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  • 2人~6人
  • 30分~45分
  • 8歳~
  • 2023年~
232名
13名
0
約1ヶ月前

【ロングレビュー】ファミリーでも大人同士でも!手札の全公開を目指し世界を駆け巡れ!

【評価8/10】

移動アクション✖️秘密の目的

本作は「ニムト」「エルグランデ」「ティカル」「ヒューゴ」など、ボードゲーマーなら知ってるであろうたくさんのタイトルを生み出した大家・ヴォルフガング=クラマー氏の作品です。

クラマー氏はミヒャエル=キースリング氏との共作が多く、ボードゲーマーの間では「クラマー&キースリング」の黄金コンビとして良く知られていますが、本作は共作ではなくクラマー氏の単独作品となっています。

ズバリ核心から言いますと本作はファミリーから大人同士まで、ボードゲーム初心者から熟練者まで広く楽しめる、間口の広い良作となっています!

以下で、本作の特徴を説明していきますね。


美しいゲームボード

ゲームの遊び方の前にまず触れておきたいのが、このボード!非常に美麗です!そして結構大きい!笑

このボードを見るだけで「うわぁ、この綺麗な盤面のあちこちに旅するんだ!」とテンションが上がること請け合いです!が、プレイのためにはある程度の面積を用意する必要がある点には注意が必要です。



◇基本の流れ

ではゲームの基本の流れを追っていきましょう。

まず本作の勝利条件は「最多得点を取ること」です。美しい世界地図のボードを見ると第一印象では「特定のゴールに最初に辿り着くこと」とか「目的地をたくさん回ること」などが目的になってるのかな?と感じるでしょうが、実際は終了フラグが踏まれるまでにいかに点数を取るかのレースとなっています。


ただし、点数を取るためには色んな場所に行く必要があるので「世界中を駆け巡ることが目的」というのは当たらずとも遠からず、と言ったところですね。

点数を取る方法ですが、世界各地の名所や遺跡、計80か所が描かれた探検カードの中からランダムに各人9枚(4〜6人プレイ)または12枚(2〜3人プレイ)受け取り、これらの場所に探検隊が到達したり通過したりするごとに、カードを公開して手元に置きます。また、全員が見える場所に6枚の探検カードも公開されており、これらの場所に到達した人はカードを手元に引き取ります。これらの手元に公開されたカードが後で点数になります。

ここで一味効いているのが「探検隊は各プレイヤーごとにいるのではなく、共通の探検隊3つを皆で動かす」という点。つまり、自分専用の探検隊が居て自分の目的地を目指して自由に動ける訳ではなく、色んなプレイヤーの思惑によってあっちに行ったりこっちに行ったりするということです。ちょっと大変そうですね 笑

自分の手番で出来ることは基本、赤青黄の3つの探検隊のうちどれか一つを点線ルートに沿って一歩動かす事だけ。来た道を引き返すことはできないため、必ず前や左右に進んだことを示す矢印を1つ置いて、次の人の手番に回す。これを周り順でどんどん繰り返し、やがて誰かの手札が全部公開されたら終了の合図。手番数を同じにするまで全プレイヤーが手番を行なってゲームが終わります。最後に得点を競い勝者が決まる。公開した探検カードは1枚1点となりますが、公開できず手元に残してしまうと1枚ごとにマイナス1点となってしまうので注意です。非常にシンプルな流れ!


とまぁ、基本的な流れは分かりやすく、「ああ、確かにファミリーでも遊べそう」と納得でしょう。しかし一方でゲーマーの方だと「これで終わりならシンプルすぎない?本当に大人同士で遊べるの?」と思うかもしれません。

安心してください。大人同士、ゲーマー同士でも楽しめる仕組みがちゃんと織り込まれています!


重要地点トークン

まず駆け引きその1。手札の目的地のうち、4か所かをトークンで公開する必要があること。このトークンの場所に到達できれば通常の「公開したカードごとに1点」に加え、「トークン獲得の1点」がもらえます。ただしトークンは良いことばかりではありません。ゲーム終了時にトークンが盤面に残ってしまった場合、逆に1枚ごとにマイナス1点を受けてしまうのです。

さぁ、ゲーマーの皆さんはにわかに活気付いてきたのではないでしょうか?

