- 1人~5人
- 90分~150分
- 12歳~
- 2022年~
村の人生:ビッグボックスハナさんのレビュー
村の人生は2011年に発売され、2012年ドイツ年間エキスパートゲーム大賞を受賞した名作です。
本セットはそのビッグボックス版となります。ダブルレイヤーの個人ボードなど、コンポーネントが大きく強化され、イラストが一新。入手困難な拡張「酒場」「港町」、完全新作の拡張「結婚」、ミニ拡張の「人生の目的」、各種プロモタイルに、ソロモードまで追加された豪華仕様となっています。
その分、箱の大きさはとんでもないですが。
あの箱が大きくて仕方ないサイズ大鎌戦役と比べてこの大きさです。ヤバいですね。
【村の人生について】
「村の人生」は、ある一族を何世代かに渡ってプレイして、一族全体の名声を高めるのが目的のゲームです。内容的には変形型のワーカープレイスメント。ワーカーが死ぬのが最大の特徴で、ワーカーに第1世代から第4世代まで数字が振ってあり、特定のアクションを実行すると時間が経過して、一定時間が経過すると小さな数字(古い世代)のワーカーから死んでいきます。また、ワーカーをアクションスペースに派遣するとそのスペースに就職した形となり、そのワーカーが死ぬまでそのスペースのアクションを活用できるようになります。あるワーカーは職人としてアイテムを生産しながら一生を終え、あるワーカーは議会や教会で高い地位に上り詰め、あるワーカーは旅に出て、旅先で命を落とす、、、ワーカーが死ぬと、そのワーカーの就職先に応じて村の歴史に刻まれ、名声(勝利点)となっていきます。
古い世代が村で働き死んでいき、少しずつ若い世代に引き継いでいく、そんなテーマを見事にボードゲームで表現している、非常にテーマ性が高いゲームだと思います。
ゲームとしても「ワーカーが死ぬ」というのが非常に生かされており、時間経過とワーカーの残数、死ぬタイミングのコントロールがゲームの面白さに繋がっています。
ワーカーの死以外にも勝利点に繋がる要素が多く、「市場」「議会」「教会」「旅」のどこを重視するのか、勝ち筋が多く戦略性が高いゲームだと感じました。最後まで誰が勝っているのか見えにくいのも良いです。
元々は4人用ゲームで、拡張で5人プレイ可能になりましたが、ビッグボックスでは最初から5人対応となっています。
古いゲームですし、難点もいくつかあります。
まずは地味。良く言えば堅実なのですが、基本だけとって見るとかなり華がないです。拡大再生産的に収入が増加していくゲームではないので、終盤まで盛り上がりどころなく淡々と進む印象ですね。
それから要素の多さ。重ゲーの中では軽い部類ですが、各要素がそれぞれ個別のルールで運用されるため覚えることが多く、直感的に分かりにくいです。比較的プレイミスが起こりやすいゲームだと思います。特に「市場の日」「ミサ」という重要な要素は、一度触ってみないとゲームにどう作用するのか掴みにくい印象でした。
また、言語依存はないですがアイコンの意味が分かりにくく、何回かプレイするまで説明書が手離せないと思います。
そしてワーカーが死ぬという点。慣れないうちはワーカーの死のデメリットを重く取りすぎる傾向があると思います。一定数のワーカーが死ぬとゲーム終了トリガーとなるため、最初のうちはゲームが長引きグダりがち。
総じて玄人向け、かつリプレイ前提のゲームという印象です。
【拡張について】
拡張は「酒場」「港町」「結婚」の3つ+ミニ拡張「人生の目的」
特に「酒場」と「港町」は非常に評判が良い拡張で、マストという声多数です。現在ほとんど入手できない状態だったので、ビッグボックスに収録されているのは素晴らしいです。
「酒場」は、新たなアクションスペース「酒場」が追加され、そこにワーカーを派遣すると村人カードを入手できます。村人カードは使い捨ての即時効果を持つものとゲーム終了時の追加点をもたらすものがあり、どれも非常に強力。取れたカード次第で戦略、方針を決定できるものばかりです。ある程度めくれ運が発生してしまいますが、それ以上の盛り上がりと駆け引きを提供してくれると思います。酒場で一生飲んで死んでいくワーカーが出るのは少し面白いですね。
「港町」は、基本ゲームだと魅力が低かった「旅」アクションを、大幅に改善してくれます。船に生産した製品を満載して出港し、旅先で売り払って勝利点と交換、さらに旅先の島でカカオ、紅茶といった交易品を積み込んで持ち帰りさらなる勝利点を得ることができます。まさに一攫千金、皆が競って海に出るようになり、勝利点も基本より大きく伸びます。かなり派手な拡張で、一度入れると基本ゲームがきっと物足りなくなります。
元々基本ボードに港ボードを被せる形式だったそうですが、ビッグボックスでは裏面が港拡張対応となっています。旧版では港町拡張が必須過ぎて、メインボードに港拡張を貼り付けてしまった人もいるとか。
「結婚」拡張は完全新規の拡張。ラウンド終了時に結婚式が開催され、無事相手が見つかったワーカーの一族は報酬や子孫がもらえます。ここでもらえる「パン」と「道具」が強力で、特にパンは古い世代のワーカーを延命できたりします。結婚できるかどうかは入札みたいな仕組みになっており、新たな駆け引き要素として楽しめると思います。
ミニ拡張「人生の目的」は、ゲーム開始時に「達成できたら○点」という目的カードを2枚受けとるだけ。点数はそこそこ大きく、プレイの中間目標になるので無理なく導入できますね。
ビッグボックスのすごい所は、これら拡張の組み合わせによるゲームバリエーションの数。「基本のみ」「基本+酒場」「基本+港町」「基本+結婚」「基本+酒場+港町」「基本+酒場+結婚」「基本+港町+結婚」「基本+酒場+港町+結婚」の8パターン(人生の目的を入れるかどうかで16パターン!)もあり、それぞれプレイ感や戦略が微妙に変わるため、リプレイ性は十分です。
注意点として他の方も挙げてますが、最初は拡張を盛らない方が良いと思います。基本だけでも十分要素が多く、プレイしないとそれぞれの作用が掴みにくいゲームなので、「基本のみ」から始めて一つずつ拡張を試していくのをオススメします。
【アートワークについて】
海外で酷評されてますが、アートワーク一新は好き嫌いが出そうな点。旧版のイラストはかなり地味でしたが、建物の屋根にアクションアイコンが溶け込んでいたり、勝利点トラックが名声を記録した紙のようになっていたりと、フレイバーをとても重要視していたと思います。ビッグボックス版のアクションアイコンや勝利点トラックは、見易いかわりに少し無機質で味気なく感じます。
また、昨今の配慮により、「貴族」など一部の村人カードの人種が変わっており、元々の中世ヨーロッパという舞台から世界観が離れています。ファンタジー世界と思えば違和感がないですが、元々のフレイバーを大切にしていた人からは気になるという声が。
個人的にはビッグボックス版のイラストの方が親しみやすい&見易くて好きです。
【まとめ】
個人的には名作「村の人生」と拡張が入手しやすくなっただけでも嬉しいです。ボリュームも十分すぎるほどで、めちゃくちゃ満足感が高いです。ソロモードは未プレイてすが、そのうちチャレンジしてみたいです。
一見地味ですが、ワーカーが死んでいく仕組みはやればやるほど奥深いので、是非とも触れてみて下さい。
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