- 2人~5人
- 15分~30分
- 7歳~
- 2023年~
ファイブタワーズ18toyaさんのレビュー
【レビュー】「引き取る枚数自体」を競りにかけるユニークなセットコレクション!濃厚なのに軽い遊び心地!
【評価8/10】
競り✖️セットコレクション
本作は「ファン・ファクツ」の作者、カスパー・ラップ氏の作品。たくさんの人が既にレビューを投稿していることから分かる通り、とても良い小箱だ。
以下で本作の特徴を説明する。
◇基本の流れ
まず、山札から5枚のカードが競りの対象として並べられ、スタートプレイヤーから順に「私は⚪︎枚取れる」と宣言していく。取りたくない場合や取れない場合はパスしても良い。
左隣のプレイヤーはもっと大きい枚数を言うか、またはパスを選択する。前のプレイヤーがパスしてれば好きな枚数を宣言できる。これを1周行い、最も大きな枚数を宣言した人が、宣言通りの枚数を競り対象5枚の中から選択し、自分の前に色ごとに並べていく。イメージとしては塔を建てる想像をするといい。
取られなかったカードは捨て札となる。
この流れを山札が尽きるまで続ける。2〜3人の時は山札が80枚なので16回、4〜5人の時は山札が110枚なので22回競りを行うと山が尽きる。
その後、捨て札をシャッフルし、これを山札にして再度5枚を並べて競りを行なっていく。2回目の山札が尽きらゲーム終了だ。
◇考えどころ
上では細かく説明したが、つまりやる事は「枚数宣言→自分が勝てたらカードを取って自分の前に並べる。勝てなかったら次の競りへ」を繰り返すというシンプルなものだ。遊び感は良い意味で軽い。
だが、厳密に見ると本作は意外にも考えどころが結構ある。以下で見てみよう。
①枚数宣言
カードを取って塔を建てる際の決まりだが、色ごとに降順でカードを並べていくというルール。例えば、12のピンクの塔を既に建てていたとしたら、その上に「14のピンク」を置くことはできない。置くならば、11以下のピンクである。
数字は各色0〜15までなので、序盤から3や4などのカードを取ってしまって良いのかという悩みがある。ただしビビって少ない枚数を宣言してしまうと、強気な人がもっと多い枚数を宣言して自分はカードを取れないかもしれない。何枚と宣言すれば自分が取れそうか、次の相手にプレッシャーをかけられそうか。駆け引きと心理戦はもう始まっているのだ。
まずここが考えどころその①。
②カード除去の長所と短所
次に、一旦小さい数字を置いてしまったとしても救済措置がある。自分が一番多い枚数を宣言してカードを塔に継ぎ足すとき、既に建てた塔カードのうち一枚だけ取り除くことが可能なのだ。
ただし!取り除いたカードは自分の手元に(裏向きなどにして)取っておき、最後に失点として数える。除去が1枚目なら−1点だが、2枚目は−2点、3枚目は−3点と、マイナス点がどんどん大きくなっていく。失点はこれらの合計なので、2枚除去してしまったら(−1−2)で−3点、3枚除去してしまったら(−1−2−3)で−6点、4枚で−10点となる。
除去自体は可能なものの「後で除去すればいいや」と思ってポイポイ気軽に取りすぎるという訳にもいかない。
ここが考えどころその②。
③特殊カード「8」と「9」
さて、数字のカードは基本的に降順に並べなければならないというルールを伝えたが、ここで特殊なカード、8,9,0について説明を加えよう。
8と9はカードを並べる際の例外だ。まず8を置くと、その上には何の数字でも置ける。つまり、8の上には14でも15でも置ける。逆に、9は0以外の何の数字の上にでも置ける。1や2の上にも9を置ける。8や9は塔の高さを高くするために有効な、便利カードだ。
8や9は塔の高さを伸ばすのに有効
そのため、8や9が競り対象となった場合は多めの枚数を宣言して強引にでも取りに来る人がいるだろう。そのことも考えて枚数宣言をする必要がある。
これが考えどころその③。
④特殊カード「0」
もう一つの特殊カード、0の扱い。塔の一番上に0を置くと、点数が倍になる。
ゲーム終了時の点数計算では、自分の前に塔として建てたカードが1枚ごとに1点となるが、0を置いた色の塔はカード1枚ごとに2点となる。
最後の点数計算では非常に有利になるが、一点注意がある。0を置いた塔は「完成」の扱いとなり、それ以降カードを除去することもできなくなるし、9を置くこともできないのでその色のカードは自分にとって全くの死に札になる。
左端の木の塔は5階の高さで0が乗っているため10点。ただし「完成」の扱い。付け足しも除去もできない
そのため、0を取る前になるべくその色のカードは多く置いておきたい、もう少し粘りたい、と欲が出てくるが、あんまり欲をかき過ぎると他の人に0を掻っ攫われる危険性もある。
0を巡る攻防、これが考えどころその④。
⑤高い塔の重要性
最後の点数計算で、0がない通常の塔、0がある2倍の塔の点数を計算するほか、「1つだけ塔を選んでその塔の枚数分をもう一度得点できる」ボーナス得点がある。これは0による2倍の影響は受けず、純粋に枚数がそのまま点数になる。
この黄色の塔、ボーナスで8点もらえる。こんなん作ったら気持ち良い!
