- 2人~4人
- 45分~60分
- 8歳~
- 2021年~
リスボン・トラム 28winterkoninkskeさんのレビュー
二人プレイ時の感想を書きます。
リスボントラム28は、リスボンの街で路面電車を走らせ、乗客を目的地に届けるタクシーゲームです。
プレイヤーには「チケット」と呼ばれる、赤、黄、緑、青の四色からなるランダムな手札が五枚渡されます。
このチケットを使いながら、手番で四つのアクションから二つ(重複可)を選んで実行する手番を順番に繰り返していくのが基本的な流れです。
アクションは
①手札からチケットを捨ててトラム(自分の電車コマ)を進める
②手札からチケットを捨てて停留所で客を乗せる
③目的地マスで乗客を降ろす
④手札からチケットを捨ててボーナススキルを解放する
の四つです。
二つのアクションが終わったら、山札からチケットを四枚引いて手番は終わりです。
客を乗せるには上手く手札のチケットの色が揃わなければいけないので、都合のいい客を乗せられる停留所を探します。
乗せた客にも色があるので、それが合う目的地も見定める必要があります。
移動にも乗車にも、多くのチケットが必要になるため、貯まった手札をどう使うかのマネジメントが要求されます。
更に、なかなか揃いにくい同色のカードを三枚使い、特別な停留所で強力なスキルを解放するアクションもあります。寄り道をして、貴重なチケットを使うだけあって、効果はとても大きく、これの取得にも悩みます。
そしてようやく乗客を目的地に降ろしても、得られる目的地カードには左右に四色のタグが付いており、次の目的地カードとタグの色が繋がるよう左右どちらかに上手く配置しなければ効率のいい得点とはなりません。
チケットカードの使い道のジレンマ、目的地の色合わせなど、ルール量が少ない中で多くの考えどころを用意した作品となっており、遊びやすくも苦しく、楽しい、といったプレイ感になっていると思います。
インタラクションはなかなか強く、まず目的地が被った時の早取りの焦燥感がずっとベースにあります。そしてトラムという現実に単線で走る車両の特徴が生きていて、進む先に他人のトラムがあると「押し出し」という効果が発生します。
このせいで、せっかく行き着いた目的地から追い出されて1アクションを無駄にしたり、同じ目的になってしまった場合などに出方をうかがう睨み合いが発生したりします。
さて、こうした苦しいマネジメント部分や強いインタラクションの特性だけを述べると、どうしても少し前のユーロゲームのように、対人要素を色濃く打ち出した作品群と似たプレイ感に思えますが、作家の求めているイメージは少し違うように感じました。
それを象徴するのが、「特にルール上の意味はないけど手打ちのベルが付属していること」です。
車両の押し出しが起きた時か、または乗客を乗せる時の特別なチャレンジを宣言する際にチーンと鳴らします。あるいは、特に意味もなく景気づけに鳴らしてもいいでしょう。
これが実質的に攻撃要素にも近い押し出しの展開に、いくらかパーティー的な「ご愛嬌」のような空気を醸し出しているように思います。
真剣に手札やボードと向き合うなかで、うっかり起きてしまうアクシデントのような出来事。同じ盤面を見て気の合う誰かと一緒に遊んでいる、その空気感を大切にしているんだよ。そんなメッセージのように感じました。
手描きで丸みのあるイラストの可愛らしさを見ても、やはり大らかに遊んでほしい意図を汲み取ることができますね。
実際遊んでみると、チケットの引きに左右される展開も少なくなかったので、やや運寄りの大雑把な部分もある事を理解してプレイした方が良いかも知れません。移動のコストが高いので、あまり動かず目の前の乗客や目的地に対応する良いチケットがたまたま運良く引ける方が、丁寧なマネジメントより有利だった、なんて状況もあるかと思います。
プレイ人数に関しては、やはりインタラクションの機能を考えれば三人以上で遊んだ方が賑やかなゲーム展開になると思います。
かと言って二人でも十分に遊びがいがあり、それなりに押し出しも起こるので違和感はありません。人数でダウンタイムも長くなるルールなので、三人ぐらいがちょうど良いのかなと思いました。
コンポーネントは、前述したように優しいタッチのイラストで埋め尽くされたメインボードのアートワークなどが、書き込みも細かくて素晴らしいです。遊んでみると見た目ほど見づらくもないし、ちょうど良い塩梅です。
木駒は原色のクラシックなミープルですが、トラム駒にはプリントがされていたり、最近のボドゲらしい雰囲気もあります。
何というか、それほど珍しいメカニクスも無いのに、全体的なディティールに触れて「好きだわこれ…」と声が漏れ出る作風と言いましょうか。ファミリー向け本格ボードゲームとしての役割をしっかり担うよう考え抜かれた良作と思います。
ややチケットや目的地の運に傾くゲーム性のため、ゲーマーには勧めにくい作風ではありますが、色んな世代の人が一緒に遊べるチャンスにはなると思います。
気になった方は、是非とも遊んでみて下さい。
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