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  • 1人~4人
  • 60分~150分
  • 12歳~
  • 2017年~
2502名
21名
0
7年弱前

傑作と言われる前作『テラミスティカ』との比較で語られることの多い本作。前作をやったことのない人にはプレイ感がイメージしにくいのでハードルが高く、前作を持っている人であればベースは同じのゲームにしては高価なので躊躇する(自分はそうでした)ところもあるかと。迷った末に購入しプレイした感想は「傑作を超えた傑作! 買えてよかった!」なので、少しもったいないなと感じ、このゲームの何が面白いのか(超複雑なシステムなので難しいですが)できるだけわかりやすく分析してみたいと思います。


乱暴にまとめると本作のシステムは以下の3つのレイヤーから構成されています。


レイヤー1 地形変換陣取り建築合戦

:テラミスティカから継承された基本になる部分。各プレイヤーは宇宙空間(共有の可変ボード型マップ)に点在する自分の種族が住むに適した惑星&住むに適した惑星に自分でテラフォーミング(地形変換)した惑星に建物をたてることができます。

要は開拓陣取り合戦ですが、テラフォーミングにかかるコストが開拓したい惑星の種類と自分の種族が住める惑星の種類の組み合わせによって変わるので、他プレイヤーとの駆け引きがたいへん戦略的で面白い。「俺は鉱石3であの星をテラフォーミングできる。近場のあいつは鉱石6かかるから暫く大丈夫。いまのうちに他の星を開拓するリソースとっとくか...」なんて思ってると第三のプレイヤーにかすめ取られたり。思わず悲鳴があがります。

惑星にはマイボードに置かれた5種類の建物が建てられますが、より強い効果を持つ高価な建物は安価な建物から順に改築していかないと作れません。そのルートも二通りあって、どの建物への改築をめざすのかいつも悩ましい。建物によって必要なコストもちがいますが、建物を建てると次のラウンドに種類毎に違うリソースがもらえるのでそれらを建物の建築や地形変換にあてる。うまいこと工夫するとモリモリ拡大再生産が進むのが楽しい!

陣取りと建築をつなぐのが「同盟」というアクションです。合計して一定以上の価値をもつ建物群を隣接して置けると自分の惑星同盟をつくれて、勝利点と貴重な恩恵がもらえる同盟タイルの中から1つを選んで獲得できます。同盟をつくるのは大変ですが大きな得点源になり、同盟タイルの恩恵をうまく使えば拡大再生産も加速します。2人プレイでも二時間弱はかかる長いゲームですが、高価な建物を皆が建てれば序盤から中盤へ、同盟が1つ2つ増えていくと中盤から終盤に移り、プレイ感はダイナミックに変化していきます。


レイヤー2 研究競争

:陣取りと建築によって獲得できる知識力トークンを消費してサブボード上にある6種類の研究トラックを上げ、建築と陣取りに必要な技術力の向上やリソースを得ることができます。研究トラックを一番上まであげると勝利点と貴重なリソースが沢山もらえますが、そのためには同盟タイルが必要で一番乗りしたプレイヤーしか獲得できません。「航法トラックをあげて遠くの星まで開拓したい!でも、リソースを増やす経済トラックが先か?いやむしろ地形変換トラックをあげて近場を固めるか...」。陣取りと建築の方向性に沿って研究トラックをどう上げていくべきか、常に悩ましく考えがいのあるところです。


レイヤー3 パワーエンジン

:陣取り&建築&研究を進めていくと色々なタイミングで「パワー」を獲得します。獲得したパワーの分だけマイボード上のパワーエンジンがまわり(1、2、3の3つのトラックを順にパワートークンが循環していきます)エンジントラック3に達した数分のパワーをつかって陣取り&建築&研究に役立つアクションの実行やリソースの獲得ができます。気づいたら獲得していたパワーのおかげでエンジンがまわり、足りないと思っていたコストを払えて同盟結成!という流れもよくあること。パワー獲得の特殊能力をもつ種族をうまく使えたときなんかには、グルングルン回る高速エンジンが強い味方になってくれます。


レイヤー間のインタラクション

:レイヤー2はレイヤー1によって活性化され、レイヤー1 を補助します。レイヤー3はレイヤー1&2によって活性化され、レイヤー1&2を補助します。3つのレイヤーが階層的に関係して全体のシステムができあがっているわけですが、特筆すべきは、その全てにプレイヤーが同じ程度に気を配る必要はない、という独特のゲームデザインです。

 レイヤーが1から3にいくにつれて、プレイヤーの関与は意識的な行為から無意識的な行為へと段階的に変わっていきます。プレイヤーはまずレイヤー1の陣取り建築に集中して意図的にプレイするわけですが、そうすると半ば自動的にレイヤー2やレイヤー3からポジティブなフィードバックがかかって、陣取り建築がぐんぐん加速していくわけです。まるで電動アシスト自転車みたいに。関係する要素が多すぎるため全ての派生効果を意識して行為するのは難しく、だからこそ思いがけないプラスの影響が下位レイヤーからもたらされてプレイが加速する。だからシステムは超複雑なのにプレイ感は煩雑じゃない

 さらにゲームに慣れていくと下位レイヤーとの相互作用をだんだん把握しながら上位レイヤーで動けるようになるので、電動アシスト自転車は変速ギア付きバイクみたいに変わっていき、巨大な機械を素手で動かしているような興奮が味わえます。意識的な行為の先にある無意識的なフィードバックの波にうまく乗れれば宇宙の彼方まで飛んで行けるw  その難しさと爽快感が本作の大きな魅力になっています。

テラミスティカとの大きな違いは、2つの要素(個人ボードの船&スコップと教団ボード)に分かれていたため曖昧だったレイヤー2が研究ボードに統合され、3つのレイヤー間のインタラクションが明確になったこと。大陸と川からなるメインマップが島(惑星)と海(宙域)からなる可変ボードに変わったことで開拓の自由度が増し、2人〜4人プレイのいずれも充実したこと。研究トラックで獲得できる「QIC」駒や「ガイアフォーマー」駒による特殊な開拓が可能になり、同盟結成のためにパワー駒の廃棄と補充が必須になったことで、レイヤー間の関係の意味がプレイ中にダイナミックに変化していくこと等でしょう。個人的には最後の要素が、ゲームが進むにつれてより無意識的なレイヤーに自然と意識を向けさせる仕掛けになっていて、前作との違いを最も感じた部分です。それぞれに個性的な能力をもつ14の種族、ランダムに選ばれるラウンド毎の得点タイルや最終得点タイルなどはテラミスティカを継承しながらも改良され、より豊かなゲーム展開を可能にしています。

多彩なシステムを見事にまとめた傑作テラミスティカを解体再構築し、その完成されたシステムをさらに面白いゲームの土台に使うという離れ業をやってのけた『テラミスティカ・ガイアプロジェクト』。オススメです。

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