「なるほどね、自分だけトークンを全取りして人にはなるべくトークンを取らせない動きが強いわけね?」
はい、その通り!となるとトークンをどこに置くかから既に心理戦が始まっている訳です 笑

他の人のトークンとあんまり離れた場所に置くとそこを経由してもらえないかもしれないぞ?とか。

いやいや、逆にそこに探検隊を行かせてしまえば他の人のトークン獲得を難しく出来るんじゃない?とか。

こうした重要地点の使い方にプレイヤーの性格も反映されるでしょうし、戦略も絡んできます。やり込み要素の1つですね!


特殊なスペース

また、世界地図には公開目的地や、各自の秘密の目的地になっているかもしれない「緑のスペース🟢」以外に2種類の特殊なスペースがあります。これが駆け引きその2。

青のスペース🟦:新しい矢印を即時1本置く

赤のスペース:チケットを1枚もらう

基本の流れでは手番では「探検隊1つを一歩動かす(矢印を1つ置く)」事しかできないと言いました。ただし、青のスペースに到達したりチケットを使えば話は別です。

青のスペースに到達すると即、追加で一本矢印を置ける。この時、置ける矢印の色には制限はありません。スペースに到達した色の矢印をさらに置いてもいいし、別の色の探検隊でも良く、自由度が高い。

また、もう一つの赤スペースでもらえる「チケット」は更に強い。1回の手番で最大2枚までしか使用できないという制限はあるものの、チケット1枚ごとに以下の3つの行動から1つを選んで使用できます。

  1. 好きな色の矢印を1本置く
  2. 既に置かれた好きな色の矢印の「先頭の1本」を取り除く
  3. 新たに山から探検カードを2枚引いてどちらか1枚を手札に入れたのち、手札から1枚カードを捨てる

1は青のスペースと同じく色の制限はありません。2はいわば「アンドゥ」。自分の思ってた道から逸れてしまった探検隊の進む方向を修正できます。3は「ちょっとこの目的地厳しいわ…」という時の救済策になるでしょう。

実はチケットはゲーム開始時点で各プレイヤーに3枚渡されていますが、恐らく使う機会はいくらでもあるので補充のチャンスがあれば逃す手はありません。

ゲーマーなら赤や青のスペースを利用して悪だくみ…もとい、自分が得できる行動をいろいろ思い巡らすでしょう。駆け引きの材料にもなりますし、なるべく他プレイヤーに踏ませず自分が目一杯得をできるためには…と考えるのが楽しい。特にアンドゥは悪い事ができそう…ロマンがありますね 笑


ループ

さて、本作の駆け引き要素ラストですが、ループを作った時に特殊な処理を行います

ループとは下の写真のように、同じ色の矢印が回り回ってぐるりと繋がった状態のことを指しますが、これを手番中に作った場合

これまで、その探検隊が訪れた好きなスペースから1本、タダで矢印を置くことができるのです。チケットも不要、矢印が到達した先が緑のスペースでも構いません。

この写真ではループの一か所から矢印を伸ばしましたが、望めばループの中ではなく、それまで矢印が引かれたどこからでも矢印を伸ばす事ができます。


「ちょっと待った。ループの効果と青スペースやチケットの効果の関係、教えてちょうだい。同じ手番中にループも青スペースもチケットも全部使えたりする?」そう思った方、いるんじゃないですか?

答えは使えます。もうバリッバリに!


これらを使いこなす事で、一見「学習教材にも使えそうな世界地図すごろく。温和で穏やかな家族用遊戯」風に見えてた世界が一変します。一歩進んででチケットを取り、取ったばかりのチケットを使って進み🟦を踏んで更に進み、ループを作って矢印無償で一本置き、伸ばした先でまた🟦を踏んで矢印を伸ばし、さらにチケットを使って矢印をもう一本置いて目的地へ…など、ゲームを始める前には思ってもいなかったほどの長距離移動を幾度も目の当たりにするでしょう

一見無理筋に見えた目的地を🟦、チケット、ループなどでグイッ!と近くに引き寄せられた時は超快感!です!


清廉な遊び方でも、大人の遊び方でも!

