- 1人~4人
- 30分~45分
- 14歳~
- 2021年~
カスカディア18toyaさんのレビュー
懐の深い自然と厳しく獰猛な自然。相反する二面性を貴方は体験したか!?
【評価8.5/10】
タイル配置×オープンドラフト
世界的な権威のあるボードゲームの賞、ドイツ年間ゲーム大賞(SDJ)。このSDJを2022年に勝ち取った栄えある作品が本作「カスカディア」です。
近年のSDJ受賞作はルールの難易度は易しめで多くの人が遊びやすいゲームが選ばれる傾向にあり、本作もこうした系譜の上にあります。
しかしこのゲームは簡単で間口が広いだけのゲームではありません。本作がリリースされてから私のレビューが半年以上遅れた理由は、シナリオチャレンジ全クリアに時間を要したためです。途中で何度か心を砕かれながらも2日ほど前に何とかラストシナリオを終えたので、ようやく安心してレビューに取り掛かれました。
では以下で概要を見ていきましょう。
【背景】北アメリカ大陸西部に美しく多様な生態系を築こう
さて、本作のタイトルである「Cascadia」ですが、このゲームにおいては「Cascadia Bioregion」(カスカディア生物地域)のことを指すと思われます。この地域はアメリカのカリフォルニア州からカナダのブリティッシュ・コロンビア州まで流れるコロンビア川流域と、同じ地域に連なるカスケード山脈を中心とする、現在でも豊かな自然が残されたエリアです。
(参考まで、下記のHPにはCascadia地域の素晴らしい写真が掲載されています)
ちなみにコーヒーの名前で日本人に馴染みのある「マウント・レーニア」はカスケード山脈に連なる山の一つです。また、1980年に噴火した事で有名なセント・ヘレンズ火山もカスケード山脈に属します。
本作は、このカスカディア地域を舞台として、生息地と動物を配置していくパズルゲームとなっています。
【基本】タイルとディスクの二層配置が程よく悩ましいパズルゲーム
本作はランダムに選択した初期生息地タイルを出発点として生息地タイルと動物ディスクをセットで獲得し配置。これを20ラウンド繰り返していくゲームです。
5種類の異なる初期生息地タイル
基本ルールはごくシンプルで初心者もすぐゲームに馴染むことができるでしょう。また生息地タイルの置き方に制限はほとんどなく、既に置かれているタイルに隣接する必要がある程度。ただし高得点を目指すのであれば同じ種類の生息地をなるべく隣接させ、同種のひとかたまり(回廊地帯)を大きくする必要があります。
同種の生息地をなるべくつなげようともがいてます 笑
しかし同じ生息地を繋ぎたい一方で、生息地タイルには「何の動物ディスクを配置できるか」が描かれている。
生息地タイルによって描かれている動物の数(1種〜3種)も種類も異なる
この動物ディスクの配置はカスカディアにおいて大きな得点源。勿論生息地を同種で繋ぎつつ動物も都合よく配置できれば万々歳ですが、いつでもそう上手くはいきません。何を優先するか、思い通りのタイルとディスクの組み合わせが見当たらない今をどうすべきか。ここが悩みどころで本作の醍醐味です。
生息地、動物は共に5種用意されており、更に動物をどのように配置すれば得点を取れるかという条件は動物ごとの得点カードによって決まります。各動物ごとに得点カードは4種ずつあるので、組み合わせが変わるごとにプレイ感も点数を取りやすい配置も変わり、リプレイ性を生み出してくれます。
動物得点カードが変わるとプレイ感も相当変わります。
【シナリオチャレンジ】相当な難易度、苦戦は必至だがやりごたえは抜群!ソロ目的で購入しても後悔しない満足度!
さて、ノーマルなゲームは間口が広く敷居は低く、しかし高得点を取るためには考え所があり悩まし楽しいゲームであることを説明しました。ではシナリオチャレンジはどうか。
本作にはシナリオモードチャレンジとして15のシナリオが用意されています。この難易度が非常に高い、特に終盤!
シナリオソロチャレンジで遊んだところ、最初の3シナリオくらいはボチボチかな、と言う感じでしたが、シナリオ5、6あたりから難易度が徐々に上がり始め、シナリオ10を越えたあたりからは配置の基本技術だけでは足りず引き運も無ければクリアは不可能です。
私はシナリオ10、11あたりからちょくちょくクリア条件を満たせなくなり、特に11では6回目のチャレンジでようやく成功するなど苦戦の連続。
苦難の歴史(これらの裏面にも敗北の数々が刻まれてます…)
シナリオ13以降は配置制限も相まって「運が向くまで何度かやり直せばいつかはクリアできるでしょ^^;」と言う気持ちでプレイしてました。最終的にはシナリオ1~15を全クリアするのに計40チャレンジ程かかり、かなりの歯応えを感じました。
本作はノーマルに遊べばサラッと楽しむことができるスタイリッシュなゲームに感じます。しかしシナリオチャレンジのクリアを目指せば本作の異なる一面、まるでカスケード山脈のように険しく厳しい自然の一面を体感することができるでしょう。
剛柔をともに併せ持つカスカディアは初心者から強者までみんなが楽しめる幅の広いゲームでした!
