- 2人~4人
- 60分前後
- 8歳~
- 2020年~
オルトレーおおのさんのレビュー
「家族でボードゲームするなら、キャンペーンやレガシーのような体験するおもしろさを重視したい」という方には非常におすすめできます。人数も選びません。2人でも4人でも同じように楽しめるはずです。惜しむらくは値段が高いことですが、安く買えるチャンスがあればぜひ!
似た形式のゲームとしてはゾンビキッズやパンデミックが挙げられます。手番の前にダイスやめくりによって問題が発生し、それらを解決しつつなるべく効率よくアクションを重ねて目標達成を目指す、という内容です。オルトレーやパンデミックをものすごーくシンプルにするとゾンビキッズになります。
(やや脱線しますが、ゾンビキッズもいいゲームですよ。単純すぎて作業感はありますが、子供だけでも遊べる、という点で価値があります。子供同士であーだこーだと、ルールの間違いや見落としは起こりそうでも細かいことは気にせず「大人は口を挟むまい」と決め込んで見守っていると、「意外とちゃんと考えてんだねえ」とちょっと感動できたりします)
オルトレーの最大の魅力は、やはりシナリオです。全体的にテキストが良いです。
メインのシナリオは、「年代記」という本のページがめくられることでストーリーが進みます。手番数回ごとに1ページめくられます。良いことがあったり問題が発生したりしつつ、達成すべき目標がだんだんと見えてきます。この「めくり」がものすごくわくわくします。長々とテキストを読まされたり処理が多すぎたりしないのでテンポも良いです。
最初はどうすればクリアできるのかわからないわけですが、「何をすればいいかわからない」というふうにはなりません。「任務」という「全部解決する必要はないが解決すればするだけクリアの助けになる」というサブの目標によってカバーされています。上手い仕組みです。そもそも、けっこうひっきりなしに問題が発生するので遊んでいる暇はありません。
また、「事件」と称されているプチイベントの解決にもちょっとしたストーリーがあり、これが非常に良いフレーバーになっています。手番以外の人に読み上げてもらった上で「ダイスによる判定」や「選択」を迫られます。例えば、
「身なりの悪い老人がいます。その醜さは魔法の副作用によるものだろう。老人をどうしますか?」
→避ける。
→城でもてなす。
えー!どないしよー!と盛り上がります。また例えば、
「かつての恋人にたまたま出会った。声をかけた。ダイスで判定」
成功→
失敗→
という、どうでもいいようなクスッとしてしまうようなものまであり、内容は多岐に渡ります。頻繁に起こるこの「事件」、読み上げてもらうのも読み上げるのも毎回けっこう楽しみです。フレーバーテキストがフレーバーとして活きている、珍しい成功例だと思います。
このあたりについて、個人的な体験を話します。
パンデミックレガシーを遊んだことがある方ならわかると思いますが、あのゲームはけっこう序盤から「マジかよ!」と目をむくような展開でグイっとストーリーに引き込んできます。そのストーリーが最後までしっかり活きているからこそ、途中のテキストも読み飛ばすことなく熱中できました。ネタバレしててももう一度遊びたくなります。やはり傑作です。
そのあと街コロレガシーを遊びました。テキストははっきりいって読み飛ばしました。街コロだし子供向けだしまあこんなもんか、という感じではありましたが、最近遊んだイーオンズエンドレガシーのテキストも読み飛ばしました。ゲームの部分はおもしろいんだけど…、という残念さがありました。
アーカムホラー(第3版)も、すべてのシナリオをクリアするくらいには好きなゲームシステムでしたが、テキストはやはりそれほど活きてませんでした。
マイス&ミステイクスはもはや、テキストを読むのが苦行だったので途中で投げ出しました。
ゲームの面白さを増大させるテキストを書く、というのはかなり難しいお仕事です。翻訳であればなおさらだと思います。
オルトレーは、「城と領民のために駆け回っている」という設定のままに、レンジャー(プレイヤー)たちが日常の中を生きている感じがよく出ていて、テキストそのものを楽しみながら遊ぶことができます。もちろん、そのまま音読せず要約したりはしますが。子供のためにも。
こんなこともありました。「お葬式があるのでここは使えなくなりました。解決するためにはパンを持っていってあげてください」というトラブルが発生したあと、小2の娘はなぜかしきりに「お葬式行かなきゃ」と呟いていました。大人的には優先順位低いどころかまったく必要がないので無視を決め込んでいたのですが…。きっと何か心に引っかかるものがあったのでしょう。
この手のゲームと「奉行問題」を分けては語れませんが、家族でボードゲームを楽しんでいる方はきっと問題にならないでしょう。「どうしようかな〜」「こうした方がいいんじゃない?」という会話を楽しんでください。そもそも目標がはっきりしない手探り状態から始まるので、きっと同じ目線でわくわくできます。ある程度の誘導は起こると思いますが、むしろ、良い手をどんどん提案していかないとクリアできないくらいには難易度が高いです。失敗したらしたで、目標に向かって計画的にリプレイしよう!とモチベーションが上がります。
最後に注意点ですが、ルールブックの読み込みは少し時間がかかります。この手のゲームに慣れてないと理解しにくいかもしれません。慣れていても私のように、「年代記」の処理について「?」となる部分が出るかもしれません。一周したら「そういうことね、間違えてたわ」となりました。
楽しんでください!オルトレー!(こう言いたくなる気持ちも遊べばきっとわかっていただけるはず…!笑)
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