- 2人~4人
- 30分~90分
- 12歳~
- 2011年~
ブルゴーニュ18toyaさんのレビュー
古くても良いものは良い!2011年作品ながらボードゲーム史に確実に名を刻むタイル配置の傑作!(ロングレビュー)
【評価9/10】中重量級・2~4人
ダイスアクション×タイル配置×エリア制覇×セットコレクション
「トラヤヌス」「ブリュージュ」「ノートルダム」「アメリゴ」など,傑作を次々に生み出しているシュテファン・フェルトの,恐らく一番の代表作がこの「ブルゴーニュの城」です。
発表は10年前の2011年と少し古めではありますが,Board Game Geek(BGG)でも15位(2021/9現在)と非常に高い評価を受けており,国内では日本語版はまだ発売されていないものの,日本語訳が付いているものが流通しています。
コンポーネントには基本,言語依存がないため,ルールさえ日本語訳されていれば遊べるのも心強いところ。更にスマホやタブレットでも日本語で遊べるアプリがある上,最近はボードゲームアリーナ(BGA)にも追加されたため,近年ではだいぶん遊びやすくなっていると思います。かくいう私もアプリとBGAで遊んでいるため,今回写真はありません。ご了承ください。
さて,今回はブルゴーニュがなぜそんなに高い評価を受けているのか,そしてなぜ私自身も凄く楽しいのか 笑 を,私なりに考えてみたいと思います。
<ブルゴーニュの魅力>
1)運と技術の絶妙なバランス
まず,ブルゴーニュのテーマはフランスのロワール河畔の一領主となり,自分の領地を発展させましょうというもの。
各プレイヤーにはプレイヤーボード,というか地図が配られます。その地図の中に,スタート時点ではぽつんと城一軒が建っている。ここからゲームスタートです。(そんな領土あるんかい!というツッコミは却下です 笑)
このゲームではダイスの目に応じて
・共通ボードから自分の地図上に置けるタイルを確保する
・確保したタイルを指定色の場所に置く
・商品を交易で売却する
といったアクションができます。
商品の売却は多少のボーナス点にはなりますが,勝利に大きく繋がるのは自分の地図を充実させる事で,そのためにタイルを取り,自分の地図に配置していく行動がメインになる訳ですが。まず一番取りたい目標のタイルが共通ボードにあったとしても,ダイス運に翻弄されうまく取れない事があります。
また,欲しいタイルを確保してあとは地図上に置くだけなのに,うまく置けるダイス目が出ない事もあります。
更に,共通ボードに置かれるタイルも,同種は全て同じタイルのものもあれば(城,船,鉱山),種類は同じでもタイルの中身がさまざまなものもあり(知識,施設,家畜),これらはシャッフルされてランダムに共通ボードに現れるため,猛烈に欲しい!という場合もあれば,んー微妙!という場合もあります。
ただし,これらの運に左右される面もありながら,ブルゴーニュでは「たまたま勝つ」という事は難しいだろうというテクニカルな面もあります。
というのも,6種のタイルはそれぞれに強みと特徴を持っているため,どういう場面で何を優先して取るべきか,置くべきか,という戦略がベースに必要だからです。
その戦略がある上で,なお運に翻弄される。翻弄されながらも,思っていたダイス目ではない時こそ戦略眼の真価が問われる。
また,運を制御する方法として「労働者」の存在があります。労働者を1使うごとにダイス目を1増減して使える。このダイス目ではどうしても駄目だ!という時でも多少運命をねじ曲げる事ができます。
更に手持ちの労働者を使っても状況を改善できない,あるいは労働者を使い果たしてしまったため「このダイス目では出来る事が何もない」となっても
・ダイス1つを労働者2人と交換する。ダイス目は何でも良い
という行動ができます。
ダイス運に翻弄されるゲームでありながらも「何もできない」局面は無いようにデザインされている。これは非常に素晴らしいところです。
余談になりますが,ブルゴーニュをプレイした時,何かとプレイ感が似ているような…と思ったら,「ロレンツォ・イル・マニーフィコ」でした。
