- 1人~5人
- 110分~140分
- 12歳~
- 2020年~
ファイユームwinterkoninkskeさんのレビュー
二人プレイ時の感想を書きます。
ファイユームは、古代エジプトの大きな湖に突き出た半島を舞台にした開拓ゲームです。
プレイヤーは王から託された限りある資源を使い、湿地からワニを排除し、道を整備して、やがて大きな都市やモニュメントを建設することで、優れた参謀として名声を得ることで勝利します。
なお、筆者はフリードマン・フリーゼの作品を遊ぶのは本作が初となります。彼の他作品と比較しないレビューであることを、予めご了承ください。
プレイヤーが手番に与えられた選択は三つ。
・手札からカードのプレイ
・市場からカードの購入
・管理アクション
です。
このゲームの特徴として、プレイヤーの選択は全て70枚以上に及ぶカードに支配されています。
番号が振られたカードがランダムに、若い順に市場に並ぶような仕組みになっていて、最初はごく僅かな開拓しかできません。しかし次第にカードの番号が高くなって来ると、大きな効果をもたらすようになります。
プレイヤーはゲーム中、このカードをプレイして開拓しつつ、同時に報酬や勝利点を得ます。
最初はこんなカードプレイの仕組みだけで2時間級のゲームになるのか?などと思いますが、やってみると恐ろしく計算し尽くされたシステムにただただ驚き、夢中になります。
まずゲームには「プレイヤーカラー」が得点勘定のマーカー以外に存在しません。盤上に置かれた道や町は、全てのプレイヤーの(王の)所有物なのです。基本的には自分の持っているカードの効果に沿うように町を発展させて行くのですが、時としてその建造物を他のプレイヤーに利用されたり、逆に利用しながらカード効果で得点を重ねていきます。
そのため常に他人が盤上で起こすアクションに注視するインタラクションがあり、誰がどこで得をするかの睨み合いが効いています。
そして多種多様なオールユニークのカード効果です。収穫や建設の効果は、それぞれが別のカードとシナジーを持っていて、ひとつ手に入ると次はアレが欲しい、コレも欲しい…となるのですが、それがある時突然カード市場に並びます。一枚の効果が高いほど有利になり、かつカードはそれぞれが希少なバランスになっているため、必ず欲しいカードが出現します。ボーッとしていると他の人に取られたり、ゲームから除外されてしまうので、買うタイミングが本当に難しい。
盤面を見てカードのプレイを優先すべきか、多少無理をしてでも高いカードを買うのか…非常に悩ましいジレンマが毎手番襲って来ます。
更に選択を難しくするのが、プレイしたカードがその順番に捨て札に重なっていくルールです。一度の回収アクションで、無料で回収できるのは上から3枚まで。しかも無駄な手札は手番や金を損する設計なので、とにかくプレイのタイミングに悩むハンドマネジメントが要求されます。
こうして、各プレイヤーは自分が取れる最も効率の良い選択をし、ライバルと差をつけます。
ゲーム開始から徐々に半島が発展し、出来るアクションも強力で油断ならないものになって来る…カードの強さがじわじわ上がってくることで、ゲームの展開も刻々と変化していくゲーム性。カードにゲーム展開を語らせるゲームというか、そんな巨匠の巧妙な手口を感じさせてくれる素晴らしい作品です。体感1時間で2時間経ってます。
少し気になった点は、終盤ギリギリになるとちょっと勝敗が分かり始める点ですね。それまでの深いゲーム展開の結果がたんに出ているだけ、という状況なんですが、終了後に追加得点があるわけではないので、終了前に勝敗はほぼ確定しています。ただ、「何故そうなったのか?あの時ああしていれば…」などといった反省点がいくらでも出てくるので、今度はもっと上手くやろう、と次へのモチベーションも維持できる、のめり込み型の楽しいゲームだと思います。
プレイ人数は二人でも問題なく遊べます。三人の方がカードや盤面のインタラクションが強く働くと思うので、より難易度を上げたいのなら三人以上の方がいい予感はします。どのみち、私はこのゲームを今後も二人プレイで繰り返し遊ぶことになると思います。二人でも全然面白いですから。
コンポーネントはワニを始めとした大量の木駒がベースです。そして最重要なカード群と、巨大なメインボード。
最近のユーロゲームとしては相当地味で素朴なアートワークと感じるかも知れませんが、ゲーム後半は盤面の情報が増えて複雑になって来るので、余計な派手さはかえって不要なようにも感じました。各木駒の見やすさが際立ち、遊びやすいです。
それとゲーム開始時は大量の緑のワニコマが置かれています。
緑だらけのフリーゼのゲームが始まります!
