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  • 2人~4人
  • 60分~90分
  • 14歳~
  • 2025年~

エドラのドルイド下村ケイさんのレビュー

21名
0名
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約1時間前

〇随所に散りばめられた美味しい点数の気配

フェルトのボドゲを語る上でたびたび言及される「ポイントサラダ」なる言葉があります。

まぁサラダのようにいろんな得点源があるぞい。くらいの認識でいるのですが、本作のルールを読んだ段階で脳裏によぎったのは例によって「ポイントサラダ」という言葉でした。

例えばゲーム中に鎌を進めることで各種ハーブがリリースされ強力なバフが得られるようになるのですが、この鎌の進捗や、ボーナスに紐づいた宝石トークンの獲得状況でゲーム終了時にそこそこでかい点数がもらえたりします。またよくある「ゲーム終了時に条件を満たしていたら点数あげるよ」的な石板も成功時に一律10点がもらえます。

「あれもしたい。これもしたい」

「なら全部やっちゃおうぜ」

というサラダのくせに食べ放題みたいな愉快なワクワクさえ感じますが、そうは問屋が卸さないのが本作の良質たる所以であります。

〇手番数の上限はきっちり13手番!

映画はいずれ終わるからこそ美しい夢たりえるのであり、飛行機もまた永遠には飛び続けられないように、ボドゲにも終了フラグというものがあります。

本作はダイスを配置したマスに記載されたアクションを実行していくのですが、

終了フラグはズバリ、誰かひとりでもダイスを置ききること。

そしてこのダイスは一手番に必ず一個だけ置くようになっています。

一個だけです。

それ以上でもそれ以下でもありません。


ダイスの個数は各プレイヤーきっちり13個。

つまり、順当にいけば13手番で必ずゲームが終わります。


食べ放題サラダに目移りしているとあっという間に終了フラグが切られ、前菜だけつまみまくっていたら時間が終わっていたぜ……なんてことになります。


と言う訳なので、それぞれの得点に紐づいたバフや即時ボーナスの類をうまくつなげていくことが求められます。

うまくつなげていかないと、リソースの類が不足して思うように立ち回れなくなります(※とても良いところなので後述します)

「あれもしたい。これもしたい」

「ならうまくやれ!」

ということなのです。

1手番として無駄にできる余裕がないので、ゲーム開始からかなりタイトな計画性が求められます。

なんだ、ちゃんと苦しいじゃん(よろこびの白目)

〇安心してください。インタラクションあります。

盤面から独立したトラックが多く、ともするとソロプレイ味が強くなりそうなものですがそうは問屋が卸さない点もまた本作の良質たる所以であります(2度目)

例えば、ドルメン。セットアップ時にボードの縁に2個セットのドルメンなる駒が計x組並ぶのですが、自分のダイスだけで同じ色のドルメンをつなぐと、経路上にある自分のダイスの個数×2点がもらえます。

無論、早い者勝ちです。

また、最初にルートを完成させたプレイヤーから順番に8点→6点→4点の副賞もつきます。

というわけで「どのアクションを実行したいか=どこにダイスを配置するか」という思考の、その一歩次にある「最終的にどのドルメン間ルートを構築するか」「どういう順番なら完成ボーナスを横取りされないか」を考える必要があるのです。


もちろん、これだけではありません。

なぜ配置するのが単なる駒ではなく、ダイスなのか。

それは出目を参照するためです。


例えばダイスを配置したあと、既に他にダイスが置かれていたならその時点で出目を比較します。

一番大きい出目のプレイヤーは2点がもらえます。

またゲーム終了時、エリア内で最大の出目をもつプレイヤーはダイス(と別途置くことになる石柱など)の個数をカウントし、知識トラックの進みに応じた倍率を掛け合わせた点数をもらえます。