あちらは共通ダイスでこちらは自分の振ったダイスという違いもありますし,その他にも諸々の違いはあるのですが,
「運命に翻弄されながらも,抗い,乗り切り,むしろ逆風を利用しようとしさえする」「ダイス目という運命を,労働者というギミックを使って少しだけねじ曲げる事ができる」という「ゲームの根っこ」というか「面白さの根幹」が共通していると思いました。
そんな訳で,このゲームは運の荒波に揉まれながらいかにそれを制御しうるか,というバランスが非常に素晴らしいゲームだと思います。
2)シンプルな行動と奥深い戦略性
上に書いたように,プレイヤーがダイスを使ってできる行動はたった4つ。
タイルを取る・取ったタイルを自分の地図に置く・交易で商品を売る・労働者を取るの4種類。
ここに,サイコロを使わずお金を使う行動として,共通ボードの市場からタイルを買う,というものがありますが,この5つでプレイヤーができる行動は全てです。
この,たった5種類の行動で深みが生まれるのだから,ゲームデザイナーという人たちには本当に感嘆するばかりです。
自分の地図上にタイルを配置するルールも以下の3つしかありません。
a)タイルと同じ色の場所に配置
b)既に置かれているタイルと接している場所(最初はスタートの城と隣接する場所)に配置
c)置きたい場所が指定するダイス目と同じダイスを使用することで配置完了
タイルは配置した時にそれぞれ効果を発揮します。
船は自分の手番順を早めることができ,また商品を自分の手元に入荷できる。
城は追加で何の目のダイスとしてでも行動できる。タイルを取るも良し,置くも良し,商品を売却するも良し。
鉱山は毎フェーズの最後に1鉱山につき1金得る事ができるようになる(定期収入です)。
知識はさまざまな永続効果を得る事ができる。
施設は即時効果で共通ボードに並んでいるタイルを取ってこれたり,お金や使用人を即得たり,勝利点を得たり出来る。ただし同一の施設は一繋がりの領地に建てる事はできない。
家畜は,一繋がりの領地に同じ種類の家畜をどんどん置いていく事で勝利点をどんどん累計できる。
これらの効果はどれも魅力的です。
一方,「一繋がりの領地」を全部タイルで埋めた時には完成ボーナスとして勝利点を得る事ができます。しかも早く完成させればさせるほど,高い勝利点を得られる。
更には自分の地図の中に点在する同色の「一繋がりの領地」を全て埋める事でトップと2位までは勝利点を貰える。
従って,勝利点のためには全色に少しずつ手を出して全部完成せず中途半端,となるよりはある程度狙いを絞って一繋がりを少しでも多く完成させるというのが戦略の基本となります。
一繋がりの領地は,小さいものなら1つタイルを置けば完成するものもありますし,大きいものだと5、6個タイルを置かなければならないようなものもある。序盤は大きいものに手を付けてもなかなか完成まで持っていけないため,小さい一繋がりの方が狙い目です。
ただし,完成した時のボーナスは,早いほど高い勝利点がもらえるものと,広いほど高い勝利点がもらえるものの合算です。そのため,序盤は小さな場所を埋めながら,どこかのタイミングで広い一繋がりにも手を出す必要があるかもしれない。
ここら辺が戦略が多様かつ奥深くなる源泉です。
更に言えば,プレイヤーの手持ち地図はいくつかの種類があり,それぞれがスタートの城の位置も違えば各色の「一繋がり」の構成も異なる。
どういう順番で一繋がりを埋めていくか,大まかな戦略を地図を見ながら考え。
「あのタイル置いてあの効果使いたいけど,このタイルを置けば一繋がり完成ボーナスが貰えるし…うーんどっちを優先させるべきなんだ!」と悩みながら。
他人の選択とダイスという名の運命に翻弄される 笑
そしてそれを制御した時には大きな満足感が得られる事でしょう。
制御できなかった時?次こそは!とリプレイすれば良いですよね 笑
3)高いリプレイ性
共通ボードに出てくるタイルはシャッフルされてランダム。
お金で買える市場に出てくるタイルもランダム。
自分のダイス目もランダム。
この時点で勝利を目指す道のりは毎回変わります。また,同じ地図の中でもスタートの城の位置を4つの中から自由に選べる上に配られる自分用地図も種類がたくさんある。
