- 1人~4人
- 120分前後
- 14歳~
- 2021年~
ブーンレイクwinterkoninkskeさんのレビュー
二人プレイ時の感想を書きます。
ブーンレイクは、未開の地に入植し、土地を耕して牛を飼い、生産工場や生活施設を建てて地域を豊かにしていく開拓ゲームです。
筆者は120分級のゲームは初の挑戦となるため、その重量帯のゲームの経験が少ないことを先に挙げておきます。
大きなメインボードで、特にプレイヤーの視線の中心となるのが水色の「川下りコース」と緑の「開拓マス」です。
川下りのコースはゲームの進行状況を表しており、プレイヤーは手番のアクションの後、自分の船コマを進めて到着したマスに書かれた資源を得ます。
上流から下流へ、誰か一人がゴールに到着すると1ラウンドが終了する合計2ラウンドの構成。1ラウンド内で中間決算が二回あり、1ラウンド目と2ラウンド目で合計4回の中間決算を行い、最後に最終決算を行ってゲームが終了します。
では手番で出来るアクションについて解説していきます。
手番プレイヤーがひとつアクションを選ぶと、他のプレイヤーもそれに応じて決まったアクションを行う、といった手順を実行します。
アクションボードから自分のやりたいアクションタイルをひとつ選び、アクションを実行。実行後は一番下に繰り下がります。上に行くほど川下りで船コマを多く進められるほか、下の方のアクションは勝利点を消費する必要があるため、実行したいアクションを選ぶことだけが常に最良とは限りません。
アクションの種類は大まかに「メインボードに六角タイルを置く開拓」「開拓したタイルに住民コマを置いたり家コマを建てる入植」「開拓したタイルに牛コマを置く放牧」「レバータイルの購入」など。
とても要素が多いゲームで、開拓したりカードプレイをして即時効果を得る目先の利益で資材を貯めながら、入植してより大きな建物コマを置いたり、牛を飼うことで得られる定期収入で得点を伸ばす長期的な目標を視野に入れるなど、重ゲーらしい選択肢の配置です。
またカードプレイゲームでもあり、ほとんどのアクションタイルに全てのプレイヤーが同時にカードをプレイできる機会があります。カードは「即時効果」「常時能力付与」「終了時得点化目標」とよくある構成でシンプルな効果が書かれており、比較的ばんばん出せるコストで手札に入ってくるので、出せば出すほど有利になるし勝利点も上乗せされていくイメージ。
プフィスターは割と「カードも重要な資源」と捉えているゲームを作るようで、出すも良し、売って金にするも良し、捨てて勝利点に変えるのも良し、みたいに「手札でもリソースマネジメントさせてやるぜ」的な位置になっていて、ブーンレイクにおいても、カードをどう消費するかをかなり考えさせられる作りになっています。
基本的にはアクションタイルを選んだ手番プレイヤーが有利なアクションを行い、その後に他のプレイヤーがおこぼれにあずかるような感覚。とにかくカードを出したり売ったりが悩ましくも楽しく、他プレイヤーの手番でプレイできるように金を用意するなど、常に「これから誰かが行うアクションに大注目」しながらゲームが進行します。
そして「開拓は他の住民とも協力しながら発展してくんだよねー」みたいな価値観がベースにあり、ゲームのフレイバーにもなっている点に注目です。
入植したり牛を置く効果は、「他のコマに◯個以上隣接していないと置けない」とか、「牛に隣接している家から得点」などの条件があるのですが、これがどのプレイヤーのコマでも良いのです。なのでプレイヤーは、自分のコマを置く条件クリアのために他人のコマを利用したり、逆に相手の得点になってしまわないような配置に気を配る必要もあるのです。
アクション選択で他の全員もアクションを行う点もそうですが、「微妙に協力し合いながら自分が有利になっていく隙間を探していく」ようなジリジリとした盤面の位置の争いと言いましょうか、それで良い感じのインタラクションが生まれているように、個人的には感じます。
もう一つの特色は「レバータイル」ですね。
各プレイヤーはアクションでコストを払い、個人ボードにレバータイルを設置することができます。(画面下の窓のような形の窪み)
