- 1人~4人
- 60分~100分
- 14歳~
- 2022年~
ティルトゥムwinterkoninkskeさんのレビュー
二人プレイ時の感想を書きます。
ティルトゥムは、場に並んだダイスから一つを取り、その目と色からアクションが決まり、ルネサンス期のヨーロッパを旅して商館や建築物を建てながら豊かな商売人を目指すゲームです。
ゲームは全4ラウンド、1ラウンドで3アクションの全12アクションで決着をつけます。
手番でアクションが始まると、プレイヤーはまずメインボード左上のアクションホイールからダイスを一つピックアップします。
ダイスには5色あり、それぞれが対応するリソースを表しています。さらに1〜6の目に対応するアクションがあり、ラウンド開始時にダイスを振って出た目がそのアクションエリアに置かれています。
いずれかのダイスを一つ取ったら、「目の数と色に等しいリソース」と「7から目を引き算した数のアクションポイント(以下AP)」が手に入ります。つまり青い5のダイスなら、鉄5個と2AP。
これが1〜6の目で時計回りになっているので、隣の4を取ればリソース4個と3AP。6ならリソース6個と1AP。そして「ダイスを取った場所のアクション」を行います。
このように、リソースとAPが反比例する関係になっており、なおかつアクションの内容まで決定されるのです。
当然、APが多いほどたくさんのアクションを実行できますが、リソースが足りなければ目的は果たせません。
写真を見ると分かりますが、「そもそも対応するダイス目が出なかったのでそのアクションが出来ない」なんて状況もしばしばあります。この場合は、貴重な金貨を払ってダイス目をいじるといったコントロールも必要になります。
このダイスを選ぶジレンマが軸にあると思って下さい。
さぁアクションが決まりましたよ、となれば、メインボード右側のマップで建築物を担当する建築家コマを動かしたり、商館を建てて見本市に参加するための商人コマを旅させたりするわけです。
他にも個人ボードに人物を迎え入れるセットコレクションのアクションがあったりと、5種類+ワイルドのアクションでゲームを進行します。
各プレイヤーが三回手番を行ったら、ラウンド終了処理をして、アクションホイールを時計回りに一回動かします。これで3リソース4APだった場所が2リソース5APとなり、1リソース6APだった場所は6リソース1APになります。
ここまで聞くといわゆるダイスドラフトで行うボード旅系のゲームと思いますが、本作の根幹を成すシステムがもう一つあります。
ボーナスタイルです。
ボーナスタイルは任意のタイミングで発動するものや、リソースを払って勝利点を得る契約、人物を個人ボードにセットする前に待機させるなどの使途があります。これらはまず個人ボード右端の「倉庫」に置かれます。
倉庫はたった四つのボーナスタイルしか保管しておけないので、新しい物が欲しければアクションポイントやリソースを支払ってボーナスを使用し、場所を空ける必要が出てきます。
そしてボーナスタイルはアクション決定時やマップなど、ゲーム内の至る所から手に入ります。効果もたくさんリソースを得られるものや、手番に追加でアクションができる(!)ものまで多種多様で強力なものばかり。
プレイヤーは、ボーナスタイルを上手くコントロールすることで、APと種類に縛りのあるメインアクションを補ったり、リソースを払って得点します。これがほとんどの場合、手番のいつでも解決できるため、メインアクションの前後、時としてアクション中にも使用することになり、悩ましくも楽しいプラスの要素として機能してくれます。
このように、ボーナスタイルが出たり入ったりを繰り返す、「ボーナスアクションゲーム」と言っても過言ではないほど、重要な役割を担っています。
基本となる5種類のアクションはとても単純で、複雑な手順は必要としません。しかしながらボーナスタイルの管理と使用のタイミング次第で大きくゲームが動くことになるので、プレイヤーは多様な選択肢を手にする事が出来るのです。
要素の多そうなゲームの割にルール量は少なく、ボーナスタイルの使い方いかんでゲームに難解さを与える…「ルール量だけで重量級」と呼べそうなゲームが増えていることへのカウンター、と言えそうなゲーム作りを意識したように感じます。
あと、「国王」というパラメータがゲーム中勝手に減っていき、減点となるシステムがあります。これは基本的にプラスに向かっていくマネジメントの中で唯一マイナスの足枷となる要素になっていて、プレイヤーに焦りとインタラクションをもたらしてくれるのが良い塩梅です。(同作家の「ロレンツォ・イル・マニーフィコ」で言うところの「信仰点」のようなもの)
簡単だけど複雑で遊びやすく、早い者勝ちのインタラクションが思ったより強く、マイナスの要素が全体を引き締めてもいる。これだけ聞くと少し前のユーロゲームに立ち返ったようにも感じます。
二人プレイでもこういった駆け引きの充実感は十分すぎるほど得られるので、下手に複雑で個性的なゲームを選ぶ前に、まず遊んで欲しい最新作と言えます。
コンポーネントも充実しています。とんでもない物量です。普段のレビューでは一部しか並べないんですが、今回はその重さを感じてもらうためにほぼ全ての内容物を置きました。
柱や商人コマなど、存在感のある木駒に大きなメインボード。
そしてボーナスタイルを含む膨大な量の紙製タイル類ですね。本作はマップ上の都市の配置以外の、ほとんどの部分がタイルをゲーム毎に変えるランダム要素となります。
それゆえセットアップも少々大変なのですが、おかげ様で遊ぶたびに高得点に至るまでのコースが変わり、どこからタイルを取るかで全く違ったゲーム展開になります。
「強い行動をゲーム毎に自分で探る」という探究心を刺激してくれる、素晴らしいリプレイ性に到達していると言えます。
言語依存がなく、カード類もないため手札管理や複雑な解釈の煩わしさが無いのも良いですね。
あと個人的な予想なんですが、「Tiletum」というタイトルに「tile」という単語が入ってるんですよね。だからこんなタイルゲーにしたのかな?とか思ったり。ひょっとして語源が同じなのかも知れないですけど。
ランダムに繰り広げられる盤面で、プレイヤーの発見や閃きが重要な鍵を握るゲーム性。
探究心が刺激される、とても楽しいゲームです。
- 159興味あり
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