当然リプレイ性が低いわけがない。リプレイお化けと言っても良いでしょう 笑
リプレイ性に更に輪をかけるのが多彩な知識タイルと施設タイル。
知識タイルは永続効果をもたらすものですが,ユニークタイルで同じ種類のものが一つもないので,「今回アイツが使ってたあのタイル良さそうだったなー次は俺も使ってみたいな」というモチベーションに繋がります。
また,施設タイルも複数の種類があり,その時々の戦略によって合う施設と合わない施設があります。つまり,違う戦略を取れば違う種類の施設を使いたくなるということ。
このように,ブルゴ-ニュは繰り返し遊べるように周到に設計されデザインされており,派手な効果はないものの逆に「派手疲れ」も起こしづらく,基本ルールがシンプルに構成されているがゆえに噛めば噛むほど味が出るスルメのように何度も楽しめるゲームになっています。
<欠点>
上記ではブルゴーニュの長所を説明してきましたが,短所がない訳ではありません。
1)施設・知識の効果が多彩すぎる
これは長所でもある反面短所でもあるのですが,施設や知識の効果が多彩なため,いまだに効果を勘違いしたりします 笑
これは高いリプレイ性をもたらしてくれる元なので修正して欲しいとかそういう事ではありません。ただ,慣れた人でもちょっとプレイから離れると「どうだっけ?」となりがちでしょうし,初心者にとっては敷居が高くなる一因であり,インストが難しくなる原因でもあると思います。
2)ヘックスタイル(六角形タイル)の敷居の高さ
見た目の話になるのですが,ヘックスタイルは基本ウォーシミュレーションでよく使われるものです。
このゲームを最初に見た時に,私は見かけだけでNFM(not for me:私向きでは無い)と思ったのですが,プレイしてみると全くそんな事はありませんでした。戦闘も全くありませんしね。
ただ,ヘックスタイルというだけでNFMという方は少なくないのではないかと勝手に想像します。このレビューを読んでいただいた方は,そうした先入観は誤解だと理解してくれるでしょうが,ヘックスというだけで敷居は上がってしまう面は否めないのではないでしょうか。
3)日本語版が出ていない
これは個人力ではどうしようもない部分です。基本的にはタイルを初めとしたコンポーネントに言語依存は一切無く,ルールとタイル効果さえ日本語化されていれば十分遊べるのですが,日本語版が出ていないという時点で敷居が高いと感じる人も少なくないでしょう。
また流通量から考えても日本語版が出ていない=国内での入手数は限られる という事になります。海外では大量に流通していると思われるためAmazon等を活用すれば入手が困難という訳では無いでしょうが,見かけた時に入手しておくか,アプリやBGAで遊ぶのが良いかもしれません。
4)逆転は少し難しい
このゲームは基本,積み上げた者が勝つデザインとなっており,システムで担保された逆転性はありません(戦略的に終盤逆転を目指した盤面を作ってるなら話は別ですが)。戦略の重要性が高いため,苦手な人はとことん勝てないかもしれません。
<まとめ>
以上,ブルゴーニュのレビューをお届けしました。
見た目や入手性の難点,多彩なタイル効果,奥深さゆえ戦略が非常に重要になる点などから決して万人向けとは言えませんが,一度ハマれば高いリプレイ性と戦略性の奥深さにより長く楽しめるゲームになるでしょう。
このレビューを見て興味を持たれた方は,まずBGAやアプリなどの入りやすいあたりからでも体験して貰えればと思います。
写真もないこんな長文を最後までお読みいただき本当にありがとうございました!
皆様の良きボドゲライフに貢献できれば幸いです^^
R3.9.23追記:あまりに面白かったので,こちらのオンラインショップでブルゴーニュ・プラスを見た瞬間,ポチる以外の選択肢は私にはありませんでした!秒殺でポチ!さらにその勢いのままトスカーナもポチ! 笑
両作とも遊べたらレビューしたいと思います^ ^
- 527興味あり
- 1382経験あり
- 460お気に入り
- 686持ってる
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