- 1人~5人
- 120分~180分
- 14歳~
- 2025年~
ネメシス:リタリエイションツチノコ360さんのレビュー
Nemesis: Retaliation のテスト版のレビューになります。レビューした内容にたいして完成版では変更される可能性がありますので、その点ご承知の上で読んでください。
この記事ではネメシスシリーズの特徴である、半協力プレイのシステムにフォーカスしてレビューします。
また、読む人によってはネタバレと感じるかもしれない内容が含まれますので、ネタバレされるのが嫌な方はこのレビューは読まないようにしてください。
元祖ネメシスの良い点として、ゲーム開始直後にプレイヤー達がまずやるべき当面のゴールが明確になっている、ということがあります。つまり、エンジンを修理する、そして船の目的地を再設定する、という2つのゴールです。そしてその2つはマップの両端に配置されているので、自然とみんなで手分けして行うことになり、プレイヤー同士で協力関係を持ちつつも、分散して行動することになっていきます。最初はそうやってみんなで共通のゴールを目指しますが、ゲームが進行するに従ってそれぞれの目的カードが選択/決定されて、ゲームは協力から半協力へとシフトしていきます。
続編であるロックダウンでも、『まずは電力を回復する』という作業が、ゲーム開始直後のプレイヤー全員の利益に繋がる共通の第一目標にはなりますが、元祖ネメシスに比べるとプレイヤー間での協力関係は希薄になりがちです。
そして Retaliation では、プレイヤー同士の協力と分散(半協力性)が促進される新しい仕組みが複数用意されています。
まず、OXYGEN(酸素)です。
ゲームの舞台となる『施設』の内部には酸素がありますが、ひどく汚染されています。そのため生命維持システムが作動していなければ、施設内の酸素は利用することができません。生命維持システムの制御室を見つけて酸素を確保しなければなりません。そうしなければ、ターン毎に装備した酸素が失われていき、プレイヤー達はすぐに死んでしまいます。
できるだけ迅速に生命維持システムの制御室をみつけるために、プレイヤー達は手分けして施設内を探索することになります。そうさせることで、プレイヤー間の共通の目標や協力関係を生みだし、同時に分散して行動することを促します。非常によくできたルールだと思います。
次の要素は、Reinforced Corridor(通路の強化)です。
通路を強化すると、その通路に割り振られる番号(数字)が『ゼロ』になります。騒音のダイスには1~4の数字しかないので、強化された通路は騒音ロールによる影響を受けなくなります。
嗚呼、これまで幾多のネメシスプレイヤー達を苦しめてきた騒音ロールから解放される時がついに来たのです!
この強化された通路は、特に施設からの脱出に関する部屋の周辺で効果的です。施設から脱出する際の騒音ロールの成功率を劇的にあげることができます。
通路の強化はすべてのキャラクターが行うことができますが、2人以上が同じ部屋にいることが条件になります。そのため、このルールもプレイヤー間の協力を促すことになります。
最後に紹介するのは、Mission Task(ミッションタスク) です。
Retaliation では、これまでのネメシスと同様に、ゲーム開始時に2枚の目的カードが各プレイヤーに配られます。そしてその他に全員に公開されるミッションタスクのカードが1枚、ランダムに選択されます。
目的カードには Personal Objective と Mission Objective の2種類があり、前者は過去作と同様のものですが、後者は全プレイヤーに公開されているミッションタスクに紐づいた内容になっています。ほとんどの場合、Mission Objective では単純に『ミッションタスクを達成せよ』という内容が課せられます。
つまり、Retaliationで追加されたミッションタスクは、元祖ネメシスのいい点であるプレイヤー共通のゴールを設けて協力を促す効果を持っています。またさらに、ゲーム毎に異なるゴールが設定されるので、毎回違うゲームシナリオを提示するという新しい効果ももたらします。
ただし、プレイヤー全員が同じゴールを共有してしまうと、ただの協力ゲームになってしまいます。ネメシスシリーズの面白さの多くは、半協力ゲームであることから生まれます。そのため、ミッションタスクの達成を阻むことをゴールとする目的カードも用意することで、意図的に海兵隊チームの造反者をゲーム内に登場させて、ネメシスの特徴である半協力性を維持しています。
ここでひとつ問題と思われる点があります。単なる協力ゲームにしないために、Retaliation では2枚の目的カードのうち1枚を強制的に選択させられる場合があります。これは言い換えれば、あるプレイヤーが他の全員の敵となることをゲームによって強要させられていることを意味します。
ネメシスでは、最初に配られた2枚の目的カードのうちからどちらかをプレイヤー自らが選び、それを自分自身の『選択』として各プレイヤーがそのロールをプレイする、というのがゲームの面白さの一端を担っているのではないかと私は思います。場合によってはほとんど選択の余地がない偏ったカードが配られる場合もありますが、そんな手札の悪さから渋々1枚を選ぶようなケースも含めて、1枚の目的を自分で選択してそれを演じる、という行為が楽しいのではないでしょうか。
もちろん、Retaliation での強制的な悪役への配役が気にならずに、ノリノリで暗躍することを楽しめる人もいるでしょう。協力関係にあると思っていたプレイヤーの中にちょっとヤベー目的を持った奴がまぎれていた方がゲームが盛り上がる、というのも、過去作のネメシスでの経験からも確かにそうだと思います。
しかし、プレイヤーによっては『ゲームを盛り上げるための舞台装置の一部』として、ゲーム開始時点から悪役として勝ち目の薄い1対多数の圧倒的に不利な状況を強いられることを楽しめない人もいるのではないかと危惧されます。少なくとも、ネメシスシリーズを初めて遊ぶ人が造反者にされてしまったら、ちゃんと楽しめないのではないかと心配です。
以上、まだテスト版ということで、気になる点もありましたが、全体としてはとても面白かったです。
ネメシスシリーズが好きな方は遊んでみて間違いないと思います。
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