細かいルールはマニュアルを読んでいただくとして、要は出目が大きいほど点数になりやすいということです。


それだけ聞くと、ダイスと言うだけでランダムネスへのアレルギー反応が出そうな方もいるかもしれませんが、

実は本作で取り扱うダイスはセットアップ時にしかロールせず、そこで出た出目がゲーム中に変わることは(例外的なボーナスを除いて)ありません。

ならセットアップ時に6の出目がたくさん出たプレイヤーが圧倒的に有利。に思えますよね。

そうは問屋が卸さない点も、もはや3度目になりますが本作の良質たる所以であります。


〇フェルト名物「痛い失点」こそないものの、痛さは多分それ以上。

ここまで読んでくださった方であれば、ダイスの出目が大きい方が得点として有利になるのは既に自明の理かと思われます。

ただ、強さに代償が伴うのは親愛なる隣人スパイダーマンだけではないのです。


結論から言いますと、ダイスを配置する際に出目の数だけ食糧を払わないといけないのです。

と言うか、ダイスを配置する前の移動にも食糧がかかります。


この食糧のやりくりがアグリコラかと見紛うほどに苦しい!

1なら1飯。6なら6飯。なんと6倍です。

だもんだから強めの出目ばかり出たら得点を集めてるのか食糧を集めてるのか分からなくなりそうなこと請け合い。フェルトはダイスによる乱数を巧みにゲームに組み込むことで、毎手番ごとに現時点でのベストを尋ね続ける「戦術的な判断」を求めるゲームが多い印象ですが、今作ではそのランダムネスをゲーム開始時に集約させることで「あとは終了フラグまでいかに駆け抜けるかを設計せよ」という「戦略的視座」に重きが置かれているように感じます。


また、フェルトの作品は「ノルマを満たせないと痛い失点を食らわせるずら!」というのも特徴のひとつとして挙げられることが多いようですが、本作にはそういった「減点要素」は存在しないように思えます。

ただ、なかなか強烈な「損失」は存在します。

その名も「苦悩するドルイド」

我々は専ら「物乞い」と呼んでいましたが、ブラックフォレストの「物乞い」をご存じの方は話が早いかもしれません。

「移動+ダイスの配置」で必要になる飯を支払えない場合、プレイヤーは「6飯(とダイス)」をもらう代わりにそれでその手番が終わってしまいます。その手番ではダイスの配置はできませんし、それによって当然のことながらアクションも行えません。心ばかりの飯を恵んでもらう代わりに実質的なパスを余儀なくされます。


手番でダイスを配置しない、唯一のケースがこれにあたります。

これがどんな「損失」をもたらすか。


例えばあなたが苦悩を1回してしまうと、ダイスの配置ペースが一個分遅れをとるわけです。

誰かが1回も苦悩することなく13個までダイスを置ききると、あなたはダイスを12個しか置けないままゲームが終わってしまうのです。

ただでさえ手番が13回しかないのに、更にその内の1回を放棄した状態での勝負になるのです。

これが明白に不利なのは、恐らくボードゲーマーなら想像に難くないでしょう。


みんなで苦悩すれば相対的な遅れはなくなるのに!

ボドゲは本質的に競争社会なのです

慈悲はありません。


というわけで、分かりやすく表面化した失点こそないものの、シャアよろしく常に二手、三手先を読みつつダイスを配置してアクションを組み立てていかないとすぐに苦悩してしまうのです。ウェルテルかな?


こういう少しのミスも決定的な遅れになってしまうタイトさは、人によっては窮屈さを覚えるかもしれません。ただ、そこに理不尽な感じはまったくありません。なぜなら盤面ですべて見えているから。苦悩を計算によって回避できなかったなら、それは我々の手落ちなのです。


それに、馬鹿と煙は高いところ(High)を好むと言われますが、

タコとボードゲーマーは狭いところ(Tight)を好むと言われています。

全てが見えていて乱数が介在しないからこその真剣勝負(Fight)という訳です。


〇総評。今までのフェルト作品の特徴を伏線の如く巧みになぞりながらも決して褪せない難しさ=楽しさが詰まった逸品!