上記したルールはあくまでルールで、遊び方の指定は特にありません。ですが、ファミリー・初心者を交えて遊ぶ時と、ゲーマーの大人同士で遊ぶ時、本作はそれぞれに違う顔を見せるでしょう


ファミリーで遊ぶ時は、お子さんの自主性に任せて見守りつつも、青のスポットや赤のスポット、ループを絡めたコンボに気付いていなさそうな時は助言してあげる。たくさんコンボして一気に進めたり、1回の手番で目的地を2つ・3つと一気に公開できた時は、褒めてあげて一緒に喜んであげるのが良いでしょう。「お父さん(お母さん)困ったなぁー⚪︎⚪︎くん(ちゃん)上手で、なかなか目的地に行けないや」とお子さんを立ててあげるのも悪くないですね。

綺麗なボードを旅気分で進み、一緒に遊べるだけでも満足感は高い。カードには各名所の豆知識も載っており、ちょっとした学習教材のようにも使えるでしょう。


だが、ゲーマー同士のプレイとなれば話は別だ!!w


⭐︎プレイの一場面

A「はい、じゃあ緑のプレイヤーさんのトークンがある方を避けてこっちのルートね」

B「うわー考え直さない?(まぁいいけどね、そっちにもトークンを置いてない秘密の探検カード持ってるから)」

C「えーなかなかエグい動きだねぇ!Bさん、そんなこと許していいの?(いいぞ、私が巻き込まれないならバチバチやり合え〜!)」

B「Cさん、んなこと言ってるけど俺たちをやり合わせて漁夫の利を狙ってるんでしょ?」

C「いえいえ、そんな事は」

D「はいはい皆さん色々言ってるうちにループ頂きましたよ、じゃあこっちに伸ばそうかな」

C「え!ちょっとそっちはダメだよ聞いてないよ!」

E「(あ、そっちに来てくれるのは好都合、だけどそれを言うほどアホじゃ無いんだよね)うわーCさんには厳しい一手だね」

C「Eさん、なんかニヤニヤしてない?都合のいいルートだったんじゃないの?」

E「え?いやいやCさん可哀想だなーってw」

C「ふーん?じゃあチケット使って取り消しても問題ないよね?」

E「あーーうんもちろん(やべ、漁夫ってるの気付かれた?でもバレると本当にチケット使われちゃいそうだから平気な顔しとかないと)」

C「(うーん、EさんホントはDさんのルート取りで得したんじゃ無いのかなぁ、怪しいなぁ。でも確実な証拠はないからもうちょっと揺さぶってみようか)」

〜〜〜〜〜〜〜

こんな感じです。近い方向に目的地があるプレイヤー同士は半分協力関係にありながらも究極的には「最後は自分が出し抜く」ことが目的なので、ある時は協力し、ある時は自分だけの利益を追求しながら手札の探検カードの全公開を目指します。

目的地は世界中に散らばっているから「アメリカでは枝分かれして利害は対立してるけど、アジアでは利害が一致してる」など、局地的な対立や協力関係はあれど、「完全な敵」も「完全な味方」もいないのです。

また本作では、自分の手番でなくとも、誰のプレイヤーの手番でも矢印が自分の探検カードの🟢に到達しさえすれば手札を公開することができます。むしろ、自分の手番ではない時に相手が自分の目的地を通過してくれるのが一番美味しい。こうした意図をお互いに隠しながら表面上はにこやかに協力関係を装う様はまさに仮面舞踏会。丁々発止の会話のやり取りを楽しみながら自分の利益を最大化させようと互いに企む「大人のゲーム」を楽しめるでしょう。

同じルールで遊びながらも、ファミリーでもゲーマー同士でもゲームが成立する。この幅広さが本作の真骨頂と感じます。さすがのクラマー氏の力量ですね!


弱点

上記のように幅広い層が楽しめる本作ですが、弱点が皆無ではありません。その根本は「本作が1996年初版作品のリメイク」だという点。

もちろん、古いものがダメと言っているのではありません。しかし当時のルールは今よりも「良く言えば大らか、悪く言えばガードレールがない」傾向があります。つまり、プレイの匙加減が人に任されている、ということ。


その表れとしてまず1点「🟦、チケット、ループなどを組み合わせたコンボを使いこなせる人と使いこなせない人が混じって遊んだ時に、コンボを使いこなせる人が思うさまコンボを連発すると圧倒的な差が生まれかねない」という点があります。

無論、手札の探検カードはランダムに配られていますから、あるプレイヤーが「俺ツエー!」のコンボ無双をしている最中に誰かの手札の目的地を無意識に通過してしまうことはあるかもしれません。しかし同卓者の中で気持ち良くジャンジャンコンボを連発する人と、それができない人が混じった時、コンボができない人から見た風景はどのように映るでしょうか。

