- 2人~4人
- 60分~90分
- 14歳~
- 2016年~
IKI 江戸職人物語リーゼンドルフさんのレビュー
ドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされ、日本人がデザインしたものを海外が製品化して逆輸入された作品。過去にも一応例はある。
江戸時代の日本橋の界隈を舞台にし、プレイヤーはどこぞの若旦那となって人を雇い日本橋の大通りで働かせ卒業まで導くのが目的となっている。
現代人、とりわけこれを遊ばれた諸外国の方には、わかんないし、ピンとこないところがあると思う。
このゲームのタイトルであるIKIは日本語で「粋」と書く。
ウィキペティアによると・・・
「いき」は、単純美への志向であり、「庶民の生活」から生まれてきた美意識である。また、「いき」は親しみやすく明快で、意味は拡大されているが、現在の日常生活でも広く使われる言葉である。
まぁ・・・ざっくりとはしている。
つまり当時の江戸町人に親しまれる人物になることが目的なのだろう・・・
ちなみにこのゲームの勝利点は「いきてん」である。
ではその若旦那が(このゲームでは親方となっている)日本橋界隈でどうやって人々から「粋だねぇ~」と言われるようになるのかをざっくりと紹介します。
日本橋界隈の箱絵で、おそらく中央の人物がプレイヤーなのだろう。
ちなみに箱の中もデザインされている。
それでは四人用で一人分のコンポーネントを展開してみました。裏面は二人用のボードになっています。
このゲームは1月から12月と正月を含めた13ターンで行います。3ラウンドごとに季節が変わりカードやトトークン類が入れ替わります。
まずこちらのボードに自分のいきざまコマを置いていき、手番順と親方ゴマを進む歩数を決めていきます。左であればあるほど先手が打てます。
そしてこのあと手番順に雇用か給金がもらえるのですが、一番左所に置くと、この雇用とか給金ができなくなりますが、1文をもらい1~4歩の間好きな歩数が選べます。
雇用と給金
給金から先に説明すると、雇用しなかったり、この後紹介する町人ゴマがないと奉行所からなぜか4文支給されます。
雇用は、こちらの職業カードから選びます。
カードの左上に書かれた数値分の文を支払い空いている長屋に店を構えます。その時に自分の町民ゴマをカードの右側の一番下のマスに置いておきます。こうして蕎麦屋さんが店を構えることになりました。
ちなみに左の空き家は右下に+2と書かれていますが、そこは角部屋と呼ばれている場所でカードを配置するだけでさらに2文支払うことになります。
こうして各プレイヤーが雇用すると賑やかになります。このあと手番順に自分の親方ゴマを動かして取引をしていきます。
取引
基本親方は現在立っているスタート地点から左に進み反時計回りでグルグル回っていきます。いわゆるロンデルとかすごろくとか言われているやつです。いきざまコマを置いたところの歩数すすむわけですが、このように1個消費すると1歩増やせる資源もあります。
親方がこのお店にやってくると、長屋の屋根にある取引とカードの下にある取引が行えます。
ちなみに各場所には2枚カードが置けますが、カードの場合その二枚のうちどちらかの取引が行えます。ちなみに金を支払う場合は、金がないと取引ができません。
別の色の親方から取引されるとこの町人は成長いい一つ上のマスに上げられます。ちなみに、同じマスに別の親方ゴマがいても構いません。
そしてその町人コマが一番上に来ると卒業となります。
卒業って何!?って思うでしょうが・・・・
町人コマは回収され、個人ボードに卒業したカードが収められます。
ちなみに親方が一周した時、自分の色の町人コマが全員1段階成長します。
そして全員プレイが終わると雇用されなかった職業カードには1文が乗せられ新たにカードが4枚並べられます。
江戸町人の買い物
ここでいきてんを稼ぐ方法として江戸っ子の気質みたいなものをやる必要があるというものがあります。
例えば流行のものを追いかける。これは現代にも通じますが、ここIKIにもそれがあります。
煙草です。当時はキセルで先端に草を詰めて火をつけて管を通した煙を吸っていました。実はこれ昭和の頃まで存在し、愛煙家もいたのです。
当然その季節ごとにモデルは変わりますが、わけてもそれをしまう煙草入れは様々なデザインや根付けが施されたものがあり、そのデザインも流行りすたれがあったとか、その季節の流行を購入するおしゃれさに当時の町人は「粋に感じていたとか」
話は長くなりましたが、ぶっちゃけ買うと最終得点ボーナスが付くよということです。トークン書かれた数字が費用となっています。ここでは煙草、煙草入れそれぞれを購入することができますが、太っ腹な大旦那様向けのセット買いも可能となっています。
個人ボートにこのように置かれますが、煙草を買うと即時ボーナスが、煙草入れを買うと最終得点がもらえますが煙草を1つでも持っていると最終得点が倍になるというものです。
このゲームのデザインが実に凝っていて、たばこ自体は道具ですから1個ありゃ掃除すれば何度でも使えます。ですが、煙草入れは女性でいうバッグみたいものですから、いろいろと買う必要があるわけです。
