- 2人~8人
- 30分前後
- 8歳~
- 2023年~
モジョ18toyaさんのレビュー
【レビュー】「モジョタイム 入る時には 気を付けて」策を練り十分な体制で失点を抑えよう!
【評価8/10】
ゴーアウト風味✖️ヤニブ風味
2024年にリリースされた本作、わたし個人的には昨今、小箱の良作がさまざま出ていると感じており、本作もこうした「小箱良作」の一角に入る作品と思っているのですが、幾つかのレビューを拝見したところどうやら評価が割れているようです。
以下では本作の醍醐味を見ながら、なぜ評価が割れているのかも含めて考察してみたいと思います。
◇基本の流れ
本作はラウンド終了ごとに失点を計算し、誰かが50失点以上した時点でゲーム終了。最も失点が少ない人が勝者となるゲームです。
失点を減らす方法は存在しないため、常に出来るだけ失点を小さくするプレイが求められますが、これがなかなか悩ましい。
以下、各ラウンドの流れです。
79枚のカードをシャッフルし、各プレイヤーに8枚ずつ、手札として配ります。捨て札山として、山札からカードを1枚捲り配置します(選択ルールでは1枚ずつ、2つの捨て札山を作る)。
カードには0から12までの数字が書かれています。色はトランプのスートのようなものではなく、数字によって決まった色がついており、失点計算にしか使いません(カードを出せる出せないには関係ない)。
カードの構成は、数字が小さいほど枚数が少なく(0,1が各4枚)、大きくなるほど枚数は多くなっていきます(11,12が各8枚で最多)。
スタートプレイヤーから、必ず手札を1枚ずつ捨て札山の上に重ねて置きます。パスはありません。
この時、自分のカードを出す前の捨て札カードと、自分が出したカードの比較によって効果が発動する場合があります。
- 捨て札より小さい数字を出した場合は、そのまま次の人の手番に回せます。つまり手札を一枚減らせたということ。
- 捨て札より大きい数字を出した場合は、山札からカードを1枚引く必要があります(基本ルールの場合)。手札を減らせていない、ということ。
- 捨て札と同じ数字のカードを出した場合、追加手番を得ることができます。
3が発動し、追加手番で出したカードにも上記の3種のルールが適用されます。つまり次に出した数字が小さい数字を出せばそのまま次の人の手番になるし、大きい数字なら山札からカードを引かなければならないし、さらに同じ数字を出せばまた追加手番を得ることができるということ。
従って、極論で言うと手札の中で7枚くらい同じ数字を持っている場合、捨て札にその数字が出た時に自分の番が回ってきたら一気に7枚出しできる場合があるはずですが、実際にはそんな場面を見たことはありません。ただ、数字がバラつくよりも、できれば同じ数字を複数枚ずつ持った方が、チャンスが来た時に一気に枚数を減らせるチャンスがあると言うことです。
以上を基本として、まずは枚数を減らしていくことを基本戦略としつつ、手札が3枚以下になったらモジョタイムに突入です!このモジョタイムがあるため本作を単純な「ゴーアウト」とは呼びにくい。
◇モジョタイム
誰かの手札が3枚以下になったら、これらの手札を机に伏せます。モジョタイムに入った人にできることは、手番が回ってきたら伏せていたカードのうち1枚を表にすることだけ。
この事には2つの意味があります。
1つは本人にとっての意味。手札の交換ができなくなるということ。
もう1つは周りにとっての意味。モジョタイムに入ったプレイヤーが捨て札山に干渉しなくなるということ。
場合によっては残されたプレイヤー達はこれを活用して同じ数字を出し続けて一気にカードを減らすかもしれませんが、モジョタイムに入った人には手の出しようがなく、あとは祈ることしか出来ません。
こうして、誰かが机に伏せたカードを全部表にするか、上記の出し方ルール3(捨て札と同じ数字を出せば連続手番)を活用して一気に全手札を出し切ったとき、ラウンド終了となります。
◇ラウンド終了
まず伏せたカードを最初に全て表にした人(または全手札を出し切った人)がモジョカードを受け取ります。
全員が伏せたカードや手札を全て公開し、それぞれのスコアを比較します。
(筆者注:「手札または伏せ札の合計数値」を呼称する用語があると説明がしやすいので、本レビューの中では「スコア」と呼びますが、これは本レビュー独特の言い回しでありルールブックには載ってませんのでご注意を)
モジョカードを受け取った人のスコアが全員の中で最も低ければモジョ成功!モジョカードを「0」の面を表にしてその人は一切失点しません。スコアが同じ人が何人居ても、一番スコアが低いうちの1人になれていればセーフです。
