- 3人~4人
- 40分~60分
- 10歳~
- 1995年~
カタンたっくん@カードゲーマーさんのレビュー
2/10 ボドゲ初心者はとりあえすカタン?いやいやちょっと待て!
世界的に有名なボードゲームで、故に「ボドゲ初心者はとりあえずコレ!」みたいな風潮もある本作ですが、ハッキリ言ってボドゲ初心者には全く向いていません。
私はボドゲサークルに入りたてのボドゲ初心者の頃に1回、ボドゲに慣れてボドゲ中級者~上級者と言えるレベルになってからも3回ほどプレイしましたが、1度も面白いと思った事がありませんので、ボドゲ中級者・上級者にとってもかなり人を選ぶゲームだと思います。
理由を挙げます
①1位が勝てない「ヘイト管理ゲー」
おそらくこのゲームで最も好みの分かれる部分だと思います。
このゲームでは資材交換・協力・同盟など、プレイヤー同士の様々な取引が許容されており、結託して特定のプレイヤーの足を引っ張る「いじめ」が容易なシステムになっています。
故に、他のプレイヤーからヘイトを向けられるとそれだけでプレイの幅が大きく狭まり、さらに盗賊による絶望的な直接攻撃(後述)も飛んできます。
こうなると、勝つことはきわめて困難です。
そのためこのゲームでは、どれだけ序盤からアドを稼いでも、1位になると他のプレイヤーからヘイトを集めて「強いものいじめ」を受けるため不利になり、努力が実を結ぶことがありません。
一方で、2位のプレイヤーには1位ほどヘイトが集まらないため、1位が妨害を受けている間に着々と体制を整えることができ、最終的には最も勝利しやすくなります。
よく言えば「ヘイト管理ゲー」ですが、悪く言えば「1位が勝てず、2位が漁夫の利的に勝つゲーム」です。
どれだけ努力してアドを稼いでも、ヘイトによって強制的に均されて勝てないのはいい気分ではありませんし、後述する通り運要素が高く、意図的に2位を狙えるほどプレイングに戦略性がある訳でもありません。
勝っても「運に勝たされている」感が強く、「自分の戦略が思い通りに決まった!」といった嬉しさがありません。
②運要素が高く、ひたすらダイスを振るだけの時間が長い
このゲームでプレイ時間の大半を占めるのは、誰かが2D6のダイスを振り、その出目に一喜一憂する時間で、そこにプレイヤーの意思は介入しません。
ハッキリ言って双六と大差ないです。
私がボドゲ初心者に最も知ってほしいことは「ボードゲームは将棋・双六・トランプだけじゃない!他にも楽しいゲームが沢山ある!」という事です。
カタンをプレイして「ボードゲームって双六みたいなやつばかりなんだな」「じゃあ双六でいいや」と思われてしまうことは避けたいです。
熟練者からしても、プレイングを活用できる部分は初期配置・建築・盗賊・交渉くらいです。
全て足しても全体のプレイ時間に対して10~15分程度で、プレイヤーの意思が介入しない、ダイスを見届けるだけの虚無な時間がプレイの大半を占める(およそ1時間~1時間半程度)というのは、褒められたものではありません。
また、ダイスで特定の出目が出ないと硬直状態になりやすいです。
1巡したのにろくに資材が増えずにハイ次の番、なんてことも多く、徒労感が強いです。
交渉や交換(港)があるとはいえ、交渉は誰も資材を持っていなければ応じられません。
そもそもダイスの出目を全員で共有するシステムである以上、自分にとって不足している資材は、同時に他のプレイヤーにとっても不足している資材であることが多く、需要が偏りやすいです。
ずっと6が出ていないなら、誰も6の資材なんて持っていませんし、硬直状態の解消にはあまり役に立ちません。
港での交換も、多くの資材を要求するため結局揃えるのに時間がかかったり、揃ったと思ったら盗賊でハンデス・ランデスされたりするので、なかなか硬直が解消されません。
③初期配置の影響が大きすぎる
初期配置は、このゲームで最もプレイングが介入する部分と言ってもいいくらい重要です。
勝敗を決するプレイングの大部分が最も序盤の初期配置に偏っており、プレイ時間の大半はその初期配置に振り回されながらダイスを振るだけ。
「序盤のミスを後半で取り返す」といった要素は薄く、 後半になるほど「もう勝てないと分かっているのに、消化試合を延々とやらされる」ような感覚になります。
