- 1人~2人
- 90分~120分
- 12歳~
- 1983年~
アドミラル・グラフシュペーBluebearさんのレビュー
第二次大戦の大西洋、地中海、北海を舞台にした戦闘艦どうしの盛大な砲撃戦を精密に再現するウォーシミュレーションゲームです。
1980年代に日本のツクダホビー から、先発の『戦艦大和』の姉妹編として発売されました。
姉妹編と言いながらも、システムに共通性は全く無く、大和がまだ多数の艦艇同士の『艦隊戦』を意識しているのに対し、このヨーロッパ方面の海戦は比較的少数の戦闘艦どうしの戦いが多いためか、個別の艦それぞれの砲撃と、着弾、被害をクローズアップしたデザインとなっています。
そのため、プレイヤーの立場はどちらかというと『艦隊司令官』ではなく『艦長』のイメージに近いです。(1人1隻の担当でしっかり対戦ゲームが成立するという、非常に稀な作品です。)
アドミラルグラフシュペーとは、第二次大戦のドイツ海軍が運用したやや小柄ながら強力な砲撃力を有し、『ポケット戦艦』とも呼ばれた有名な艦の名称です。
このセットには、このドイツ海軍だけでなく、イタリア、イギリス、フランス、アメリカ(の一部、ノースカロライナやサウスダコタ)がぎっしり含まれています。
『戦艦大和』にあった艦ごとのデータカードは廃止され、詳細に書き込まれた大きなデータシートにある一覧表を順に見ながら判定をしていきます。(整理された表を順番に見ていく流れになっているので、慣れるまでが大変ですが、流れが分かるとスムーズに進行します。)
艦ごとの主砲や副砲の『種類』と『配置』から、距離による『落角』と『貫徹力』を求め、様々な修正を入れて着弾判定をしていきます。
着弾の状況も細かく判定し、『近弾』と『夾叉』の判定もあります。これによる着弾修正が存在するゲームはこれしか知りません。(艦砲の着弾はもともとばらつきが避けられず、一定の範囲に広く着弾するので、これを《散布界》と言います。着弾を観測し、目標艦を前後に挟むように着弾することを《夾叉》と言います。こうなれば、後はこの範囲の中に出来る限り大量の砲弾を送り込むのが鉄則というわけですね。)
つまり『当たらない』射撃は『無意味』なのではなく、次弾を当てるための観測データとして有効なんですねー。
それがしっかり表現されています。これが実に細かい!でもメカ好きの私らにはこれがたまらなく楽しかったです。
この砲撃戦の解決には、《着弾の判定》から《装甲の貫徹判定》、《損害判定》、さらに《二次被害》と、全部で6回もサイコロをガラガラ振ります。
こらはデザイナーズノートにもありましたが、この距離での砲撃戦になると「どの程度当たるか」「どこに当たったか」「どのくらい被害が出るか」という要素はある程度《運》まかせになるのは避けられない、という理屈です。
ほとんど素人の私もそれは理解できます。
実際、ゲームとしては、このサイコロ判定が熱いので、やってみて白熱するので、個人的にはお気に入りです。(この運=確率を、艦の運用でいかにコントロールしていくか、という点がゲームとして成立しているのです。)
「よーし、距離21、目標《グラフシュペー》、全門斉射だっ!」
「よし来いっ」
「てーっ!(コロコロ)…弾着!やった《夾叉》っ!」
「水柱がばんばん立って絵になるところだな。やばいな、次は来るぞ」
「次弾装填急げ!次こそ当てる!」
こんな感じのゲーム進行なのが、分かってもらえるだろうか?
思わずサイコロを握る手に力が入ってしまいますよ。(^^)
もう一つ特筆すべきは『浮力』で、右舷と左舷で別れていて、浸水がひどくなると、傾きが生じてしまうので、艦の安定を保つためにあえて反対側に注水し、艦を安定させなければなりません。
意図的に浸水を選択するかどうかのジレンマにさらされるわけです。
このルールがあるのも私が知る限り、このゲームしかないです。
当時の私にはこれがすごく船っぽくて感心ましたね〜。(単に大破、中破ってだけだと、戦車や師団と結局変わらないじゃないですか)
こんな感じのゲームです。
例によって入手難なのはごめんなさい!
押し入れから出てきたのが嬉しくて、レビュー書いちゃいました!
追記
この手のメカ戦ゲームは、私個人は『絵が浮かぶかどうか』という要素をとても大事にしています。
砲撃戦の判定の結果、対象艦が《中破》して、艦隊の展開に支障が出る、という表現も、戦況全体を俯瞰して、その展開を競うという観点から見ると、それはそれでとても正しいと思います。
しかし私は、ただ《損害が出たかどうか》よりも、もっと直接的に《命中したか》《どこに当たったか》《どんな損害が出たか》《まだ戦闘続行は可能か》と言った【状況】に、より関心があります。(あくまで個人的意見)
『舷側に当たったけど装甲を貫徹せずに損害が出なかった』のと、『効果なし』は、確かに結果だけ見ると同じかもしれませんが、脳裏にイメージされる《絵》が違うんですよね〜。
その意味でも、このゲームは、砲撃の轟音、しぶきを上げる水柱、炎上する敵艦、煙を引きながらも必死に回頭する戦艦、艦の安定を必死に保とうとする乗組員、…といった《絵》が浮かぶ数少ないゲームとして評価したいと思います。(そのぶん引き換えに手順が増えるのは宿命なんですけどね…)
- 6興味あり
- 6経験あり
- 2お気に入り
- 9持ってる
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