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  • 2人~6人
  • 60分~90分
  • 12歳~
  • 2023年~

パースペクティブ18toyaさんのレビュー

153名
7名
0
約1ヶ月前

「言葉にできない」をなるべく言葉に!点と点が繋がるアハ体験!

【評価8/10】

注:本作の魅力をなるべく伝わりやすいように表現するため、チュートリアルの一部を事前に紹介しています。チュートリアルすらネタバレを完全にシャットアウトしたい!という方は以下のレビューをご覧にならないことをお勧めします。

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以下を読む方はプレイ方法や本作の魅力をお伝えするため、ほんの少しのネタバレを許容してくれた方、と判断します。では、レビューにお進みください m(_ _)m

本作はコミュニケーション協力謎解きゲームです。

謎解きというと「似たようなの、いろいろあるんじゃない?」と思われる方もいるかもしれませんが、本作は完全協力なのにとてつもなくお互いの意思疎通が難しく、それゆえアハ体験、脳みその気持ち良さが生まれる作品です!

どういう事かと言うと、各自が持っている情報は写真(という設定のイラスト)が中心なのです!えっ、どうやって伝えるのよこんなの!? 笑


◇チュートリアルのご紹介

本作の魅力が伝わるよう、具体例を提示したいと思います。本作はオシャレなことに内箱の側面が「本作はこういうゲームですよ!」と示すチュートリアルになっています。

以下の4枚の写真は中箱の側面の4面に描かれたものです。

各プレイヤーはこのうち一面、または最高でも2面までしか見ることができていません。そして「盗まれた卵」の謎を解いていきます。

概要としてはこうです。

〜〜 古美術商の自宅に飾られた芸術作品「ファベルジュの卵」を誰かが盗みました。その何者かは30分間防犯カメラと警備システムをハッキングしたようです。プレイヤーたちはシステムがハッキングされる前後の監視カメラ映像を見て「自分の視点から観察できたことについて」話し合い、鍵となる質問 泥棒がどのようにして卵を盗み、どのような経路で逃走し、なぜその経路を選んだのかを突き止めましょう」 に答えます。更なる質問に挑む準備が十分できたと思ったら「箱に蓋をして中箱の側面を隠し」追加質問に答えていきます 〜〜


さて、監視カメラ映像をよくよく見比べると色々な情報が出てきますね。

例えば17:59の入口側の映像では

物置の中には3本の道具が吊るされていますね。しかし18:31の映像では…

おやおや?

更によく見るとはしご階段に絡みついている花、なんだか…?それによくよく見ると階段の途中が…


さて、卵が写っている面を見てみましょう。17:59の映像では

右端に花が見えますね。これってどこの花でしょうね?17:59の入口側の映像でも見たような?

更に同じ面の18:31の映像では…

右側のベランダに何やら怪しげな足跡?それによくよく見ると右端の花、少し17:59とは違っている?ような?

あと、卵が見える部屋の側のベランダはなかなか遠いようですが、よくジャンプしましたね。と思ってよく見ると屋外灯が17:59とは違う?でしょうか?これは何を意味しているのでしょう。


などなど、確かに違う時間、違う面からの写真を同時にじっくり見比べることができれば色々推理は進む訳です。しかし問題は「各人は自分が見えている画像が固定されており」「他の人に伝えるには言葉で説明するしかない」点。

どうでしょう。うっすらと本作の真骨頂が分かってきたでしょうか。

これらの監視カメラ映像を、手探りでお互いに言語化して伝え合い、例の「泥棒がどのようにして卵を盗み、どのような経路で逃走し、なぜその経路を選んだのかを突き止めましょう」に答えられるようになったら、色々な要素、つまり点同士が線として繋がっている訳です。

この後に初めて開示される追加質問は、これらの点と点が繋がって線になっていれば基本的には答えられる質問達です。1つだけ質問を挙げると「泥棒が犯行のために使ったものは何と何か?」これはお互いに十分に情報という点を交わし合い線に結びつけていられれば答えられる。こうした質問があと2つほどある訳です。

これらの質問に答え、回答を見た後チュートリアルでは次に第2幕で箱の表面の写真を使い、謎の問いかけがあります。箱を余さず使ってゲームの導入に使うなんて、なんてオシャレなんでしょ!!


◇ゲーム本編の流れ

以上、チュートリアルで大まかな本作の流れと醍醐味を掴んでいただけたら、いよいよ本編に挑んでいきます!

本編は「ナーガラージャ」「The DREGS」「ブエナビスタから愛をこめて」の3つの事件が封入されています。各事件は1〜4幕までに分かれており、1〜3幕はそれぞれ12枚のカードと、それを挟んでいるフォルダから構成されています。フォルダにはゲームをどのように進めるかの進行等が書かれています。


各事件は第1幕から順に始めていきます。第1幕のフォルダに挟まれた12枚のカードを裏向きのまま、1枚ずつ時計回りに配ります。各人は自分に配られたカードの情報を見た上でまずは言葉での情報共有、話し合いをします。

そのうち、「これは公開して共有しないと言葉で伝えるのは苦しい。でも共有したい」と思う情報が出てくるでしょう。計12枚のうち1枚だけは、中央に公開することができます。これを元に鍵となる質問に答えられるよう、更に話を詰めていきます。

どうしても言葉で伝えられないと思う情報が他にもある場合は、マイナス点を食らいはするものの、公開カードを増やすことも不可能ではありません。


こうして鍵質問に答えられるくらい十分点と点が繋がったら、全員のカードと中央の公開カードを全て集めて伏せた上で、追加質問を開示して(この時点まで追加質問を見ることはできない)答えていきます

全ての質問に答えたら(わかりません、も含め)正解を確認。伏せたカードはそのまま回収し、次の第2幕に進む。

こうした展開を第3幕まで繰り返したのち、第4幕では1〜3幕で見た全てのカードを一気に開示します。全員がこれらを見ることができる中で4幕の「鍵となる質問」に答えられるくらい情報と推理が煮詰まったら最後の追加質問に挑みます。これらを全てクリアしたら真相を確認して1つの事件が終了する。という流れになります。


チュートリアルでほのかに見えた「画像や絵というアナログ情報を言葉で伝える難しさ」が、本編では12枚の情報となってプレイヤー達に降り掛かってきます!中には一部文字情報もあるのが救いです!