このレバー、ゲームのほぼ全てのタイミングで「下げる」アクションを行えます。下げることで多種多様な恩恵を得られるため、相手の手番でアクションする際に下げるなんてこともしばしば。指でストッと物理的に動かす動作もクセになって、つい使う機会を求めて考え込んでしまうことも。
更に四回の中間決算で毎回リセット(全てのレバーが上がる)されるため、序盤で得るほど使用回数が増えて有利になります。じゃあ先に買っとくか、と言いたくなりますが、開拓面が早い者勝ちでどんどん進行していくのでそれを放っておくわけにも行かず、購入のタイミングに大きなジレンマが発生します。
しかも後半になると使用回数が残り少なくなるので価値が低くなるように思えますが、たくさんレバーを買えば買うほど終了時に大きな得点になるので、最後までレバーを買うか買わないかに悩まされるのです。この辺はさすが人気作家だなと思う所。
他にもコイントラックとカードトラックというマスをカードの効果などで進めていくと中間決算で収入が増えたり、大型事業というアクションでたくさん金を使って重要なリソースを得たり…とにかく広い広い選択肢から最良の一手を選ぶ計算が続く、極上の重量級ゲームと言えるでしょう。
したがって長考するとキリがなく、ダウンタイムも長くなりがち…などと思いきや、相手がアクションを決めるとすぐに自分も処理すべきアクションが始まるので、待つというよりは、考えてるうちにすぐやることが転がってくる感覚です。逆に自分の手番で相手のアクションを待つみたいなことがちょくちょく起こります。
「自分の手番じゃない時間」は多いんだけど、「実際に何もせず待ってる時間」は極端に少ない、そんな不思議な感覚のゲームになっています。それでも、長考しがちな人は少し待たせてしまうかも。だいたいどのアクションをしても最終的に損しない作りなので、パパッと早打ちしてもガンガン拡大再生産されてく気持ち良さがあって、深く考え過ぎなくてもいいのも長所。
勝利点は「絶対に達成すべき大きな目標」のような指標は殆ど無くて、小さなアクションで得た勝利点や序盤からの定期収入アップがじわじわ効いてくるような構成です。
二人プレイだと、開拓の競り合いが少し弱くなる以外では違和感もなく、普通にバランス良いな〜と思えるようなゲームが楽しめます。「90〜120分級で二人でも楽しめるゲームが分からない」という人がいたら、ひとまずブーンレイクはいける、全然いけるぞと言っておきます。
ここまで丁寧に言葉を選んで説明してきましたが、正直くっそ面白いです。損得勘定の見え隠れする入植や牛のインタラクションとか、他人のアクションに引っ張られる即応性が試されたりとか、カードばんばん出してけっこう強めの常時効果発動してウハウハとか、中間決算でガッポリ儲かる感覚とか。
カード運もあんまり関係なくて、ゲーム中は膨大なカードが手札に入ってくるのでそもそも手札に一つのゲームが存在してるような感じで、それらをいつ使うか、売るのか、常に巡ってくる取捨選択を愉しみ、あわよくば相手の手番で使い切ってやるぜみたいなマネジメントをする…最高です。
こんなに重いのに翌日にはまた遊びたくなってる。そんな中毒性、遊びやすさの可能性を秘めた傑作と思います。
コンポーネントは大きなメインボードだけでなく、個人ボードが二層レイヤーになってるのが良いですね。この窪みでレバーを上げ下げしたり、すっぽりハマった牛コマなどを外して下から収入表示が覗く感じが、アナログゲームの楽しい部分を更に盛り上げます。
膨大なカード、厚紙性チップ、シルエットが可愛い大量の木駒、六角タイルがザクザク。
アートワークも暖色系が主体の絵画のようで、美しいです。
同作家の「クラウドエイジ」を遊んだ時にも感じましたが、「何をやっても面白い、何をやっても確実にプラスに進んでいく」ようなポジティブなアクションを繰り返し、相手の手番ですら楽しみになってくるゲームを作ったという事は、凄いことだと思います。
「たくさんアクションできてたくさん面白いとこがあるゲーム作ったからね!」
こんな作家の声が聞こえてくるような面白ポイント盛りだくさんのボードゲームです。
時間に余裕のある重ゲーマーの方々には、是非ともプレイしていただきたいです。
- 143興味あり
- 263経験あり
- 62お気に入り
- 218持ってる
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