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  • 2人~4人
  • 60分~90分
  • 12歳~
  • 2011年~

村の人生Sato39さんのレビュー

1013名
20名
0
2年弱前

《まさに人生!一族の誇りを名鑑へ刻め!》

人生を終えたワーカーが死去するシステムに非常に感銘を受けた作品なのでレビューしたい。


【2012年ドイツゲーム賞&ドイツ年間ゲーム大賞エキスパート部門の2冠タイトル】

デザイナーは、インカ・ブラント(Inka Brand)とマルクス・ブラント(Markus Brand)のブラント夫妻。代表作としては他に「ガンジスの藩王」や「EXIT」などがあり、「ガンジスの藩王」も私のとても好きな面白い作品なのだが、そう考えるとオーソドックスなワーカープレイスメントにキラリと光るアイデアを盛り込むのが得意なのかもしれない。

そのブラント夫妻が2011年に発表したのが今回レビューする「村の人生」だ。そのユニークなアクション選択方式と「死」という非常に扱いにくいテーマを上手く表現した手法が評価され、2012年のドイツ年間ゲーム大賞エキスパート部門および、ドイツゲーム賞の2冠を受賞している。


【ゲーム概要】

ゲームはラウンド制で行われる。

メインボードには村の様子が描かれており、色の着いた円の部分がアクションスペースとなっている。毎ラウンド開始時、ここに影響力コマをランダムに配置し、スタートプレイヤーから時計回りに1アクションずつ行っていく。

この時、プレイヤーは行うアクションスペースに置かれた影響力コマを1個取らなければならない。こうして順番に何周か手番を行いアクションスペースのコマがなくなったら1ラウンド終了。ミサを行い、次のラウンドを始める。

村の歴史が全て埋まるか、共同墓地が全てワーカーで埋まればゲーム終了となり、最終決算を行い、最も名声ポイントの高いプレイヤーの勝利となる。

BGGより引用


【テーマと親和性の高いアクションスペース】

アクションスペースは以下の8つがあり、家族(ワーカー)の人生に物語を感じるほどテーマとの親和性が高い。

収穫:農場に農夫が1人でもいれば、小麦袋を2個受け取る。
 ・馬と鋤があれば、3個になる。
 ・雄牛と鋤があれば、4個になる。


子孫:ストックから数字の一番小さい家族を1人受け取る。


職人:5つある職人の建物へ家族を1人置き、時間を使って修行することで対応するアイテムを獲得する。


市場:小麦やアイテムを売り、買い物客タイルを獲得する。


:費用と時間を支払い、家族を旅に出す。


議会:家族を議会へ送り、特権を得る。


教会:家族を1人黒い袋に入れる。ミサの時に引いて教会へ配置することができる。


井戸:同色の影響力コマ3個を支払うことで、好きなアクションを行うことができる。


【ユニークなアクション選択方式】

手番ではアクションスペース上の影響力コマを1個取り、そのアクションを行う。他にもそういうメカニクスのゲームがあるのか知らないが、非常にユニークだ。つまり手番で行いたいアクションがあっても、その色のコマが欲しいとは限らない。いや、むしろ自分の欲しい色のコマとアクションスペースが合っていることの方が稀なような気もする。

この時、自分の中でアクションを優先するべきか、欲しい影響力コマを優先するべきか非常に悩ましい選択を毎回迫られることになる。これは他プレイヤーとの早取りもあって悶絶しそうなぐらい悩ましく面白い!

ちなみに影響力コマには各色に意味がある。以下のように少し抽象的な意味が込められており覚えにくく、正直もう少し何とかならなかったのか、という気にはなる。しかし特に意味を知らなくてもゲームプレイには影響はなく、また知っているとより深くゲームには没頭できると思う。


【画期的な死去システム】

このゲームで最も特徴的なのは「死去システム」だろう。個人ボード周囲には人生トラックがあり、アイテムの製造や旅などの時間を消費するアクションを行った時にマーカーが時計回りに進む。このマーカーが12時の位置にある橋を越えた時、そのプレイヤーの最年長の家族が1人死去する。