1~2時間のゲームとして、とても時間のバランスが良いとは言えません。
運要素が高いゲームなのに逆転要素が薄く、ゲームコンセプトに一貫性が無くいびつな印象を受けます。
また、初心者と熟練者の実力差が、理不尽なほど出やすいのも問題です。
最初は何も分からなかった初心者が、ゲームに慣れてきた中盤から徐々に追い上げ、最後には『もう1回やりたい!』と思って終わるのがボードゲームの醍醐味の一つだと思うのですが、このゲームは初期配置の影響が大きすぎるため後半の追い上げは非常に困難です。
初心者は、何も分からないまま選んだ初期配置のせいで、最後まで苦しめられます。
初心者のゲーム体験として、気持ちの良いものではないでしょう。
プレイ順による有利不利が大きい点も見過ごせません。
例えば4人プレイの場合、最も理想的な配置が取れる1番手と、2つの配置を同時に行える4番手が極端に強く、2番手3番手がかなり不利になってしまいます。
ゲームバランスが悪く、フェアなゲームが楽しめません。
繰り返しになりますが、このゲームは初期配置がきわめて重要であり、その後の時間は目的の資材が出るまでダイスの出目とにらめっこする時間で、後半からの追い上げは困難です。
プレイ順による有利不利は、ゲーム終了まで強く影響し続けます。
④理不尽で強烈な妨害要素「盗賊」
盗賊による直接攻撃がとにかく強烈すぎます。
TCGで言えば、「最大5枚のハンデスと1枚ランデスが同時に飛んでくる」と言えば凶悪さが伝わるでしょうか。
直接攻撃のあるゲームが嫌いと言っている訳ではありません。
戦略的なボードゲームで、自分の思惑通り妨害が決まった時の楽しさは、ストラテジーボードゲームの醍醐味の一つだと思っていますし、私はむしろ2人用のTCGではそういうデッキを好んで使うタイプです。
ですがカタンの盗賊は、やる側もやられる側も楽しくありません。
やる側は戦況やタイミングを見計らって戦略的に妨害を撃つわけではなく、「ダイスで7が出たから」というだけの偶然をもとに妨害を行うため、「自分の戦略が思い通りに決まった!」といった要素が無く、楽しくありません。
やられる側も「妨害の種類やタイミングを想定し、プレイングで対策する」等の楽しみは無く、1つ前の産出で手札超過にさせられ、そのまま盗賊でなすすべなく大量のハンデスを受けるなど理不尽な側面が強いです。
加えて、「自分以外の全員に攻撃」ではなく、「意図的に狙った特定の相手に攻撃」であるため、「なんで俺を選ぶんだ!あいつを選べばいいのに!」という心理になりやすく、ギスギスしやすいです。
(なお、これら盗賊の問題点は、どれもダイスで7が出た時の盗賊に関するものです。
騎士カードの効果による盗賊は、やる側は妨害のタイミングを選べますし、やられる側も妨害のタイミングがある程度読めるので対策ができます。手札超過による理不尽なハンデスも無いため、適切であると考えています。)
⑤ストラテジーでも、コミュニケーションでもない、どっちつかずなゲーム性
先述の通り、このゲームでは資材交換・協力・同盟など、幅広いプレイヤー同士の取引が許容されています。
そのためストラテジーゲーム(「将棋」「宝石の煌めき」「MTG」のような、ルールが明確に定まっていて、勝敗を重視する戦略性なボードゲーム)のように見えて、実際にはコミュニケーションゲーム(「ito」「ペチャリブレ」「たった今考えた(ry」等、ルールが明確には定まっておらず、競技性よりも雰囲気やコミュニケーションを重視するボードゲーム)の側面がかなり強いです。
故に、ルールに明記されていない要素(交渉でどこまで噓ついていいの?どこまで言っていいの?どこまで条件を提示していいの?)が多く、ストラテジーゲームとして見るとルールが雑で曖昧で、戦略性・競技性に欠けます。
初心者向けという観点でも、この不明瞭な取引システムは不親切で分かりにくく、オススメしにくいです。
逆にコミュニケーションゲームとして見た場合は、上で挙げたような他のコミュニケーションゲームと比べて、ルールが複雑すぎます。
コミュニケーションゲームとしては無駄に覚えることが多く、プレイ時間も長く、さらに盗賊による直接攻撃が強烈であるため、盗賊の押し付け合いになってギスギスしやすいです。