さて、では本作の長所と短所を見ていきましょう。
【長所】
・ルールが簡単でとっつきやすい
・しかし高得点を目指せばしっかり悩める
・動物ディスクが木ゴマなのが良い
・ランダムな動物得点カードの組み合わせにより、どの動物がシナジー(お互いの長所を組み合わせて点数が伸びやすくなる)関係にあるのかが変わり、リプレイ性が増す
・シナリオチャレンジ全クリアを目指せば相当の歯応えがあり、ソロゲーとしての購入も十分射程範囲
木製の動物ディスクは手触りも良く、ディスクを入れる布袋もカッコいい
【短所】
・パズル嫌いな人の心には響かないかもしれない
・展開は地味め(タイルやディスクに派手な配置時効果などはない)。ワイワイ系・パーティー系ではない
・シナリオチャレンジは途中から難易度がグイグイ上がるので、何度挑んでもクリアできない場合、途中で心が折れてしまう可能性も
基本的には「あちらを立てればこちらが立たずのパズルゲーム」ですので、プレイ感は「うーんうーん」と唸る系で、一発ドカンと笑いが起こってキャッキャと楽しむ空気感のゲームではありません 笑
しかし予測が難しい未来を少しでも手繰り寄せようと努力し、悩み、辿り着いた「自分なりの答え」に満足できる方にはジワーッとした楽しみがあるでしょう。ゲーム自体はもちろん違いますが、「楽しさの本質」という意味ではブルゴーニュに似ているところがあるかもしれません。
間口が広いのが本作の特徴ですので、気になった方はまず一度お試ししてみることをお勧めします^^
また、過去に1、2回遊んで「こんなものかなーまぁサラッとしてて遊びやすいね」くらいのライトな感想をお持ちの方は是非シナリオチャレンジをクリアまでやり通してみる事をお勧めします。カスカディアの印象が少し変わるかもしれません。
【小ネタ~本作タイトルの読み方について】
さて、以下は本作のプレイには全く関係のない話です。
上記序盤の「背景」で、私はこのゲームの舞台はカスケード山脈を中心とした地域であることを説明しました。
そこで私は思った訳です。「私だけはカスカディアと書いて心の中でカスケイディアと読もう」と 笑
本作「Cascadia」は「Carico(キャリコ)」を作ったチームの2作目です。キャリコというゲームもタイトルはダブルミーニング(二重の意味)があり、猫の種類であるキャリコとパッチワークのキャリコ(つぎはぎ、という意味)の掛け言葉となってます。色んな模様のキルトを縫い合わせてパッチワークを作り、猫ちゃんを呼び寄せて満足してもらいましょう!というゲームを表す、洒落の利いたタイトルです。
呼んだニャ?
そう考えてみると今作もそういう言葉遊びの要素があるのではないかと思いました。
Cascadeには「段々」あるいは「数珠繋ぎ」という意味があります。このCascadiaというゲームもカスケード山脈地域のゲームであると同時に「生息地タイルと動物ディスクの二重配置」が階層状に段々になっているし、また動物ディスクが何個も連なる姿はまるで数珠繋ぎ(カスケード)のようにも見えます。タイトル「Cascadia」はこうした意味合いの掛け合わせ、言葉遊びではないかと推測しました。
このレビューを書いているR4.11現在、日本語版Wikipediaでは「Cascadia」の事を「カスカディア」と掲載しています。恐らくカスカディアの方が読みとして一般的なのでしょう。しかし、私は作者の言葉遊びに敬意を表し、これからも本作を心の中で「カスケイディア」と呼ぼうと思ってます 笑
本当に本論と全く関係のない余談でした^^;
(ちなみにこの話、メーカー様に対して含むところは一切ありません!むしろ完全日本語版を出してもらえて感謝する事しきりですm(_ _)m)
以上でカスカディアのレビューを終わります。長文乱文に最後までお付き合いいただきありがとうございました。皆様の良きボドゲライフに少しでも役立てれば何よりです^^
- 540興味あり
- 1518経験あり
- 511お気に入り
- 1111持ってる
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