- 2人~6人
- 90分前後
- 12歳~
- 2014年~
ブルーマックスBluebearさんのレビュー
第一次大戦の世代に活躍した複葉機どうしの空中戦をリアルに描いた傑作ゲームの新版。
ひとり1機ずつの複葉機を担当して、連合軍(イギリスやフランス)と同盟軍(主にドイツ)に分かれて対戦します。
もともとは1983年にGDW社から発売されていた空戦シミュレーションウォーゲーム(日本でもホビージャパン社から日本語版が発売されていました。)で、ルール量も多く、やはり素人にはとっつきにくいシミュレーションウォーゲームとしての存在感でした。
今作はそれを一般のユーザーでも手軽にプレイできるように、カードや一覧表などを駆使して、徹底してプレイアブルなボードゲームに仕上げた作品となりました。
旧作は私もはるかな昔、数回しかプレイした事がありませんでしたが、第二次大戦の空戦シミュレーションの代表である『AIR FORCE』を相当数やりこんでいたため、それほど苦もなくプレイできました。しかし、どうしても展開が地味で、それほど印象に残ってないんですよねー。
しかし今回、一般ボードゲームとしてリリースされた事で、再び興味が再燃。勇んで購入となりました。(6人同時プレイができるというのも決断の決め手!)
■有名機をフルカラーで紹介
どうしても知名度が劣る地味な複葉機。以前はゲームを機に、少し調べたりもしましたが、一般ボードゲーマーにはなかなかハードルが高い。
そこで今作は、徹底してフルカラーで機体を紹介することに力が入っています。
期待のデータカードにはフルカラーの三面図。裏面には歴史的解説がたくさん。
サイズの大きいコマにも、大きく機体上面図と、裏面には側面図(写真撮り忘れましたー)と、実機のリアルなイメージを伝えようという意図がしっかり。
まるでミニチュアのコマかと思うくらいの精密な仕上がりで、コスト的にもありがたいです。
プレイヤーが自分の機体をイメージできるかどうかって、改めて大切だなぁって痛感しました。
■簡単な行動記録
このような同時アクションの宿命として、各自の行動内容をあらかじめ秘密裏に記録して同時公開し、全員が一斉移動!…というのが定番です。
これが結構ハードル高いらしく、あちこちで悪の権化みたいに嫌われていますが、ルールとしては理にかなっており、慣れれば別にどうって事ないシステムです。
これを、各機体ごとの移動パターンの図解をフルカラーで一覧にし、それを選ぶだけ、という簡単なものに改良しました。
図解なので、言葉や記号で説明されるよりも、視覚的に分かりやすくなっています。
しかも、自分の元の位置を明示するためのマーカーも付いており、これを置く事で、自分の機体の移動先が分かりやすくなる工夫も見られます。
なので、記録用紙に事前記入と言っても、移動パターンの記号を書くだけなので、たいした手間ではありません。ご安心下さい。
また、これによって飛行パターン一覧を見比べると、機体ごとの機動特性というか癖のようなものがよく分かるので面白いですよ。
■戦闘結果も簡単
シミュレーションウォーゲームと言えば、複雑な結果表と睨めっこ…という印象があると思いますが、このゲームはカードでシンプルに処理。表よりも確率が読みにくいので、思ったより面白い。
複葉機なので、真っ直ぐ前3マスしか撃てず、距離ごとに決まったサイコロを振り、出た《色》ごとにカードを引き、どこに何発当たったかを判定します。基本的にはそれだけ。撃たれた方向(これもコマに明記してありわかりやすい工夫)によって引くカードの山が違っており、面倒くさいルールなしに、射撃結果の判定が事前にできるようになっているのです。
だから初心者女子にも説明が簡単。これ大事です!
■熱い読み合いの心理戦!
戦争ものでバトルする、と言われると、ただひたすら攻撃を宣言してサイコロ振りゃあいいんでしょ?…と思われがちですが、これがどっこい、熱い熱い心理戦のゲームとしてしっかり成立しているんですねえ。
みんなが事前に自分の機と、周りの位置をにらんで行動計画を立てます。
「あいつの事だからスピードを上げて前に出るか⁈」
「いや、ここは左に旋回して側面に回るか⁈」
「いやいや、一気にスピードダウンさせて、こちらをやり過ごして、後ろに回るつもりか⁈」
…と、相手の性格も含めて動きを予測して、それに合わせた行動予定を立てるのです。
計画を記入し終えたら、全員でオープン!
「ちっ!しまったあー!そっちへ回ったか!」と歯噛みする事もあれば、
「きゃー!私の読み通り!一気に射撃しちゃいますー!」と歓声を上げる事もあります。
このやりとりが抜群に楽しいのです。♪
特にこの時代の複葉機はスピードが遅いので、そんなに複雑な移動はできません。不慣れなプレイヤーでも、少しすれば位置関係や動きが見えて来ます。ここがこのゲームの優れているところなんですね。
■時代設定をうまく活用
さらにこのゲーム。時代ならではの工夫があり、とても感心したルールが♪
この当時は無線なんてものがありません。だからパイロット同士は、身振り手振りで意思疎通をしながら戦っていました。
だから、このゲーム、チーム戦なんだけど、具体的な数字や言葉を入れての相談ができません!
プレイヤーも身振り手振りで意思を伝えます。
伝わったと思ったら、全然伝わってなくて大爆笑なんて結果もたびたび起きて、これがまた楽しい♪
仲間の動きも《読み》が必要なのです。これ面白いですよ♪
お陰で、協力型ボードゲームでの重要なメリットが、2つ!
①仕切り屋(奉行)があーだこーだ指示する事がほとんどできません。協力ゲームでこれとても大事ですよね♪
②作戦相談を延々とできないので、長考にならない。これもまた大事。
このように、うまくボードゲームの新作として成立しているのです。
個人的に評価高いです。
■ぜひ6人でプレイ
このゲーム、1対1でもやろうと思えば普通に楽しむ事ができますが、やはり真髄は《チームプレイ》でしょう。
「きゃー、置いてかないでよー!」
「だから私が前に出るって言ったじゃん!(言ってはいないケド)」
「これやばいんじゃない?ぶつかりそう」
「こっち来ないでよー」
「◯◯ちゃんがそっちから回ると、後ろを取られるから危ないのよ!」
「まずい!やられる、援護してー!」
…って感じでした♪
テーマ的に女子ウケしないであろう事を覚悟の上で強行しましたが、結果的には大絶賛♪
ゲーム後も彼女らは、他の機体のデータカードを見比べて、あーだこーだ盛り上がっていました。
大成功です。
■あの赤いエース機も登場
あの有名な赤い機体。リヒトホーフェンのフォッカーDR1もちゃんと入ってます。(あの赤い機体はシャアの元ネタですね。名前のほうはマクロスにも使われました)
機体を軽くしてあるため、耐久性にやや難があり、燃料ルールを入れるとさらに対空時間も厳しいですが、かなり変則的な機動をするので、使いこなすのは難しいですが敵に回すと怖いです。
こんなところも、このゲームが気に入ったポイントです。
このように、だいぶウォーゲーム寄りのボードゲームですが、たまにはしっかり向き合って、全力で戦うゲームもいいものです。
我々グループでは、ぜひまたやりたいとの声がかかります。(これ最高の褒め言葉ですよね)
どこかで見かけたら、騙された時思って一度プレイしてみて下さい。
- 27興味あり
- 27経験あり
- 8お気に入り
- 33持ってる
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