逆にモジョカードを受け取った人のスコアより小さいスコアの人が1人でもいればモジョは失敗。モジョカードを受け取った人はモジョカードを「10」の面にし、スコア+10点を失点します。自分が最小でなければペナルティを受ける辺りはヤニブ風味ですね。
なおモジョカードを受け取った人以外は全員、スコアがそのまま失点となります。
この時点で失点が50点を越えた人がいればゲームは終了です。そうでない場合は次のラウンドに突入します。
では、肝心のスコアの計算方法を説明します。
◇手札・伏せ札のスコア
基本的には数字がスコアです。当然失点を下げたいので小さい数字の方が優秀です。
ただし、同じ色のカードが複数枚ある場合、「同じ色の最も大きい数字1枚だけがスコアとなる」仕組みです。
具体例を出しましょう。例えばAさんは伏せ札3枚が1/3/5、Bさんは手札6枚を残しており中身が2/3/3/4/4/4だったとします。一見、合計数はBさんが圧倒的にダメなように見えます。
しかし、Aさんのスコアは青カードの1点+緑カードの3点+黄色カードの5点で9点。一方Bさんは持っているカードが全て緑色のためスコアは4の1枚だけとなり「4点」です。よってこの2人の比較で言うとBさんの方がスコアが低い、と言うことになります。Aさんは失点がやや多いので敗北に一歩近付いてしまいました。
色と数字の対応は、0〜1が青、2〜4が緑、5〜7が黄色、8〜10がオレンジ、11〜12が赤です。失点を抑えるには色をまたぐより、なるべく単一の色に揃えた方がいい、と言うことになりますね!逆に、いかに手札をいち早く3枚にしたとしても、そのカードが「7/10/12」とかだと29失点で爆死ものです!それならまだ12が3枚の方が全然マシなのです!
しかし。
基本ルールで言うと手札に加えるカードは山札からランダム引きです。これでは「色を揃えた方が有利と言っても引き運要素が強すぎじゃない?」となるでしょう。
恐らくここが評価が分かれてる原因ではないかと思います。ですので、基本ルールでは運要素が強すぎる!と思われた方には選択ルールの「二つの捨て札山ルール」導入を推奨します。
◇「二つの捨て札山ルール」を導入すると何が変わる?
捨て札山が二つになるだけで、戦略性がグッと高まります。
まず、手札を出せる場所が2箇所からの選択になります。また、カードを出そうとする捨て札山のカードより大きい数字を出した時、カードを取る場所が「山札か、今カードを出した方ではない捨て札山の一番上のカード」となります。つまり見えているカードを手札に加えることが可能になる。
これによって捨て札山が1つの時の「引くカードは運否天賦」感は減少し、手札に加えるカードをより戦略的に選べる。場合によっては、無理に数字が小さいカードを出して手札枚数を減らすより、色を揃えられるカードが捨て札山に見えている場合は、もう一つの捨て札山にわざと大きい数字のカードを出し、狙いのカードを引き取ってスコアを下げた方が良い場合も出てくるのです。
このように戦略的に手づくりできるようになるため、基本ルールよりもみんな総じてスコアを低くできます。となると、基本ルールよりも更に入念に準備をしてからモジョに入りたい。その結果、皆の手札整理と入れ替えがますます多くなり、必然的に捨て札が大きい数になりがちになる。
こうなると、手札の中身が中途半端(まだ8とか7とかが残っている)なまま枚数が4枚まで減ってしまった時に「自分もまだ手札を入れ替えたいのに、どちらの捨て札山よりも小さいカードしかない!モジョ入りを回避できない!」と言うシチュエーションも生まれます。こうした「意思に反した入モジョ」を避けるための対策として、「二つの捨て札山ルール」では大きい数字を握っておくことも基本ルールより重要となってきます。
ただし、これはジワジワ、ジリジリとしたゲーム展開では有効なのですが、大きい数字を手札に抱えてしまっているので逆に「手札が比較的良くて電光石火のようにモジョに入る速攻タイプ」には弱くなる。
こんな時は、残された人たちはアワアワしながら必死にスコアを下げようと頑張るしかない。スコアを減らせるチャンスはモジョに入った人が伏せたカードを全て表にするまでしかなく、まるで時限爆弾を仕掛けられたような気持ちです。しかしこういう大ピンチにあっても、知恵と工夫でスコアをいい感じに下げれた時の満足感もなかなかのものです^^
いかがでしょう?たかが「捨て札山が一つ増えるだけ」ですが、ゲーム性がかなり変わると思いませんか?私としてはこちらのルールを用いた時が「モジョの真価」だと思っています。
◇弱点
さて、「二つの捨て札山ルール」を用いた時の戦略性の高さを中心に見てきましたが、本作が抱える弱点についても触れない訳にはいきません。
私の視点からの話にはなりますが、基本ルールを捨て札山一枚とし、二つの捨て札山ルールの方を選択ルールとしたところは弱点と感じました!
