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  • 2人~4人
  • 45分前後
  • 10歳~
  • 2018年~

クアックサルバー18toyaさんのレビュー

1336名
19名
0
3年以上前

【個人的評価 9/10】

中量級・2~4人

バッグ構築×バッグドロー×チキンレース×拡大再生産=?

2018年ドイツ年間ゲーム大賞エキスパート部門 大賞受賞作。

このゲームを初めてプレイした後に,思わずほぉぉぉぉ…と唸ってしまいました。たまにあるんですよね。好き嫌いすら越えて「こいつぁ凄いものに出会ってしまった…」と感嘆したくなる時が。

クアックサルバーはまさしくそれでした。

ゲームの基本メカニクスは,自分のバッグからチップ(薬の素材)を引いていくというバッグドローが中心。

ただし,いくつかの素材のうち白い素材,こいつが曲者。白チップが安全なのは7点までで,合計8点以上を引いてしまうとバーストしてしまい,そのラウンドはボーナスが得られるサイコロを振る権利が無くなる上に,買い物か勝利点のどちらかを諦めなければなりません。

どこまでチップを引くか。ギリギリまで攻めるのか,欲張るのはやめて安全圏で止めるのか。このチキンレースが堪らない。

しかし,クアックサルバーが凄いのはチキンレースの面白さだけにとどまらないところです。


<バッグ構築の妙>

まず,毎ラウンド買い物のチャンスがあり,引いた時や得点計算時にさまざまなプラス効果がある素材の中から自分の手持ちのお金の範囲で購入ができる。

これをバッグに投入できるので,バッグの中からプラス効果の素材を引ける可能性が高まるし,かつバーストの元となる白い素材を引く可能性が低くなる。

毎ラウンドこうした買い物をしてバッグに投入を繰り返すことによって,ラウンドを追うごとにバーストしづらくなり引ける素材はどんどん増えていく。

そしてこの事によってどんどん得られる勝利点や買い物額が増えていく。値段が高い素材が買えるようになると,更に得点や買い物額がますます増える。つまり拡大再生産的な要素です。

自分のバッグが成長し,どんどん先に進めるようになり,それにより高いものが買え更に先に進める…という好循環が気持ちいい。

更に言うと,例えばもっと攻めたいと思ってチップを引き続けバーストした場合も,点数を諦めれば買い物ができる。つまり,失敗によってバッグの構築が遅れ,加速度的に他の人から離されていくということが無い。さすがに後半ラウンドでのバーストは勝利点6,7点を諦めることになるので非常に痛いのですが、序盤中盤の1度や2度のバーストはそれほど気にしなくても良い。

ミスした人も挽回できるチャンスがあるようにシステムが担保してくれているというのは素晴らしい仕組みだと思います。


<バーストしなかった人の恩恵>

一方でバーストしなかった人にも恩恵があります。バーストをせずにトップを取っていればラウンド終了時にサイコロを振れます。

このサイコロには色々な恩恵がありますが,スタート地点を1つ先に進められたり,白い素材を中和する中和薬の補充などに使えるルビーをもらえたり,メリットがちゃんと用意されています。勝利点と買い物もちゃんと両立できますしね!


<ネズミフェイズ>

ミスをした人が挽回できるチャンスをゲームシステムで担保している点は他にもあります。それがネズミフェイズです。

毎ラウンド,素材を鍋に投入する前に勝利点が遅れているプレイヤーは,最も勝利点が高いプレイヤーとの間に「ネズミのしっぽが何本あるか」を数え、その本数分スタート地点にゲタを履かせてもらえる

これにより,負けているプレイヤーも引き次第でトップ目より評価点が高い場所まで到達し,高い勝利点を得たり高い買い物をできる可能性も出てくるのです。


<総合評価>

チキンレースは基本的に運と度胸のゲームであることが多く,運が徹底的についたプレイヤーはシステムが介入しなければブッチギリで勝ってしまう可能性もあります。

無論,運のツキ方によっては均衡することもあるでしょうが,運が多めのゲームで運で勝敗がつく時,勝っている側は気持ちいいでしょうが負けている側はストレスがとても溜まってしまう。

クアックサルバーは,ゲームの勝敗を運だけに委ねずシステムでしっかりと管理し,勝負が拮抗するように,デッドヒートが発生しやすいように組み立てられています。この点が非常に素晴らしく,ただの運ゲーとは一線を画する点だと感じます。

また,ルール自体もそこまで複雑ではなく比較的分かりやすいという点に加え,各プレイヤーの個人ボードや全体の共通ボードにもプレイアビリティ向上の配慮がなされています。

一例で言うと,共通ボードにはラウンド終了時の処理が全て図示されており,この図柄を指差しながらサイコロを振る,ルビーを獲得する,などと順を追って処理を進めればうっかり忘れが発生しづらくなっています。

こうしたプレイアビリティの向上によりプレイヤーは純粋にゲームに集中でき,この点も素晴らしいと思います。

こうしたゲームシステムによる運の管理とルールの簡易性,プレイアビリティの高さにより,クアックサルバーはファミリーでも安心して楽しめるゲームとして仕上がっています。恐らく小学校中学年,場合によっては低学年でもルールを理解して楽しめるでしょう。

また一方で,素材の効果は複数種類用意されており,プレイヤーボードも表面と裏面でプレイ感が全く異なります。ボード裏面を使用して上級ルールを導入することにより,大人同士でも楽しめるゲームとして仕上がっており,非常に洗練されたゲームです。


ただし,弱点が皆無という訳ではありません。

デッドヒートを発生させるために大活躍するネズミフェイズですが,一方で途中勝っていた側が最後に抜かれることもあり「せっかく勝っているのに勝てば勝つほど負けている相手が履く下駄が高くなるのはゲームとしてどうなんだ?」と感じる場合があります。

そういう意味では「ゲームを進める中で少しずつ有利を積み重ね,最終的にミスが最も少なかった者,得点効率が最も高い行動を取った者が必然を積み重ねて勝つ」ゲームを好む方には,このゲームはあまりハマらないかもしれません。

また,他のプレイヤーへの介入はほとんど無く,基本的には野次ったり煽ったり(笑),という外野戦法くらいしか相互干渉が無いため,インタラクションが強めのゲームを好む方からも選考外になるでしょう。

ただ上でも触れた通り,このゲームを単なる運ゲーからデッドヒートゲームに昇華させているゲームシステムは一見の価値があると思います。こうしたタイプのゲームがどうしても受け付けられない,という方でないなら是非一度試してみていただきたいゲームです。


最後まで長文をお読みいただきありがとうございました。皆様の良きボードゲームライフに貢献できれば幸いです。

↑2点差のデッドヒート。システムとしてこのように僅差になるよう設計されているのは素晴らしいです^ ^

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