宮殿マスまで処理を行うとラウンドは終了。宮殿のアーティファクトと地下の宝石を補充して、次のラウンドに進む。これを繰り返していき、最後のアーティファクトが購入されるとゲーム終了。アーティファクトをたくさん所持しているプレイヤーの勝利となる。


【プロット式の入札システムが面白い!】

このゲームの最大の魅力は、他のゲームではあまり見ないメインシステムにある。基本的にはチップの強さを隠して入札するブラインドオークションなのだが、ゲームボード上のどこにプロットしても良い。

アクションしたい場所にチップを置くのでワーカープレイスメントと言えなくもないが、発表時期の2000年にはまだワカプレのメカニズムが存在していなかったのは興味深い。

ドラゴンの巣窟では宝石を獲得できる。このゲームは基本的に宝石を貯めて宮殿でアーティファクトを購入することが目的なので、地下でたくさんの宝石を入手することは非常に重要なのだが、このメインシステムのおかげで思うようにいかない。

宝石には5種類ありどれを集めても良い。ただしアーティファクトを購入する際には1種類の宝石で支払う必要があるため、どの宝石を集めるかは所持している宝石の種類に依存する。しかし、とにかく他のプレイヤーが邪魔w

例えば、青の宝石がたくさん出ているラウンドは、青の巣窟に皆んなが群がってしまう。そして1位のプレイヤーから宝石を多く獲得していくため、競り負けると宝石の数が少ないばかりか、入手できないこともあり得る。これはかなりヤバい。

このため、その場所にチップをさらに注ぎ込むのか、それとも入札の少ない場所へターゲットを変更するか悩むことになる。しかもチップの強さはブラインドのため、相手がどの程度注ぎ込んでいるかは分からない。もしかしたら1と2の2枚かもしれないし、9の強さを1枚だけ置いているのかもしれない。この読み合いが本当に面白い!


【宮殿での競りはバランス感覚が大事!】

そして地下で苦労して入手した宝石を使って、宮殿マスではお目当てのアーティファクトの入札が行われる。もちろんこれもブラインドオークションとなっているので、相手がどの程度のチップを置いているのか全く分からない。

このアーティファクトの数でゲームの勝敗が決まるので、出来るだけ大きな数字を置きたいところだが支払う宝石の数は入札した数字の合計分となる。つまり合計の数字が大きいほど支払う宝石の数は多くなる。これは悩ましい!

競りには勝ちたいが、支払う宝石は出来るだけ少なくしたい」、というジレンマが常に付き纏うことになり、また全てのチップをプロットしてからアクションの処理を行っていくため、地下でどの程度の宝石を獲得できるかも実はよく分からない。これは困ったものである。

「地下でたくさん宝石を得ることができるなら宮殿にチップを配置したいけど、もしかしたら一つも宝石を入手できないかもしれない・・・」、そんな不安がいつも頭の片隅にあるのだ。これは悩ましい。


【宮殿の門番がいやらしい】

大事なアーティファクトが保管されている宮殿には必ず門番が立っている。裏向きの門番チップには強さが示されており、ここを通過するにはこの門番以上の強さを持ったチップが必要になる。しかし門番の強さは処理の時に初めて分かるため、一体いくらのチップを置けば良いのか全く分からない。もう運に賭けるしかない。

しかし、運悪く門番より弱いチップだとしても門番の手にそっと宝石を握らせてやれば通してくれる。古来より人類に受け継がれた「賄賂」という知恵なのだ。門番の強さと同じ強さになるように宝石を支払えば、その後のアーティファクトの入札に参加することができるようになる。地獄の沙汰も金次第といったところなのだろう。なんともいやらしい話だが嫌いじゃないw


【魔法カードによる駆け引きが熱い!】

上級ルールでは、アラジンの世界観のため魔法が使用できる。アラジンのテントへ行けば魔法カードをもらえるのだが、これが凄まじい威力を持っている。21種類もの魔法があるのだが、ドラゴンの巣穴の宝石を増やす魔法や、奇数のチップを除去する魔法、中にはチップの強さを逆転する魔法まであり、これによりゲーム展開がドラマチックに変化する。

では、魔法が飛び交ってパーティゲームになるかというとそうでもない。まず魔法を使用するにはアーティファクト「アラジンの不思議なランプ」を使用する必要があるのだが、ラウンド中に使用できるアーティファクトは基本的に1つだけなので、使うタイミングが難しい。魔法の効果を打ち消す対抗呪文なるものも存在するので、魔法の使用には慎重さが求められるのだ。

このためゲーム終盤では、お互いにいつアーティファクトや魔法による特殊効果を使用するか睨み合いが発生する。この駆け引きの緊張感がたまらなく面白い!


<良いところ>

  • ブラインドオークションの要素を持ったワカプレによる読み合いが楽しい。
  • 獲得できる宝石の見込みと宮殿での入札の戦略性が面白い。
  • アーティファクトや魔法カードによる駆け引きが熱い!

<今一つなところ>

  • 同じことの繰り返しになるので、ややプレイ時間は長く感じる。
  • 魔法カードは言語依存があるが日本語版はなく、2000年の作品で絶版。

<ルール説明・プレイ時間>

ルール説明:15分、プレイ時間:2時間(4人プレイ)
ゲーマーなら初回から上級ルールがおすすめ。


【感想】

これは面白い!

ブラインドオークションの要素を持ったワーカープレイスメントであり、他プレイヤーとの駆け引きが非常に面白かった。中盤以降は「空飛ぶ絨毯」のアーティファクトを持ったプレイヤーが優位に立ったのだが、他プレイヤーも魔法カードを手元に潜ませて牽制するなど、心理戦の要素も強く盛り上がった。

基本ルールではアーティファクトの効果がなく魔法カードも存在しないので、やはりゲーマー同士ならば上級ルールが面白いだろう。アラジンの世界観も魅力的で、破茶滅茶な魔法カードもテーマに合っていて面白い。2000年の作品とは思えないほど現在でも楽しめるゲームだった。魔法カードに言語依存があるので、次回はぜひ日本語化して遊びたい。

残念ながら2000年の作品であり絶版のようなので入手は困難かもしれないが、機会があればぜひプレイしてみて欲しい。


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