- 2人~4人
- 60分~90分
- 14歳~
- 2016年~
イニシュさたもとさんのレビュー
どんなゲーム?
いわゆる陣取りゲームになります。ゲーム盤は複数のタイルで構成されていて、自分の駒をそのタイルに置くことが勝利条件とかかわるゲームと言うことですね。(エルグランデや、バロニィなどと基本的なシステムは非常に似ています)
以下でも詳細を説明しますが、手番の行動がドラフトで配分されるカード依存なところが特徴で、要素として、相手の駒を直接取り除いたり、戦闘の要素があったりと直接攻撃な色もあるゲームです。(しかし、こういう系のゲームが嫌いな人もやってみてねという紹介)
勝利条件は、ある一定上の枚数のタイルに駒を置いているとか、自分の駒があるタイルに聖域という駒いくつ以上合計で存在するとか、自分が多数を取っているタイルにある敵の駒の合計がいくつ以上みたいな3条件をいくつか満たした人が勝利(実際はちょっと細かいルールが入りますが割愛します)
特徴は?
陣取りゲームでは当然、①自分の駒を増やす②自分の駒を移動させる③相手の駒を減らすといったようなことをゲーム中に行うわけですが、このInisではこの行動を全てカードの使用で行います。
そして、それらカードは基本的に毎ターンドラフトを行って、それぞれのプレイヤーに分配されます。ただし、毎ラウンド使われるカードは共通です。基本的なカードが10くらいあって、そのカード群を毎ラウンド配り直してドラフトを行うといった感じになります。
このドラフトは少し変わっていて、基本的なドラフトって、たとえば、4枚のカードをドラフトすると、最初は4枚から1枚選んで、時計回りに次の人へ全員回す、次に3枚から1枚選んで…を繰り返してといった手順で行いますよね。このゲームでは、最初は4枚から1枚選んで、次に回すといった基本は変わらないのですが、次の時は、さっき取ったカードを合わせて、4枚から2枚取る、次はさっき取った2枚のカードを回ってきた2枚と合わせて、その中から3枚取る…といったドラフトになります。このドラフト方式では一応途中の方向転換が可能です。普通のドラフトよりも、方向性は立てやすいと思います。(実際は有効な場面は少ないかなというのが、プレイした感想ですが)
この基本的なカードの存在はこのゲームをかなりプレイしやすくしていると思います。
普通のこういった直接攻撃ありの陣取りゲームって、駒増やしたりとか相手の陣地攻めたりというのが、基本的なアクションとして毎ターンみんな選べるじゃないですか、そうすると余剰駒持った人は、他の人を攻めないと損だから、ドンパチやるじゃないですか、その理不尽感がやだなという人も多いと思うんですよ。
このゲームだとドラフトの結果として、基本的なアクションが出来ない!みたいなことが起きるんですよね。駒たくさん持ってて、他の所を攻めたいのに攻めるアクションカードがドラフトで回ってこないと攻められないという。なので、やられそう!と思ってもやられないターンとかが出てきます。なので、この手のゲームには珍しく緻密なタイミングのゲームという感じではないんですよね。それよりもドラフトで上手くアクションを組み立てていく楽しさみたいな方が上手く出てる。また、(後は戦闘での勝利があんまりおいしくありません。このゲーム、勝利点とかないし)さらに、次で説明する地形カードの存在が、このゲームの力点を戦闘での勝利から駒の多さ(損耗の少なさ)に上手にずらしてる感じがするんですよね。
先程、わざわざ基本的なカードと書いた通り、カードには地形に関連したカード、カードの効果で手に入れる強力なカード(エピックカード)と2種類のドラフトしないカードがあります。
地形に関連したカードは、毎ラウンドの終わりにタイルの上に一番多く駒を置いているプレイヤーが対応したカードを受け取る形になります。陣取りの小さなご褒美といった感じですね。
カードの効果で手に入る強力なカード(エピックカード)は、対応した基本のカードをアクションを使ってプレイすることで手に入ります。このカードにはケルト神話の特徴的な出来事が描かれており、基本的に前述の2種類のカードよりも効果が大きいです。このカードは山札からランダムに引いてくるため、このゲームにおける逆転やドラマを作り出す役割を果たしています。
また、このゲームでは、カードの保持数=アクション回数となっているため、ゲームが進むとアクション数で差がつきます。ドラフトでは同じ枚数のカードを手に入れるので、最初は平等な回数のアクションを行うのですが、ゲームが進んでくると、各タイルで多数派を獲得しているかによってプレイヤー間で差がついてくるので、アクション数の多いプレイヤーは後出しで行動ができるようになってくるわけですね。ここらへんが陣取りの要素とご褒美が上手くかみ合っていて面白い所です。
カードは大判で、綺麗なイラストが結構な面積で書かれています。さらに、全て違ったイラストになっているので、アートワークの好きな人は満足感が高いと思います。私はこの手のイラストが嫌いではないので、かなり好感触なところでした。(同じホビージャパンから出ているブルームーンがレジェンドという再販版になって絵が小さく切り取られたがっかり感とは対照的でした)
感想
ルールの細かいところは説明しませんでしたが、主要な特徴は以上です。このゲームの魅力は狭いプール(カード群)で繰り返すカードドラフトの面白さと、対人攻撃ありの陣取りゲームを組み合わせた極めてミニマルな構成にあります。基本的なアクションがままならないお陰で、余計に駒1つ1つの大切さや、どういったところに陣を張って、どうやって勝利条件を満たしていくのかに集中できます。逆に、こういったゲームをやりこんでいて、人と人の駆け引きみたいなものを一番に求める人には向かないのかもしれません。私はドロドロした駆け引きくらいまで行ったディープなのは苦手なので、このドラフトで薄めたくらいが、ちょうどよく楽しく遊べています。日本語版が出るようなので、ぜひ多くの人にやってもらいたい作品です。
カードやタイル、駒なんかは結構こだわっていて、特にタイルはびっくりするほど大きく立派です。また、駒もなんの意味もなく3種類の形があります。前述のカードと合わせて、コンポーネントはかなりの満足感があるはずです。
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