ここから先はレビューを読んでくれた皆さんに体験していただければと思います。1〜4幕は一連の流れとなっており、1つの事件を解決するために必要な情報が詰まっています。か細い「言葉」という糸を紡ぎ、点と点を繋げ謎を解いていく。そんな中でも「えっ、その情報、これと繋がるんじゃ?」という気付きはアハ体験!脳みそが気持ちよくなるでしょう^^

とは言え、やはり限られた情報を想像で埋めているため、なかなか苦しい展開も続きます。こうした負荷がかけられたコミュニケーションを耐えた中で、最後の第4幕ではそれまでの1〜3幕の全ての情報を見ることができる!これが爽快なのです!「ああ〜さっき言葉で言われた時に伝わらないなぁと思ってたけどこのことか!」と霧が晴れるような気持ちになるでしょう

更に、全員でよくよく全部のカードを見ると「あれ?ここのこれがあれと繋がってるんじゃない?」「うわーマジだ!ヤバッ!」という気づきも一つや二つではないでしょう。ここでまたアハ体験です

こうして4つの幕を全て解き事件を1つ終えた時、私は映画を1本見終えたような、満足した気持ちに浸れました。

そんな事件が3つも詰まった本作、お値段はそれなりにしますが金額に十分値すると私は感じました^ ^


◇本作の弱点

さて、本作はとても良質な謎解きミステリーで、最後まで解き終えれば非常に満足感の高い一作だと思いました。ただ、弱点というかマイナス点が皆無とは言えません。それは

  1. 言語化問題
  2. 追加公開の使いすぎ問題
  3. どこで追加質問に進むか問題

の3点です。順に説明します。


まず、上記で説明した通り、「言葉にしづらい情報を言語化して他者に伝える」ことが必須のゲームなので、当然説明力が求められます。こういう種類のゲームに興味を示す方であれば、こうした敷居は越えている方かな?とは思うのですが、上記のチュートリアルの説明を見て、何となくゲームの方向性やプレイヤー達に味わって欲しい体験がどんなものかを推し量ってもらえれば、と思います。


次に、システム的な担保として「カードを更に追加して中央に公開できる」ルールを多用することの危険性。

この仕組みは、どうしても説明が難しいと感じられるカードが何枚もある場合、閉塞感を打開する手段となるのは間違いありません。ただし、この追加公開って諸刃の剣なんです。「カードが見たいけど見れない、見せたいけど見せられない、なら何とか言葉で伝えないと。でも難しい!一体みんなにはどんな風景が見えてるの?」という、意図的なストレスがかけられている中で、言葉を尽くした時に点と点が繋がる。それこそがアハ体験に繋がるし脳汁が出る瞬間。だと、個人的には思うのです。よって、あまりに安易に追加公開しすぎると本作独特の気持ち良さが目減りしてしまう危険性がある。

なので、あくまで私的見解にはなりますが、追加公開の使い所は絞った方が本作の本質、アハ的な喜びを堪能できると思います!


最後に、鍵質問に答えられる状態になっても「いつ追加質問に進むか」の踏ん切りがつきづらい点。ここ、実は微妙に難しくて、みんなの情報を交換してある程度事件の背景や流れが分かっても「全部分かってるか」と言われると、完全な情報を目にしてる訳ではないので自信を持ち切れない。「鍵になる質問には答えられても、どんな質問でもバッチ来いとまでは言えないなぁ…」と思ってしまいがち。ここで流れがグダグダになってしまう懸念があるんです。

実際、私のパースペクティブ会では鍵質問に答えられそうな状態になりつつも、みんな疑心暗鬼になって少しグダってしまい、「これ以上はもう要素出せないわ、進もう!」と覚悟を決めて鍵質問に答え、追加質問を見てみたら「あれま〜なんだ、これならもっと早く進んでも良かったね…(汗」となったこともあったんですよね。

ここら辺は、「見えない質問という怖さと、それを退けた時の開放感・気持ち良さ」という本作の楽しさの源泉と表裏一体なので避けられない。解決策としては、厳密に守らなくても良いけどタイマーをセットして、ある程度のところで切り上げる、という外的な制限を作るのも良いかもしれません!


◇まとめ

以上、本作の魅力と、その魅力とは切り離せない弱点についてもお伝えしました。

全ての事件を解決した立場から言うと、本作は決して易しい難易度ではありません。それは謎の難しさというよりは、「言葉で伝えることが難しい情報を言葉で共有する」ことの難しさがもたらすもので、結構新感覚でした。決して楽な道のりではありませんでしたが、それゆえ点と点が繋がった時の楽しさ、興奮、アハ体験に痺れました^^

途中、見えない追加質問が怖くてグダってしまった時もありましたが、その恐怖心を跳ね除けて追加質問を見事答え切れた時の嬉しさと脳みその気持ちよさ、そして心地よい開放感。

ぜひ皆様にも体感してもらえればと思います!


長文乱文にも関わらず最後までレビューをお読みいただきありがとうございました!皆様の良きボドゲライフの一助になれば幸いです♪

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