- 1人~4人
- 60分~90分
- 10歳~
- 2018年~
18リリパットmaroさんのレビュー
これまでボードゲームをカードゲーム化したもので、元の作品を超えるほどに成功したのはあっただろうか?
BGGで「card game」でサーチすると夥しい数の○○,the card gameがヒットする。また、同じく、BGGのリストを1位から降順に見ていく。ブルゴーニュ、プエルトリコ、ドミナントスピーシーズ、ケイラス、パンデミック、ロレンツォ、ゲームオブスローンズ、そして1830・・・・・これら以外の有名なゲームにもカード版が存在するが、どれもいまいちぱっとしない。中には明らかにもともと持っている良さを削がれてしまっているのもあり、移植の難しさを感じる。例外的にはアーカムホラーなどはカードゲームが上位であるし、サンファン(プエルトリコ)なども健闘している方ではあるが・・・・・ やはり、これは?!というものを探すのは困難なのだろうか。
さて、18リリパットは18xxをカードゲーム化したものとされている。一般的な評価でいえば、これも原作を凌駕しているとは言い難い。そもそもこれから述べるように、ゲームの勘所自体がかなり異なる。しかしながら本作の場合は元になった題材が、通常の人ではまずプレイしない長時間ゲームというところからして他の例とは少しばかり意味合いが異なるとも思うのだ。
プレイヤーは開始時に、6つ用意されている鉄道会社のうち1つの筆頭株主(理事長)となっている。筆頭株主はその会社の経営権をすべて握っており、線路敷設、駅の配置、列車の購入などをその会社の予算を使用して行い、鉄道網の発展を目指す。
なお、このゲームではプレイヤーの資産は会社のそれとは分離して管理されており、目的はプレイヤー資産をできるだけ増やすことである。プレイヤーの資産の使い道としては鉄道会社の株式の購入がある。発展している会社の株式を保有することで、配当を得て個人資産を増やすことができる。
元となる18xxではこの株式要素に関するインタラクションが強く、株価操作、そして経営権の奪取などをめぐって争いが生じるのが常であった。反面、リリパットではこれらの株についてのいざこざはすっぱりとカットされている。株価は基本的に暴落しないようにされ、会社の筆頭株主も他のプレイヤーに移動することはない。いってみれば資金調達のための手段としての株要素に限定されたシステムとなっているといえる(後で述べるが追加で1回のみの会社設立もある)。
これは18xx的というよりむしろcube railsと称されるシカゴエクスプレスやアメリカンレイルズ、アイリッシュゲージなどに近い概念なのかも知れない(ただしcube railsでは株式取得が勝利点に直結していることも多い)。
その代わりといっては何だが、ちまちました路線マップ拡大(線路カードを場にプレースすることで作られる)と、これをめぐるインタラクションはかなり熾烈である。エイジオブスチーム(あるいはスチーム)のマッピングをぎゅっと圧縮したような様相でゲームが進んでいく。1つ1つの配置がかなり重大な影響を及ぼす。
アクション自体はワーカープレースメントというか、場にあるアクションカードの選択によって行われる。それに伴いラウンドの進行も、アクション選択/実行→利益・配当の獲得→次ラウンドの準備、と相応にシンプルである。
18xxと比べると様々な点で大幅な制限がかかっており、逸脱的なプレイを極力抑える方向で調整されていることが分かる。株主に関するところもそうであるが、所持する列車数、会社数なども上限が低く、とくに会社は1プレイヤーについて2つまでの経営とされている。これは裏を返せば、序盤はいかに早く資金を集めて2つ目の会社の経営権を握るかが全てのプレイヤーの共通目標になっているとも言えるわけで、多様性が失われた分プレイの指針は立てやすいように組み立てられているように感じる。
というわけで、原作に比べてプレイ時間は短縮されているが自由度や奥深さもスポイルされているという、痛し痒しの内容である。だが18xx未経験のプレイヤーを対象とするならば、この欠点は見ないですむところだろう。
公称60-90分となっているがその2倍は見たほうが良いと思われる。人数については、多人数戦での混沌としたマップが個人的には好みであるが、2人でのすっきりとした(また、常識的な範囲内の時間で終わる)プレイ感も悪くはない。ただ2人ではリプレイ性にはやや難があると感じる。繰り返し遊ぶとなるとやはり3-4人は欲しいところである。2人戦でもう少し路線拡張部分のインタラクションを増すことのできるバリアントが思いつけばよいのだが。
最大の問題は2-3時間の重量級を何かプレイしようとしたときに、このリリパットが候補として挙がってくるかということだ。時間対効果を楽しさという観点で評価すると、鉄道ゲームに限定したとしてもかなり他の作品に水をあけられている感がぬぐえない。あくまで18xx系の代用品、もっといえばそれらの導入ゲーム的な位置づけとなってしまうのは仕方のないところだろうか・・・
と、冒頭ではずいぶん威勢がよかったものの、だんだんネガティブな方向に寄ってきてしまった。しかしこれは本意とするところではない。例えば国内でも有数の競技人口を誇るテニスで例えてみる。
テニスをプレイする人すべてがシングルスでのフルセットの戦いを目指しているわけではない。むしろその方が少数派だろう。5-6時間クラスのボードゲームも同様である。
ましてや18xx系はプレイ時間が長いうえに特有の厳しさもあり、初心者(ボドゲ初心者ではなく、18xx系初心者である)には荷が重い。
選択肢は多いに越したことがない。もし自分が1830の短縮版をデザインするとしたらどうするか?
その答えがここにあった。
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