セットアップ時に確定した出目を眺めて、もしも出目が全体的に小さいならゲームを通して要求される飯が少ないということなので、食糧調達にまわすぶんの手間を他の要素に振り分けたりすればいい。そういった戦略の幅を、ポイントサラダという構造が許容しています。

ゲームごとに「さて今回はどんな盛り付けをしてやろう」と考えられる幅もまた本作が良質である所以と言えるでしょう(N回目)


また乱数が介在しないと書きましたが、開始と同時に13手目まで計画を立てられる、立てないといけない。と言う訳でもなく、先述のインタラクションであったり相手の動き(どこにダイスを置くか)でいくらでも臨機応変が求められます。つまり、ちゃんと面白い(雑な総括)


難点は、強いていうなら雑多ともとれる要素の多さでしょうか。

フェルト作品が好きならむしろにんまりできるでしょうが、ハーブによるバフやアミュレットのボーナスの他にも本記事で触れられていない細かい要素がまだいくつかあります。

それらのサブとなる要素が本筋の横ににごてごてと取り付けられているともとれる構造なので、ややとっつきにくさを感じる方もいるかもしれません


ただ、一度理解が飲み込めると特段入り組んだ複雑さというわけでもありません。


またこれもいつものことながら、テーマ性は希薄です。なぜドルイドが大量の飯を食らいながら森の中を駆け回るのか。もしかしたら背景となる物語みたいなものがあるのかもしれませんが、ダイスはあくまで記号であってそれ以上の何かを表現している訳でもありません。

ただ、かといって無味無臭且つ無機質な雰囲気という訳でもなく、連なるダイスの向こうにうっすら神秘的な世界観めいたものが透けて見えるきがするのは、私がフェルトのファンだからでしょうか。


というわけで、レビュー記事としての体裁のために難点をひねり出してみましたが、それらが本作の良質さを損なうほどの「欠点」ではないことはここに申し添えておきます。


私は浅瀬のボードゲーマーを自称しています。それでもボドゲと共に月日を重ねるなかで「あ~〇〇っぽいね」みたいな感想が浮かんでくることも増えてきました。今回何度か言及している「フェルトと言えば~」みたいなやつです。(私だってたまには通ぶりたいんです)

本作は同作者における「シヴォリューション」や、ウヴェにおける「オーディンの祝祭」のような、或いはラセルダ作品全般のようないかにもキャリアの集大成ですみたいな超大作にして超傑作という雰囲気はありません。なんせ慣れれば90分ほどで終わるような重さです。

ただ、そういった超大作にしか表現できない世界の広がりや深みがある一方で、中量級というサイズ感でしか表現できない切れ味や凄み、すっと終わって心地よい余韻を残すみたいな、日本酒のような味わいが存在するのもまた事実。例えば終了フラグが「ダイス40個置ききったら」とかでしたら、1手番分の苦悩はむしろ「そういうこともあるよね苦笑」で終わっていたかもしれません。その程度のロスであるなら、必死且つ真剣に数手先まで考えようとする没頭具合はいくらか薄れていた可能性もあります。或いは他の部分でリカバーが可能だったかもしれませんし、そうやって要素が膨大になれば「全体をよろしく微調整しながら少しずつ最適な形を表現する」みたいなコントローラブルな側面も薄れます。

それなのに、中量級というサイズ感でありながら私が遊んできたフェルト作品でたびたび感じてきた「そうそう君のそういうところに僕ぁ惹かれたんだな」という要素が巧みに詰め込まれているのです。つまり、いつものフェルト作品なのです。それだけのことなのに、相変わらずちゃんと新作の顔をしていて、ちゃんと楽しいを更新してくれる。恐らくフェルトがその作品群の中で培い続けてきた「個性」を縫い留める「ままならなさ」のありかたの考え方が特別で、新しく、そして美しいのかもしれません。

だとしたら、いつか本作さえも「(大好きな)いつものフェルト作品」の枠に押しとどめて「苦しい」と「楽しい」を更新するような新作を、彼ならきっと生み出してくれることでしょう。ファンになるならいまのうちです。わたしは既に古参のふりをしています。冗談ですごめんなさい。


というわけで本作は、

フェルトを愛してやまないボードゲーマーにも、

HighでTightなFightを好むボードゲーマーにも、

苦しさの中で計画を立てることに楽しさを見出してしまうボードゲーマーにも、

ぜひ遊んでみていただきたい逸品なのです。 

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大賢者
下村ケイ
下村ケイ
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