そして江戸っ子と言うと「初物を食す」と言われています。なんでも初物を食べると寿命が延びるとかで、現代ではあまりに馴染みがなくなりましたが、食材には季節による旬みたいなものがあり、それを誰より先に食べることが江戸っ子であるというものがあります。
たまにニュースで流れる果物や魚の初セリで高値が付くのはそういった風習からくるものだと思われます。
ということで魚が毎季節ごとに売られています。こちらはどちらかしか買えませんが、お高い方はさらに最終勝利点がもらえます。
そして個人ボードに並べられるのですが、これも毎季節ごとに魚を購入したかによって勝利点にボーナスが付きます。
建物
この長屋の右側のアイコンは建物を建てるアクションとなっています。
毎ゲーム6枚の建物カードが並べますのでそのうちの一枚を選びます。
そのカードの左上の資源を支払うことができれば自分の町人ゴマを置いて完成します。中には最終勝利点を取れたり収入を得られたりといろいろな効果があったりします。
ちなみにこのゲームの建築資源は俵と木材のほかに・・・
先ほど紹介した草履やこちらでしか得られない小判などがあります。
このゲーム、小判はお金ではなく資源なのです・・・
季節の変わり目
3月が終わると決算が行われます。
まず雇用場所にある春のカード、煙草、魚は撤去され夏のものが並べられます。
給与
町人のコマの前にある資源がもらえます。卒業したカードは一番上の資源がもらえます。
人情長屋ボーナス
まぁ、ぶっちゃけマジョリティーボーナスです。ゲームボードによって多少変わりますが、四人用のボードの場合、各長屋のかたまりと角部屋それぞれに桜のアイコンが書かれた部屋があります。この5か所で見ていきます。
条件としては同じ色のカードが2枚以上あった場合、その色の町人ゴマを持つ人は掛け算でいきてんが手に入ります。
なので赤は 1個X3枚=3点 青は 2個X3枚=6点となります。角部屋は二回判定するので高くなっているということです。
そして食料の支払いですが、これは現在ボードに出している町人コマ1個につき1俵を支払わなければいけません。支払えない場合、支払えなかった町人コマは回収され、カードは捨てられます。
火事
あと、夏になると不審なアイコンが出てきます。これは、この季節になると誰かが放火するのか自然発火するのかはわかりませんが、なぜか確定した火事が発生します。
なぜか当時を詠った文言に「火事と喧嘩は江戸の華」というものがあり、当時の江戸家屋はプレハブよりも質が悪く、すきま風はあるわ、隣の壁は薄いわで簡易に作られていました。
とりわけ防火対策なんて立てられているわけもなく、歴史と共にその対策は整えられてきました。
そこで江戸の消防団ともいうべき火消組が成立するのですが、どうもこのゲームにおいてプレイヤーごとに火消能力があるらしく、このような火消しトラックが存在します。
実はこの火消しトラックの進み具合で2月以降生きざまコマの配置の順番が決まっています。
火事はあらゆる財産も消してしまいます。なので火事を防ぐことことも「粋」なことになっています。
火事イベントはこちらのトークンでランダムに発生場所が決まります。
対応する長屋の一番目から判定をしていきます。対象はその家屋に町人コマを置いてあるプレイヤーがその時に起きた火力(写真の場合5)以上の火消し力がない場合、町人コマは個人ボードに帰っていき、カードは捨てられます。
次に進むと火力が1下がりますなので写真の場合4で消火が可能になりますが、誰もいない場合次に進みます。
つまり角部屋に近ければ近い程火力が弱まり消火がしやすくなります。火を消したらとくになにもボーナスがあるわけでもなく、火消しイベントは終わります。
職業によっては火事から守れるアイテムを持てるというのもあります。
正月
12月が終わったら冬のカードを捨てて親方ゴマは個人ボードに回収されます。正月は親方ゴマを好きなところに置いて取引ができます。
そして最終いきてんを計算して得点の高い人が最も「粋」なプレイヤーとなるわけです。
独特の世界観で遊べるので江戸町人を題材にしたゲームというのは他に類は見ないつくり方ですし、背景も「粋」というのをテーマにしているだけあって、得点の取り方も変わっています。
基本親方ゴマをグルグル歩かせるロンデル式ですが町人コマとのバランスと、後半に連れて強力な職業カード、どのタイミングで建物を建てるかという悩ましさ。
あと金が足りないカツカツ具合など、コンポーネントもさることながら、楽しいものとなっています。
ちなみに同人版で売られていたのは喧嘩システムというのがあったらしいのですが、こちらにはそれがないようです。どんなものかは興味はありますが、今後出るのかもしれません。
あと欠点としては、現代人に通じるのかどうかというのは不安でしたが、外国の方でうけているところを見ると杞憂なのかもしれません。
ドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされた日本ゲーム、興味を持たれましたら遊んでみてはいかがでしょうか。
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