ワーカープレイスメントのゲームは数多あるが、ワーカーが死ぬゲームはあまりない。当時としては非常に画期的なシステムだっただろう。単純に考えるとワーカーが1個減るためなるべく死なないようにマネージメントする必要があるが、実は死ぬことも悪いことばかりではない。


【村の歴史に名を刻む!】

家族が死去した場合、その家族が従事していた職業に対して功績が讃えられ村の名鑑に記録される。各職業毎に記録される項目が分けられており、ゲーム終了時、名鑑に記録された人数により名声点が与えられる。

このため多くの家族を名鑑に載せたいところだが、各職業毎に定員が決まっておりオーバーした場合は共同墓地へ埋葬される。このシステムが非常に効いており、モタモタしていると他プレイヤーに定員を埋められてしまうという不安にいつも苛まれる。

つまりアクションを行うにはワーカーが必要であるので簡単に失うわけにはいかないが、一方で早く死んで村の名鑑に載りたい、というジレンマが発生し、これが実に悩ましく面白いのだ!


【ミサで運試しのバッグドロー!】

アクションスペースのコマを全て取るとラウンド終了となり、ミサが始まる。ミサではまず黒い袋から家族コマが4つ引かれ、引かれた家族コマは教会の入り口に近い部屋へ配置される。この黒い袋には教会アクションで放り込まれたプレイヤーの家族コマの他に黒の修道士コマが含まれてる。いわゆる「ハズレ」だ。

つまり教会アクションを手番で行なっていても、このバッグドローで引かれなければ教会に家族を派遣することができない。そして教会に再多数の家族を派遣しているプレイヤーは2名声点を獲得できる。毎ラウンド終了時に2名声点を獲得できるのは非常に美味しい。

じゃあ、全くの運ゲーじゃん!

と言いたくなるが、実はこれには抜け道があり、コイン1枚を支払えば袋の中を覗いて家族コマを引いて良いのだ。つまりお金さえ払えば教会のミサに参加することができる。やはり世の中、お金なのだよw


<良いところ>

  • テーマと親和性の高いアクションスペースとユニークな選択方式
  • フレーバーとシステムが合致した画期的な「死去システム
  • 調整可能な運要素を盛り込んだ「ミサ

<悪いところ>

  • 影響力コマの配置、ミサなど運要素はやや強め。
  • 旅アクションがやや弱い? →のちに港拡張が出た。

<説明書&対象>

説明書:12ページ。インスト:15分、プレイ時間:1時間20分(4人プレイ)
BGG Weight: 3.07(2022/12/30現在)、重めの中量級

おすすめの対象としては、言語依存はなく、ルールもシンプルで遊びやすく、それでいて戦略性も高いため、かなり幅広い層に受け入れられるのではないだろうか。

※今回のレビューにあたり公式HPおよび説明書より画像を引用させていただきました。問題があれば削除いたしますのでご連絡いただければ幸いです。


【感想】

この作品はとにかく素晴らしい!」という非常に狭い世界の身近なテーマを、一族の歴史を紡ぐ深い物語へと昇華しているところに浪漫を感じるし、味わい深いアートワークも雰囲気を盛り上げてくれる。

ゲームシステムとしても特徴的な「死去システム」を取り入れたワカプレで、遊びやすさと戦略性の両方を兼ね備えており初めてでも深いプレイ感を存分に楽しむことが出来る。

また、「ミサ」というアナログなランダム要素を取り入れることによりゲーム展開が読めず盛り上がることもできるし、またコイン1枚支払うことで運要素を回避できるシステムも秀逸だ。これにより、お金を蓄えた上手いプレイヤーは堅実にスコアすることが出来るし、お金のないプレイヤーはバッグドローで一発挽回を狙う楽しみもある。

そして個人的にはワーカーが死去して村の名鑑に載るフレーバーとシステムが最高に好きだ。村の外では全く知られることのない無名の村人が、一生をかけて従事した仕事の功績を讃えられて村の名鑑に載り、子孫へと語り継がれる。こんなに素敵なことがあるだろうか。

そして、それをさも当然のようにゲームシステムとして取り込んだブラント夫妻の価値観、人生観をとても魅力的にも思う。10年以上前の作品だが、まだ未プレイの方にはぜひ一度試して欲しい名作だ。

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