遊んでみれば分かりますが、特にゲーマーが遊ぶなら圧倒的に面白いのは「二つの捨て札山ルール」の方です。私が本作を取り出す時は、初プレイの人がいても絶対初回からこちらのルールで遊んでいます。よって、ゲーマーをメインとして据えるなら二つの捨て札山を基本ルールとし、現在基本とされている「捨て札山一つ」を簡易ルールにしてくれた方が良かった。と、個人的には思います。
ただ、これは想像ですが、恐らく「ウノなどと同じように、ゲーマーじゃない一般層に広く届いてほしい」と言う思いの方をメインにしたということなのでしょうね。
確かに基本ルールでも、とても運要素が強いとは言え、ライトに遊ぶという意味では悪いとまでは言い切れません。
ただ、こうした作品をいち早く手に取って遊ぶのは間違いなくゲーマーです。そうしたゲーマーに誤解され、あまり良くない評価がついてしまうと、結果的には一般層にも届きづらくなってしまうのでは?と言う懸念があります。ゲーマーにとっては、基本ルールだけで遊ぶと「運次第で戦略性が低く、特に新しい試みも見どころもない凡作」で終わりかねない作品なんですよね…
ゲーマーは「楽しいと思ったゲームをいろんな人と遊びたい!自分がお金を出して買ってでも!ルールが多少面倒なものでも面白ければ説明を頑張ってでも!」という熱量を持った人たちです。楽しいものは共有したくなってしまうゲーマーの熱を背に受けて一般層にも広まっていく、という戦略を取って欲しかったなぁ、と私は思いました。とはいえ、私も厳密なマーケティング理論に基づいて語ってる訳ではなく、あくまで1ボードゲーマーとしての想いの話です^^;
もう一点、小箱にしては意外とルールの把握が難しい点も弱点かな。丁寧に説明したためとは言え、本作のレビューがこれほどの長さになったことを鑑みても、普通に遊ぶ上でも把握することが意外と多いです。そのため、初めて遊ぶ人が混ざると最初の2ラウンドくらいまでを「お試しゲーム」として回してから本番に入ることが多いです。
ここら辺も、
・ルールはやや複雑→ゲーマーがターゲット?でもそれなら最初から「二つの捨て札山」ルールで遊んだ方が絶対いいよね?
・基本ルールは「捨て札山一つ」→ライト層がターゲット?でもそれならルールが意外と複雑じゃない?初回プレイからすぐワイワイ、とはならないかも。
と、モヤモヤを生む原因となっているかもしれません。
◇まとめ
まとめに入ります。本作は
ゲーマーにとっては「凡作」の烙印を押されてしまう懸念のある捨て札山一つルールを基本ルールとしてしまった事で大変誤解を生みやすくなったものの
選択ルール「二つの捨て札山」を適用することで段違いの戦略性が生まれ、モジョに入るかまだ手札を弄るか、スコアを下げる動きか同じカードや同じ色で揃える動きか等を悩みながら互いに牽制しつつモジョ入りのタイミングを測るジリジリ展開を基本としながら、
たまに発生する速攻によるテンポチェンジもいい刺激になる良作小箱でした♪
以上です!思っていたより長文になりましたが、最後までお読みいただけた方、ありがとうございました^^
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