- 1人~4人
- 30分~45分
- 10歳~
- 2024年~
ノクターン月向こねこさんのレビュー
月夜の森を舞台に、狐の魔術師たちが呪文を唱え、魔法のアイテムを争奪する。アイテムはあればあるだけ良いが、それらを調合して薬を作ると更に名声が得られる。森の精霊に問いかけて隠されたアイテムを入手したり、闇の呪文で他の魔術師を圧倒することもできる。この森で最も偉大な魔術師になるのは誰だろうか。
プレイ人数は1~4人、記載プレイ時間は30~45分、インスト込み実プレイ時間は2時間程。
※自家翻訳のため、レビュー内の用語には独自の単語、表現が使われている点に留意して下さい
※ルール、システムに興味が無い方は『2.プレイした感想』まで飛ばしてもらって構いません
1.ゲーム概要
ゲームは『黄昏ラウンド』と『月夜ラウンド』の2ラウンドで構成される。
ゲーム開始時、プレイヤーには『呪文トークン』(円形のトークンで数字が1~7までと☆が描かれたもの)と、ゲーム開始時用『調合カード』(タイル左上に描かれた特定シンボルの組み合わせを集めると点が得られるカード)が配られる。 スタートプレイヤーはランダムな方法で決める。
ラウンド中、タイルを獲得するフェイズを『呪文フェイズ』と呼ぶ。呪文フェイズは、誰かがタイルを獲得したタイミングが区切りとなり、次の呪文フェイズが始まる。
呪文フェイズ中、自分の手番にできることは、以下のいずれかとなる。
1.呪文トークンの配置
2.パス
呪文トークンの配置では、自分の手持ちの呪文トークンのうち1つを、森(写真左側、5×5のタイルが置かれたスペース)のタイル上に置く。次のプレイヤーは、前プレイヤーが置いた呪文トークンの数字より大きい数字のトークンを、前手番に置かれたタイルの上下左右に隣接するタイルに置く。
トークンを置けない、または置きたくない場合はパスを宣言できる。パスを宣言した場合、その呪文フェイズ中はトークンの配置が一切できなくなる(=ハードパス)。
誰もトークンが置けなくなった時点で、森の中で最大値のトークンを置いていたプレイヤーが、トークンを置いていたタイルを獲得できる。タイルを獲得した最大値トークンは、裏向きにしてタイルがあったスペースに置いておく。こうして裏向きのトークンが置かれたスペースを『コントロールエリア』と呼ぶ。これは目標カード(後述)達成のために使用される。
タイルを獲得できなかった呪文トークンはそれぞれのプレイヤーの手元に戻るが、この際タイルを獲得していないプレイヤーは選択肢が発生する。戻ってきた自分のトークンを全て手元に残す(次の呪文フェイズ以降でまた使用する)か、トークンのうち1つを精霊ボード(写真右側のボード)に捧げるかを選択する。
精霊ボードに呪文トークンを捧げる場合、ボード上側のスペースに配置する。配置の際、左側のトークンの一番数字が高くなるように配置する。同値のトークンが既にある場合は、それより右側(低い側)に置く。スペースが無い場合は既に配置されたトークンをずらして配置する。そうしてスペースから溢れてしまったトークンは、持ち主の手元に戻り再び使用できるようになる。
ここまでが『呪文フェイズ』の一連の流れとなる。これを繰り返し、森のタイルを全て取る、または森に残っているタイルを取りたくないと全員が意思表示(=全員がパス)すると『黄昏ラウンド』が終了する。
黄昏ラウンド終了時には、以下の処理が発生する。
A.精霊ボードの解決
B.闇の呪文トークンの獲得
C.呪文トークンの回収
D.余剰呪文トークンの破棄
E.月夜目標カードの公開
F.森タイルの補充
G.精霊ボード上タイルの補充
精霊ボードの解決では、ボード上に捧げられたトークンの左側(高い側)から順番に、トークンの持ち主がボード上の好きなタイルを1枚獲得する。タイルを獲得した後、ボード上のトークンは裏向きにしてボード上に置いておく。
闇の呪文トークンの獲得では、各プレイヤーの手元にある未使用トークンを集め、数字が大きい順に並べる(数字が同値の場合は、精霊ボード上でトークンをより右側に置いているプレイヤーが上位となる)。数字が大きいトークンから順に、『闇の呪文トークン』(=黒色、どのプレイヤーにも属さないトークン)の数字が大きいものを獲得し、未使用トークンと共に手元に回収する。