従って、たくさんのボーナスを得るためには1色でも良いからなるべく高い塔を作ることが重要となる。
これが考えどころその⑤。
最終得点とゲームの勝者
こうして、「0がない色の塔のカード枚数+(0がある塔のカード枚数)✖️2倍+最も高い塔のカード枚数-除去カードによる失点」が最終の点数となる。最も点数が高いプレイヤーが勝者だ。
◇濃厚なインタラクションと軽いプレイ感の両立
と、考えどころは色々あるように思われるが、欲望を素直に吐き出せば「どの色も8や9を活用して出来るだけ多くの枚数を取って、全部の塔に0を乗せたい!」となる 笑
もちろん、全員が同じことを考える。しかしランダムシャッフルされた5枚の表示カードがそれを許さない。そう都合よくカードは出てこない。
となると、あとはリスクヘッジの問題となる。「自分は何枚取るのがベストか」と、「嬉しくはないが、何枚までなら置くことは可能か」の両方を考え、そして「他のプレイヤーは何枚欲しそうか」を考えた上で「自分は頑張れば置けて、この枚数以上を取るとなれば他プレイヤーに無理を強いることができそう」と思う枚数を宣言する、と言うことだ。
他のプレイヤーが苦しい枚数を想定し、自分はその一歩手前を攻めるのだから、当然自分も楽なわけがない。しかしこの苦しさを受け入れることなしに自分に都合の良い枚数ばかり宣言していても、リスクを受け入れ前に進むと決めた他プレイヤーから枚数を上乗せ宣言され、カードを奪われ続けるハメになる。
場合によってはあとあと除去することも覚悟の上で枚数を宣言し、余計な小さいカードも合わせて引き取らなければならない時があるだろう。しかし、自分の損得だけではなく全体を見渡した上で「他プレイヤーに渡しても良いカードか、ダメなカードか」を考えて枚数を宣言するのが本作のキモであり、深い楽しみ方だと思われる。
そういう意味で言うと、本作は小箱でありながら非常にインタラクションの濃いゲームだ。
しかし、実際のプレイでやることは、競りの時は「パス」または「⚪︎枚」と宣言をするだけで、自分が競り落とせたら表示カード5枚のうち宣言枚数分のカードを選び、自分の前に置くだけになる。
よって考えどころは集中、収斂されており、「サラッとしていて遊びやすい」と感じられる。ゲーム慣れしていない人でも遊べそう、と感じさせてくれるプレイフィールの抜群の良さがキラリと光る作品だ。
◇弱点
正直、弱点らしい弱点はあまり思い当たらないが、あえて言うなら
・5枚のディスプレイが出た瞬間、「このディスプレイなら⚪︎さんが明らかに引き取るな」と分かる場面が意外とある
点だろうか。
本作は所持金などを使って競りを行うのではなく、引き取るカードの枚数そのものを競るシステムだ。非常に分かりやすく、直感的に遊べるというメリットがあるのだが、一方で「5枚を宣言した人はカードを絶対引き取れる」ことになる。
更に、引き取っても置けないカードを競り枚数に宣言することができないため、特に終盤は「この枚数以上に競り上がったら、もうあの人しか落札できない」という状況がまぁまぁ起こる。結果、「無理しても仕方がないし」と他のプレイヤーはパスの連打で、想定していた人が想定どおりの枚数を宣言し引き取るという「予定調和なムーブ」がちょこちょこ見られる事になる。
このことは「直感的な分かりやすさ」というメリットと表裏一体のため、本作のプレイ感の一環として受け入れるべきものだろう。
幸いにも本作はゲームのテンポが良いため、すぐに次の競りに移行でき、「展開がグダグダ」と感じることはないだろう。
また、こうした予定調和が起こるのは終盤なので、あっという間にゲーム終了までなだれ込み、皆の注意はすぐに得点計算に移るものと思われる。
◇まとめ
本作は、競りの対象と競りの方法を「引き取る枚数」にする事で直感的な分かりやすいプレイ感を確保しながらその実、意外なほどに考えどころや駆け引きがある良作小箱でした。
分かりやすさとの表裏一体として終盤の予定調和は避けられませんが、その事を差し引いたとしても初心者から熟練者まで楽しめるレンジの広い作品です。今後更に普及して欲しいですね♪
以上です。
長文を最後までお読みいただきありがとうございました!皆様の良きボドゲライフに貢献できましたら何よりです^ ^
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