- 2人~4人
- 60分~90分
- 13歳~
- 2022年~
ファウンデイション・オブ・ローマ山本 右近さんのレビュー
エマーソン・マツウチ氏の2022年新作ゲーム。古代ローマの建築家となり、都市を成長させていくというのがこのゲームのテーマだ。
マツウチ氏と言えば、センチュリーシリーズがよく知られている。スパイスロード、イースタンワンダーズ、ニューワールドの3部作は入手性も良く初心者向けの作品なので、プレイされた方も多いと思う。これらの作品はそれぞれゲームシステムは異なっているが、軽量級から中量級のエンジンビルディングという点では共通している。本作はセンチュリーシリーズに似た部分はあまりなく、エンジンビルディング要素も薄い。プレイヤー同士の駆け引きに焦点が当てられたゲームという印象を受けた。
とにかく箱がデカいので、ゲーム会に持参するには気合が必要だ。ご覧の通り、標準的なサイズの重ゲーである Great Western Trail 4個分程度の体積を有するので棚での存在感も大きい。
まず目を引くのが巨大な箱と、建物のミニチュア群だろう。これらは非常に完成度が高く、ゲームを進めるにつれてこれらが盤面に並ぶ様は壮観である。
ゲームは手番に3種のアクションから1つを選択して行うだけの非常にシンプルなものだ。
番地の書かれた区画のカードを入手しそこに建設する辺りはガーフィールド氏のバニーキングダム(2017)を彷彿とさせ、建てた建物と隣接する建物によって得点が変わる辺りはデロンジュ氏のビッグシティ(1999)と似ており、これらのゲームからの影響を感じさせる。本作はこれらに比べてよりシンプルなルールとなっており、BGGウェイトは1.9と評価されている。
建物ミニチュアの完成度は高く、ゲーム終了後に完成した街を眺めるだけでも余韻に浸れる。フォトジェニックなゲームでもある。
●基本ゲームのプレイ感
建物には3種あり、人口を増やせる居住施設、収入とVPを増やせる商業施設、隣接する建物によってVPが得られる公共施設に分けられる。
まずは居住施設。人口はラウンド終了時に人口トラックでの順位がひとつ前のプレイヤーの人口がVPとして入るというトリッキーな効果を持つ。つまり、上手くサボると手をかけずに高得点を得ることも可能となる。また、人口トップのプレイヤーには比較的大きなボーナスVPも与えられる。例えば3人プレイなら、2人で熾烈な人口争いをしていると、残りの1人は人口を捨てても比較的大きなVPを労せず得られることになる。しかしトップを追わないとそれはそれでトップに楽に人口ボーナスを取られ続けてしまう。こういった駆け引きを演出してくれる。
商業施設はいたってシンプルだ。建てるごとに収入アクションで得られる金額が増え、ラウンド決算で得られるVPが増える。順位点は関係なく、安定した収入源となる。
最後に公共施設。これは周囲に建っているすべてのプレイヤーの建物から影響を受けVPを得られる特殊な建物だ。人口がパラメータの駆け引きなら、こちらは陣取りの駆け引きを産んでいる。
このように役割の分かれた3種の建物が混在するため、それぞれ異なったインタラクションが上手くミックスされ、面白いゲームに仕上がっている。
当然、持っている区画カードの内容によって残っている区画の価値はプレイヤー毎に異なってくるが、この区画カードの入手はオープンドラフトとなり、安い区画が買われると他の区画が安い価格にシフトしていくシステムとなっている。自分にとってコスパのよい区画を買うか、自分はそれほど必要ないが他のプレイヤーに安く買われると大きなアドバンテージを与えてしまう区画を押さえるか、その辺りの折り合いもつけながら進めなくてはならない。
この区画を共通のプールから購入するという点もシンプルかつありがちながら、このゲームのテーマとシステムに素晴らしくフィットしている。
悪く言えば目新しいところはない、古臭さすら感じるゲームだが、見た目のインパクトとルール構成の良さでしっかりと楽しめるゲームである。しかし基本ゲームだけだとちょっと単調で若干の物足りなさを感じるというのもまた事実だ。
●モニュメント拡張
モニュメント拡張は、どのプレイヤーでも建てる権利がある特殊な建物を場に提供する拡張だ。つまり早い話、早い者勝ちの建物たちだ。
チルコ・マッシモやコロッセオなど、他のボドゲでもお馴染みのアイコニックな建物が早取りで建てられる。効果や建設条件は特殊なもので、ゲーム毎にランダムに数個選ばれる。
これらは建てるのに大きな区画が必要だったり、建てるのに特殊な条件を満たしている必要があったりする。効果はずば抜けて強力というわけではないが、通常の建物にない効果を発揮するものもあり、上手く活用するとゲームが有利に進められる。この拡張は陣取り、パラメータに次ぐ3つ目の駆け引きの要素となるが、それほど複雑な要素では無いため他の要素を邪魔せず、ちょっとしたアクセントとなってくれる良拡張だと言える。
しかしゲームに与えるインパクトは小さく、戦略性を高めるという程までには至っていない印象だ。逆に言えば初プレイから投入しても全く問題無く、むしろそうすることをお勧めする。基本だけだと感じる物足りなさを程よく埋めてくれるだろう。
●オブジェクティブ拡張
この拡張は2通りの遊び方ができる。各自秘匿の目標カードを所持しそれが達成できると追加の勝利点が得られる秘匿目標と、ゲーム開始時にプレイ人数分の目標カードを公開してそれの奪い合いという形の公開目標だ。個人的には公開目標が好みだが、卓の嗜好に合わせれば良いと思う。この拡張は戦略性を高める効果をもたらし、ゲーム展開にも奥行きを与えてくれる。個人的にはマストと言ってもいい拡張だ。
●インヴォケーション拡張
これは区画カードのマーケットに区画カード以外に様々な効果をもたらす特殊なカードを混ぜる拡張となっている。一見するとゲームを面白くするように思えるが、不人気のカードが滞留したり、プレイ時間が伸びてダレるという現象が起きた。カード効果もそれほどゲームに戦略性を与えず、むしろ大味でストレスを感じるものもあった。この拡張は個人的にはあまりお勧めしない。
他にも個人能力を付与するプレイヤーロール拡張、直接攻撃要素を加える取引略奪拡張、協力ゲームモードが存在するが、それらは未プレイのため言及を避けることにする。
●総評
ゲームとしてはインスト15分、プレイ1時間で内容の濃いゲームが楽しめ、プレイ後の満足感も高く幅広い層に勧められるし内容的にはオープン会などにも適していそうだ。しかし箱の大きさから持ち運びが難しく、価格も高価なので簡単には勧めづらいという難しい立ち位置のゲームと言える。私みたいなマニアが買って、カジュアル層と遊ぶのに持ち出すという運用がメインになるだろう。
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