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  • 1人~4人
  • 120分前後
  • 12歳~
  • 2021年~

美徳winterkoninkskeさんのレビュー

449名
7名
0
約2年前

二人プレイ時の感想を書きます。

美徳は、妖怪たちの住まう森で春夏秋冬のステップを4年(4ラウンド)重ね、複雑多様なアクションを行いながら美徳点(勝利点)を稼ぎ、次期森の大精霊となるべく奔走する重量級ゲームです。

まず見ていただきたいのが、ゲーム全体にこれでもかと描き込まれたアートワークの緻密さと独創性です。

舞台は「欧州人のイメージする日本の妖怪奇譚」であり、何やら見たことのある奇妙な妖怪たちや、逆に日本では見られない独特の色遣いなどが非常に特徴的です。

作家はジブリ作品に大いに影響を受けていることを公言しており、そういったジャパンリスペクトが随所に感じられるデザインとなっているため、こと日本人には特別に映るビジュアルになっていると思います。

そしてゲーム性は、見た通りメインボードと個人ボードの盤面にびっしりと張り巡らされたスペースを全て使う、複雑で体力を要する重量級ゲームに仕上がっています。幾つかの独立した要素が所々で絡み合い、その多大な情報をコントロールしながら目標へ向かっていく…相当なやり応えを感じることが出来るゲームです。

しかしプレイヤーに与えられたアクションはたったの3種類。1アクションが色んな要素を同時に起動するので、うまく収束するように複数の目標を並行して進めて行きましょうね、みたいなプレイが要求されます。

インストだけで1時間ちょっとかかる膨大なルールをここで説明することは出来ないので、まずは3種類のアクションについて簡単に説明します。

①カードをプレイ

手札のカードを一枚、個人ボードの三つのスペースのうちひとつにセットします。

まずセットしたカードに書かれたアクションを実行。実行後はセットしたスペースにあるダイスをアクティブにして一手番です。

次に記すダイスプレイスメントのアクションは、先にカードをセットしてダイスをアクティブにしなければ実行できません。

②ダイスプレイスメント

アクティブになっているダイスを、メインボードの空いているいずれかのアクションスペースに置きます。

置かれたスペースのアクションを実行したら一手番です。

③ダイスで川を渡る

ダイスプレイスメントでアクションスペースに置かれたダイスを、メインボード上で川の絵で区切られた特別なアクションスペースに移動させ、移動先のアクションを実行して一手番です。

つまり1ラウンドでカードセット3回、ダイスプレイスメント3回、川渡り3回の、最大で9回のアクションを行うことができ、全てのプレイヤーが可能なアクションを終えたら次のラウンドの準備へ移ります。

三つのアクションの概要はこれだけです。

ただしダイスプレイスメントと川渡りのスペースは早取りになっているので、なるべく早く実行しなければ埋まってしまう。

それなのに、ダイスをアクティブにするためにはまずカードをプレイしなければいけない。

しかもカードはデッキ構築の要素を含んでいて、より強いカードを手に入れることで1アクションがかなり強化されます。

じゃあ強いカードを先に手に入れよう、となりますが、これを得るには川を渡らなければならない。川を渡るにはダイスプレイスメントをして…と、優先順位を悩ませる、たらい回しアクションが仕掛けられています。

ダイスは特定の資源を使うと目が大きくなり、目が大きいほどアクションが強くなります。しかし川を渡るとダイスの目が減ってしまいます。かと言って渋っていると他のプレイヤーに川を渡られてしまい、実質的に1アクション少なくなる、なんて事態になりかねません。

この辺の、アクション順とダイス目のジレンマが根幹のメカニクスになっているのかな、と思います。

後半になるにつれ同時に行えるアクションが増えてくるので、ダイスを一個置くだけで3つくらい処理を行うことになったり。一手の比重が増えていく悩ましさは、プレイヤーを思考の渦に巻き込んで行くでしょう。

他にも自分でカードを取って道を作ってから進むすごろくとか、上下合わせると強いけど一個ずつ取らされるタイルとか、他人に使わせると得する建築物とか、二つ条件を満たさないと発動しないセットコレクションとか、とにかく要素が多いです。デッキ構築なので圧縮するためにディスカードできるんですが、捨てたカードから勝利点目標が貰えるうえにそもそも強いカードは捨てたくない、とまた悩むとか。

これらを進めるのに有利になるよう、手札強化やダイス目を上げることが基本であり、今の目的と合致したアクションを見極めていく…重たいけれど、終盤に1アクションで三つくらいいっぺんに条件達成できた時なんかは、かなりの爽快感が得られます。

インタラクションはダイス置き場の取り合いだけで十分といった感じで、「そこダイス置きたいから早く川渡って!」とか「川渡ってる間にダイス置けなくなった…」なんてやりとりをちょいちょい挟むので、そのもどかしさの中でソロプレイ感のある膨大な自陣の処理を黙々とこなしていく…みたいなイメージでしょうか。

ダウンタイムも決して少なくはないので、3人くらいがベストなのかな?とも思います。ただ2、3、4人時で、ダブルレイヤーのメインボードの窪み数箇所に、その人数専用の小型ボードを嵌め込むというこだわりよう(二人用に至ってはボードの裏面を使う)なので、プレイ人数によるバランス調整は相当しっかりしています。時間にさえ都合がつけば、2〜4人全てがベスト人数、と言えるかも知れません。

ソロプレイモードもありますが、今回は割愛させていただきます。


これだけ要素が多い割には、意外と見通しが悪くないのも良い所です。

無理そうだな〜と思ったら終盤の強アクション打ったら割とできちゃった、みたいな目標も多いので、苦しくはないです。基本はどんなアクションでもポジティブに拡大していくので、その重ね方が上手かったプレイヤーが勝つし、何度も遊ぶことで上達して点数が伸びていくことも楽しめる作品かと思います。

あと言語依存が無いのも一つの強みですね。

これだけの超重量級で、テキストを読み込まずに色々アクションできるのはセールスポイントだと思うので、ここに記しておきます。

コンポーネントは物凄い物量です。まず箱が重い。

巨大な二層ボード、膨大な量の木駒、カード、タイル…オリジナル形状/プリントの木駒も多く、やはりアートワークに相当な時間と金をかけた事が分かる内容物は、とても豪華に映ります。

定価で一万円を超える作品ですが、蓋を開けるとこりゃその額になるわって納得できるボリュームなので、所持しているだけでもなかなかの幸福感があります。


日本人には馴染み深いテーマを扱いつつ、ユーロゲームらしい色鮮やかで繊細な美術やシステムに浸ることのできる、非常に個性的な作品です。

わちゃわちゃして複雑だけど、もう一回!次はもっと点が伸ばせるはず!となる、いわゆるスルメゲーなので、腕に覚えのある方は是非とも挑戦してみて下さい。

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