- 2人用
- 120分~180分
- 2018年~
バルジ大作戦 アルデンヌ1944Bluebearさんのレビュー
1944年第二次世界大戦末期、ドイツ軍の最後の反抗作戦を描いた、今も色あせない鈴木銀一郎氏デザインのウォーゲームの金字塔です。
■繰り返し再販される名作
1981年にエポック社の《ワールド・ウォーゲーム》シリーズの第4段として発売され、大好評だった作品です。
その後、コマンドマガジン23号(1998年10月)の付録として掲載されましたがたちまち完売!
そのため改めてコマンドマガジン別冊として再販。
何とそれも完売絶版となったため、2018年に新たに国際通信社から《ジャパン・ウォーゲーム・クラシックス》として復活しました。
これこそまさに名作の証でしょう。
■主なデータ
ボード上の1ヘクス(1マス)=現実の約3.3kmを表します。
マップボードには冬の鬱蒼としたアルデンヌの森林地帯が描かれています。(非常に美しいです)
ゲーム上の1ターン(1ラウンド)=現実の1日を表します。
全13ターン(13日間)の激戦を描きます。
ルール分量:A4で6ページ
ゲーム時間は、3~4時間程度
プレイ人数:2人(対戦)
■歴史的大作戦を机上に再現
ウォーゲームの醍醐味は何と言っても、実際に起きた歴史的な戦いの趨勢を、自分の判断で運営することで場合によっては歴史的に敗北だった陣営を勝利に導くことができる可能性を持つことでしょう。
今回のテーマは、1944年12月に敗色濃厚となったドイツ軍に対しヒトラーが決行した《ラインの守り》作戦です。その地名から《アルデンヌの戦い》とも呼ばれますが、特に攻勢をかけたドイツ軍の突出した戦線の形状から《バルジの戦い》という名称のほうが有名です。今回の作品は、この激戦をテーマにした1965年の名作映画のタイトルから取られています。(古いけど実写で撮影した戦車戦は迫力満点でしたね。)
攻勢側はドイツ国防軍の機甲部隊を中心とした3個軍。密かにアルデンヌの森林地帯に終結。悪天候のタイミングで連合軍の戦線を一気に突破し、重要な補給港アントワープの占領を目指します。
対するアメリカ軍を中心とする連合軍は、ドイツの反撃を予想しておらず、また練度も低かったため、初戦では大きくドイツの奇襲を許すことになりますが、順次届く増援部隊を活用し次第に防衛線を固めていきます。
補給の不十分だったドイツ軍は不完全な突破となり、戦線はいびつな形の突出部(バルジ)を形成し、その結果重要拠点としていたバストーニュの占領に失敗し、作戦はあえなく頓挫してしまいました。
しかし、もしドイツ軍にもう少し補給物資があったら?
アメリカ軍の増援部隊の到着がもう少し遅かったら?
ドイツ軍の攻勢がもっとうまく行っていたら?
連合軍の混乱による部隊の立て直しが遅かったら?
様々なIFが歴史を大きく変えていたかもしれません。
これを自分の決断と采配で目の当たりにすることができるのは、このような歴史シミュレーションだけなのです。
■ルールは論理的に整理されているため理解しやすい
どうしても「ウォーゲームは難しい」という先入観が先行しがちですが、ルールはすべて体系的に項目別に整理されています。そのため検索もしやすいので、しっかり読めば混乱することはほぼありません。
また基本的に「現実」に即したルールになっているので、内容がイメージしやすく、難易度自体は決して高くないです。(最近の変則的なユーロ系ゲームのほうがルールが抽象的すぎて私にはよっぽど理解しにくいと感じています。)
■時間をかけて、頭を振り絞って、真剣に挑むボードゲーム
ドイツ軍側を担当すると、強力な機甲部隊による大突破作戦の成否をじっくり堪能できます。相手の配置を見ながら、手薄な場所をにらみ、部隊を集中させる場所を考え、突破するタイミングを必死で考えます。
連合軍側を担当すると、迫りくる大部隊をどこでどう食い止めるか、撤退するタイミングはどうするのか、などの防衛戦略の難しさをしっかり味わうことができます。
それぞれの側で全く異なる戦略が要求されるという構造は、ウォーゲーム独特のものでしょう。
特にこのバルジの戦いは、攻防がはっきりしており、大きな歴史の転換点でもあることから人気のテーマであり、繰り返し様々な形でデザインされています。
バランスもかならずしも五分五分に調整されたりしておらず、このゲームも6:4で連合軍が有利と巷では言われているようです。(もともとの戦いが公平ではないから当然ですが)
最近は下火のようですが、これが歴史シミュレーションゲームの醍醐味なのです。
ギリギリと猛烈に頭を使いますが、そこがまた快感なんですね。(ちなみに私はこのゲームで主にドイツ軍を担当することが多いのですが、相棒が遅滞戦術の名人という事もあり、いいところまでいくものの、実は1度も勝ったことがないのです!笑)
また、ゲーム結果は歴史的な一つの結末ですから、感想戦がまた非常に楽しいのも、歴史シミュレーションならではですね。
これも大きなボードゲーム作品群ののひとつの流れとして、特に大人のかたにぜひ体験していただきたいなと思う今日この頃でした。
だからウォーゲームはやめられん!!
- 5興味あり
- 16経験あり
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