からの、いや簡素なメインボードだな…からの気づけば獣のような唸り声を上げてカードと睨めっこするまでハマり込む…までの流れが本当に素晴らしく、作家の思うつぼになりました。
「面白いゲーム」や「楽しいゲーム」に出会う機会は幾度となくありますが、「凄いボードゲームだ!」と思えるような満足感にはなかなか辿り着かないと思います。
貴重な体験をさせてくれたファイユームには、感謝しかないです。
- 200興味あり
- 270経験あり
- 68お気に入り
- 272持ってる
winterkoninkskeさんの投稿
- レビューエンデバー:ディープ・シー二人プレイ時の感想を書きます。エンデバー:ディープ・シーは、海洋を調査...11日前の投稿
- レビューアクロポリス二人プレイ時の感想を書きます。アクロポリスは、六角形のタイルを自分の領...18日前の投稿
- レビューストライクストライク!は、プッシュ・ユア・ラック要素の強いダイスぶん投げ系のアク...18日前の投稿
- レビューアウチ!アウチ!は、カードをめくる時につまんだ「辺」によって当たり外れが決まる...19日前の投稿
- レビューラッツ・オブ・ウィスター二人プレイ時の感想を書きます。ラッツ・オブ・ウィスターは、数多のネズミ...19日前の投稿
- レビュームーアランド二人プレイ時の感想を書きます。ムーアランドは、水路に理想の植物と生態系...約2ヶ月前の投稿
- レビューピラミドミノ二人プレイ時の感想を書きます。ピラミドミノは、ドミノタイルを四層のピラ...5ヶ月前の投稿
- レビューアップルジャック二人プレイ時の感想を書きます。アップルジャックは、自分のボードにリンゴ...5ヶ月前の投稿
- レビューエタリヤ:創世の神石エタリヤ:創世の神石は、二人専用の陣取りゲームです。7×7の盤面はダブ...8ヶ月前の投稿
- レビューサンドキャッスル二人プレイ時の感想を書きます。サンドキャッスルは、各自30枚の山札から...8ヶ月前の投稿
- レビューカスカディア:ランドマーク(拡張)二人プレイ時の感想を書きます。カスカディア拡張:ランドマークは、基本ゲ...9ヶ月前の投稿
- レビュー西フランク王国の建築家:奇跡の大業(拡張)二人プレイ時の感想を書きます。西フランク王国の建築家:奇跡の大業は、ベ...9ヶ月前の投稿
会員の新しい投稿
- レビューイーオンズ・エンド:レガシー1~4人で協力し、拠点を襲ってくるボスを倒すデッキ構築型の協力型ボード...38分前by ぽっぽーくるっぽー
- レビューマーダーミステリー:ザ・トリロジー【一言感想】期待を越えられず、個々のマダミスとしての出来も凡以下2時間...約1時間前by ココラム2級
- レビュー解脱RTA5/10アークライト・ゲーム賞2024最優秀賞作品「バザールの商人たち...約3時間前by 白州
- レビュースターウォーズ デッキビルディングゲーム6/10その名の通りのゲーム(笑)youtuberが紹介していたり、雑...約3時間前by 白州
- レビューラマ私の大好きなクニツィア先生の簡単ルールのゴーアウト系です\(^o^)/...約9時間前by ぷにたろちゃん
- レビューイーオンズ・エンドすごく楽しい協力型デッキ構築系ボドゲですが2-3人でプレイすることをオ...約10時間前by KKFA
- レビュー現場は安全っていったじゃないですか!~仕事猫&電話猫カードゲーム~今まで買った中で1番ひどかったゲームなので書いておきます。発売当時、み...約11時間前by KKFA
- レビューザッツ・ノット・ア・ハット!たった数枚のカードが覚えられない!プレイヤー全員にイラストが描いてある...約17時間前by のっち
- レビューフィッシェン引き取りたくないタイミングと引き取りたいタイミングが結構難しい。個人的...約17時間前by マシュ
- レビューファラウェイ:地下世界より(拡張)ファラウェイ好きすぎて海外から購入。0と70〜75のカードとボーナスカ...約18時間前by マシュ
- レビューシージオブルーンダー7/10クニツィアのタワーディフェンス+デッキ構築+協力ボードゲーム。...1日前by 白州
- レビューキャンバス:リフレクション6/102020年に発売された「キャンバス」が話題になって、品薄になっ...1日前by 白州