ただしそれを慮ってコンボを控えてしまうと「コンボによる長距離移動」が本作の大きな醍醐味の1つであるがゆえ、爽快感が失われてしまう恐れもあるのが難しいところ。


もう1点は、本作の得点システム上、途中で勝利を諦める人が出てしまう場合があること。その理由は本作に得点を隠す仕組みがなく、ちょっと頭の中で計算すれば全員の得点があからさまに分かるシステムだという点。

本作の得点は「公開手札が1点、公開できなかった手札がマイナス1点」と、その差には2点の開きがあります。重要地点の場合は更に開きが生まれ「手札公開+トークン獲得=2点と、そうできなかった場合のマイナス2点」で4点差です。これ、結構な差なんですよね。

この点数の仕組みによって、中盤くらいまではデッドヒートでも、終盤になるとトップと点差が相当離れてしまう人が出てくる場合がある。全員が「トップを取れないにしてもなるべく上の順位を目指す!」と頑張ってくれるプレイヤーばかりなら、盛り上がりを保ったまま最後まで楽しく遊ぶことができるでしょうが、そうとも限らないですよね。


上記の弱点2つは「ゲームが内包する弱点」というよりはむしろ「プレイヤー側の問題」と思う方もいるかもしれません。ただ、ゲームの歴史はこうした問題の回避を模索してきた歴史でもあります。例えば「コンボを使うと強いが反動やリスクがある」とか、「意図的に点数を見えづらくしてプレイヤーのモチベーションを最後まで保つ」等、さまざまな試行錯誤が行われてきたのですが、本作は1996年作品のリメイクのため、こうした「プレイヤーのモチベーション低下に対するシステムからの回答」は盛り込まれてはいません


ただし対策がない訳ではありません。当時こうしたゲームはたくさんあり、かつ当時のゲーマーは十分楽しんでいたわけですし、現代だってガードレールのない作品もある。こうしたゲームを遊ぶ時の遊び方で対応すれば良いだけの事です。つまり「弱点は、遊ぶ人間側で回避する」


本作に限らないことですが、点数を取ることや勝つことを至上としてしまうと、点数が低い人や負けた人のプレイングは価値が低いことになってしまう。勿論、主義主張は色々あるとは思いますが、「点数や勝利が至上なのではなく、遊んだ時間自体が尊い」と思うボードゲーマーも少なからずいるはずです。だから、一緒に遊ぶ人にもその事に気づいてもらえれば良い。そのためには点数よりもプレイ内容の方に意識を向けてもらう遊び方をするのが大事です。

つまり、良いプレイは賞賛したり、してやられた時は(他の人を引かせない程度に)悔しがったり、他の人の手番でも熟練者が良い動きを考えて提案したり(こうした方がいいよ!ではなく「こういう手もあるよね」みたいな方法で)ということです。特に提案などについてはあまり好きではない人も居るので、そこは卓の雰囲気を見ながら、という事にはなりますが、総括すれば「その卓が楽しいプレイになるよう、コミュニケーションを活用する」という事ですね。

こうしたプレイを心がけて、トップを取れなかった人も「他の人にうまく目的地行ってもらえてカード出せたの気持ち良かった〜!」とか「コンボ楽しかった!」と振り返りつつ「楽しかった!」と言ってもらえれば、本作のプレイは大成功ではないでしょうか^^


まとめ

以上で見てきたように、本作は

やや古いゲームのリメイクであることから「システムによるガードレール」が用意されていないという一面は否定できないものの、プレイングで回避できる範囲の弱点にとどまっており

世界旅行というスケールの大きさ、ボードの美麗さは気持ちを盛り上げてくれ、

基本の流れはシンプルで容易、ファミリーでも遊べるほどの懐の広さを持ちつつ、

重要地点の配置にまつわる駆け引き、特殊スペースとループを駆使したコンボの楽しさ、お互いの意図を読み合って協力したり出し抜いたりする心理戦があり、大人同士のプレイにも耐えうる

という、レンジの広さを持った良作でした!未プレイの方はぜひ一度お試しいただければと思います♪


以上です。長文乱文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!皆様の良きボドゲライフに貢献できれば何よりです^^

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