ブラックオーケストラBlack Orchestra

　『Black Orchestra』の初版は未見なので、2018年に出た第2版のレビューになります。1944年7月20日に東プロイセンの総統大本営で起こされた国防軍上級将校らによるヒトラー暗殺未遂事件をテーマにした協力型のゲームです。「黒いオークストラ」とはゲシュタポによる隠語であり、このゲームでは以下に挙げる９人がメンバーがキャラクターとして用意されていますが、実際に登場するのはプレイヤー数と同じ数のメンバーだけです(ソロプレイでは2人)。ゲーム上の分類で国防軍所属はルードヴィッヒ・ベック退役上級将校、ヘニング・フォウ・トレスコウ少将、国内予備軍一般軍務局長のフリードリヒ・オルブリヒト大将、国内予備軍参謀長のクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐の4人。諜報部からはヴィルヘルム・カナリス提督、ハンス・パウル・オスター小佐、ディートリッヒ・ボンヘッファー牧師の3人。民間人は保守政治家のカール・ゲルデラーと、外交官のエーリッヒ・コルトです。前述したように、ゲームで登場するのは最大5人なのですが、具体的すぎてシミュレーションとしては失敗しています。例えば、ゲルデラーは暗殺に反対していましたし、コルトは南京でソ連のスパイ「赤いオーケストラ」として活動していました。ゲームシステムで行動する人物は、アドルフ・ヒトラー、ルドルフ・ヘス、パウル・ヨーゼフ・ゲッベルス、ハインリッヒ・ヒムラー、ヘルマン・ゲーリングの６人ですが、ゲームの勝敗は7ターン以内にヒトラー暗殺が成功するか否かだけで判定されます。史実では、実行犯がヒトラーとヒムラーを同時に暗殺しなければ意味が無いと考え、ヒムラー不在のために暗殺を中止したケースもあったのですが、このゲームでは再現することができません。ゲシュタポの襲撃を躱しつつ、暗殺に必要となるトークンを集めると言う流れ自体は面白いのですが、プレイヤーキャラ毎の個人的政治信条を再現しきれていない点が残念です。