コミュニケーションゲームとして見ても、魅力が乏しいと思います。
⑥手札が非公開情報である意味が無く、必要以上に暗記を強いられる
このゲームでは、手に入れた資材を手札として持っておくのですが、盗賊が絡まない限り、手に入れる資材も使った資材も全て公開情報となっています。
そのため、手に入れる資材と使った資材を全て暗記しておけば、他人の手札の内容を割り出すことができます。
ということは、手札の資材を非公開情報として隠す必要性がありません。
交渉で優位に立つためには、全ての資材の流れを把握する必要があります。
「無理に覚える必要はない」とはいえ、常に最善手を考えて動くことこそが対戦ゲームの醍醐味でしょう。
暗記がメインのゲームではないのに、無駄に他人の資材を暗記する手間がかかり、とても面倒です。
⑦リプレイ性がやや低い
島の地形は毎回変わりますが、どの資材でどの建造物を建てられるかは毎回同じですから、「序盤は道作りが大事だからレンガと木の需要が高い」「中盤以降は鉄の需要が上がる」といったように、毎回同じ資材に需要が偏ります。
プレイヤー別固有能力があるわけでもなく(一応港がそれに当たるかもしれませんが、後天的で効果も地味)、プレイヤー同士の戦略の差が生まれにくいため、毎回似たような展開になりやすく、リプレイ性がやや低いです。
初心者向けという観点では、初心者に「もう一度プレイしたい!」と思わせる力が欠けており、あまりオススメできません。
【総評】
ボードゲームの在り方を変えた歴史的価値があるのは分かりますが、「初心者にピッタリの定番ボードゲーム!」「不朽の名作!」みたいに扱われている風潮にはとても同意しかねます。
好きな人は好きなのかもしれませんが、到底ボドゲ初心者向きではなく、熟練者にとってもかなり人を選ぶタイプのゲームだと思います。
運で一喜一憂するようなパーティゲームがやりたいなら、カタンよりも双六の方が、複雑なルールを無理に覚える必要が無く、盗賊でギスギスすることも無く、逆転要素があって盛り上がるため、パーティゲームとして優れています。
今は他に面白いボードゲームが沢山ありますし、「ボードゲームと言えばカタン!」という時代でもありませんので。
初心者向けボードゲームとしては、上で挙げたような各種コミュニケーションゲームをプレイするか、「宝石の煌めき」等をオススメします。
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サークルで必死こいてやるようなものだとは到底思えない。
多分、やる相手か、取り組む温度のどちらかを間違えてるんじゃない?これ、本質的にはサイコロ振って資源集めるだけのゲームでしょ。双六や人生ゲームの類いだと思う。
ボードゲームがお好きなのは分かるが、やる相手と温度が適切じゃないんじゃないかな。
記事内でも述べていますが、親しい相手と遊ぶのであれば、各種コミュニケーションゲームを遊んだ方がより楽しめます。
また、友達とカジュアルに遊んでも、競技としてガチで遊んでも、どちらのスタイルで遊んでも楽しめるゲームは他に沢山あります。
前者の楽しみ方しかできず、楽しみ方を制限されてしまうゲームは残念だと思います。
そうですね。
一度プレイしてみないと分かりませんが、②の改善案として、そのようなトランプを使う方法はとてもアリだと思います。
④の盗賊の問題点を解消する案として、以下のような処理へ変更する方法が考えられます
1. 盗賊コマは使用しない(資材が止まることは無い)
2. 7が出たら、手札が7枚を超えているプレイヤーは、手札が7枚になるように捨てる。
3. 盗賊を発動させたプレイヤーは、資材置き場から好きな資材を1つ獲得する(他人の資材を奪うことはない)
盗賊が弱体化すれば①の問題点も緩和されますし、好きな資材を獲得できるので②の硬直しやすい問題も解消されるでしょう。
⑥についても、手札を公開しながらプレイすれば解消されます。
ご回答ありがとうございます。なんかバリアント考察自体が楽しくなってきました。近々検証プレイから入って、家族で実践してみたいと思います!
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