ポンジスキームsopraさんのレビュー

詐欺師はつらいよ　と呟きたくなる、ぴあムックに新版の箱絵があったので今冬に再販されるであろう自転車操業ゲーム。

TMGボドゲ事業撤退追悼レビュー第2回。ただしTMGのは海外版リメイク。もとは台湾のゲーム。

【どんなゲーム？】

詐欺師となって持ち金ゼロの裸一貫から、世界一のペーパーカンパニー設立を目指すゲーム。

誰かが破綻するまでのプレイし、破綻した人を除いて一番ペーパーカンパニーを拡大できた人の勝利。

ポンジスキームという実在する詐欺手法をもとにしたゲーム。

ポンジスキームを簡単に説明すると、一切の事業活動をせずに投資を募り、後からの投資金を先の投資者に配分することで事業が成功しているように見せかける手法。借金で借金を返す自転車操業だな。

手番でやることは勝利点とお金を無料でもらう。　とインストすると初めてのプレイヤーは全員「えっ？」と驚いた顔をする。インストラクターはとてもおいしい経験ができる。

具体的には、4種のペーパーカンパニーから1つを取得し、ペーパーカンパニーのレベルに合わせた借金契約を受け取る。

ペーパーカンパニーは各種類、1枚目が1点、2枚で3点、3枚目で6点と、同一種類を揃えるとシャハト算方式で勝利点が増えていく。したがって1種類を多く集めたほうが点数が高い。

借金契約は一時金を受け取りつつ、『未来永劫、毎Xターン後にいくら支払う』という地獄のような利息支払い契約を行う。Unlimited Debt Works～無限の借金～の始まりである。

その後、詐欺師（プレイヤー）同士でペーパーカンパニーの売買を行う。

ターンプレイヤーから順に、同業種のペーパーカンパニーを持つプレイヤーに「X金出すからその会社1つ寄越せ」と秘密交渉を行う。金額が分からないように、提案者がお金を封筒に入れて交渉相手に渡すのだ。

交渉相手はOKならお金を受け取りカンパニータイルを渡す。NGの場合、提示金額を受け取りつつ「提示金額の2倍の額のお金」を封筒に入れて提案者に返す。返された提案者は逆にカンパニータイルを渡さないといけない。

この金額のやり取りは必須であり、高額交渉を行った後だとせっかく育てたカンパニーを二束三文で買いたたかれたりする。

詐欺師は血も涙も持ってはいけないのだ。どんどん買い叩こう。

それが終われば借金の利子の支払い。このターンに支払うべき利子を全て支払う。まれに業界不振によりもう１ターン後に予定していた借金も払わないといけなくなったりする。

ここで支払うべき金額を支払えなかったらそのプレイヤーは破綻し、ゲームが終了。勝利点を一番持っているプレイヤーの勝利。

【感想とか】

「必ず終わるゲームは良いゲーム」と友人が言っていたが、このゲームはその言葉を体現していると思う。

手番時に受け取れるお金は一時金であり、未来永劫支払う利子には絶対に足りない。つまり、誰かがいつかは破綻する。

固定ラウンド制のゲームとは違った、ただ必ず、必ず誰かが破綻するというゴールに向かってプレイヤーはひたすらに詐欺行為を行っていく。

重要なところは、大金持ちを目指すのではなく、あくまで「世界一のペーパーカンパニー」を目指すというところ。

イギリスのことわざ？でこういうものがある。「ライオンに追われているとき、ライオンよりも速く走る必要はない。隣の友達よりも速ければよい。」

このゲームでは大金持ちになる必要はない。タイブレークは最終的に持っている金額だが、直接的な勝利点はあくまでカンパニータイルの枚数だ。

つまり他のプレイヤーよりもほんの少しだけお金を持っていて、破綻さえ逃れられれば問題ないのだ。

そのために相場を読み解く必要がある。今自分の前でやり取りされている封筒には、いくら入っているのか？他のプレイヤーの残金はいくらなのか？　いくらなら相手のカンパニーを買いたたきつつ、今日の糊口をしのげるのか？

この世界の詐欺師には人間力よりもプレゼン能力よりも、相場読み能力が求められる。そこまで相場が読めるならトレーダーになれ！

真綿で首を絞められていくような緊張感。明日の利子支払いに怯えながら、今日相手が破綻することを願って自分のカンパニーを育てていく自転車操業ゲー。

詐欺師の楽しさと辛さを同時に味わえる素晴らしいゲームです。新版がでるようなので、是非プレイしてみてください。