その後、森、精霊ボード上に置かれた全ての呪文トークンを回収する。
呪文トークンの回収後、闇の呪文トークンを獲得したプレイヤーは、その個数だけ自色呪文トークンの小さい数字のものから破棄していく。これにより、全プレイヤーのトークン数は(闇の呪文トークンを含めた後でも)同数となる。
最後に『月夜目標カード』を3枚公開する。
さて、ここで目標カードについて言及する。目標カードは『黄昏目標カード』と『月夜目標カード』の2種類があり、それぞれラウンド開始時に3枚公開される。この目標を達成すると、追加の点が得られる。
黄昏目標カードは黄昏ラウンド終了時、または先着で、誰か1人がボーナス点が得られる。先着の場合は『特定トークンでタイルを最初に獲得する』や『3スペース以上連続したコントロールエリアを確保する』など、黄昏ラウンド終了時は『最小のコントロールエリアを持っている』や『精霊ボード上で最も小さい数字の呪文トークンを置いている』などが目標条件となる。
対して、月夜目標カードは月夜ラウンド終了時(=ゲーム終了時)に、条件を満たしている全てのプレイヤーがボーナス点を得られる。『カードに描かれた形のコントロールエリアを持っている』、『森の四隅いずれかにコントロールエリアを持っている』などが目標条件となる。
話を大筋に戻そう。上記黄昏ラウンド終了処理が完了した後、森タイルと精霊ボード上タイルの補充を行い、『月夜ラウンド』が開始される。プレイに関しては黄昏ラウンドと同様、呪文フェイズを繰り返し、タイルの獲得や精霊ボードへのトークン配置を行っていく。
月夜ラウンド終了時には、以下の処理が発生する。
α.精霊ボードの解決(黄昏ラウンド終了時と同様)
β.鏡石の割り当て
γ.最終得点計算
鏡石の割り当てでは、タイルの1つである『鏡石』を獲得していた場合、自分が持つ他のタイルに割り当てる事ができる。割り当てることで、そのタイルの枚数が1枚増える(鏡石がそのタイルと同じものになる)。処理は基本的に全プレイヤーが同時に行って良いが、タイルの枚数で得点が変動する可能性があり、それによって競っている場合は、精霊ボードの解決の際にボード上の最後のタイルを獲得したプレイヤーから逆順に割り当てを行う。
(※ルールにも記載があるが、増えるのはタイルの枚数だけで、タイルに描かれたシンボルは増えないので注意)
上記処理の後に以下の最終得点計算を行う。
・各タイルの得点
・調合カードのレシピ達成による得点
・各目標カードの得点
・この時点で呪文トークンが余っていた場合、1枚2点
以上の得点を合計し、最も得点の高かったプレイヤーがこの森の偉大な魔術師となる(同点だった場合は、精霊ボード上のトークン位置で勝敗を決める)。
2.プレイした感想
ここからはプレイした感想を述べる。
まず実プレイ時間が2時間だったのに対し、プレイ感は軽かったという点を挙げたい。
この2時間という時間は、インストを含め、初プレイ、かつプレイ感が独特なこともあり、各プレイヤーの思考時間が比較的長くなってしまったのが原因だと考えられる。だがダウンタイムと呼ぶに値する『待ち時間』を受けた、手番が回ってくるまで暇だと感じた印象は無かった。これはタイルを競る際に各プレイヤーどの呪文トークンを残しているか、競り値を吊り上げられるかを気にしていたからだと思う。
呪文トークンは公開情報なので、特に後半などはタイルの獲得状況から手番プレイヤーは『この人は自分が出すトークンより強いトークンを持っているけど、ここでトークンを出して周辺のタイルを取るメリットは無いはずだよな…?』、他のプレイヤーは『強いトークンをチラつかせて牽制するけれど、仮に想定外の行動に出た場合、次善の策はあるか…?』等々、思考を巡らせることになる。言ってしまえば他のゲームでも普通にある心理光景ではあるのだが、森の状況とトークンの状況からそれが平易に視覚化されるため、色々と考えやすいのかもしれない。
一方で、トークンの置かれる位置はプレイヤーの思惑が複雑に絡み、一概にどうとは言えない。『誰がどのタイルを得るかは神のみぞ知る』とも言えるわけで、つまるところゲーム展開や獲得タイルの予測が非常にし辛いと言える。これは例えば、ゲーム開始時に配られた調合カードの達成を狙って動こうとしても、思うようにタイル(シンボル)集めができなかったことを事例として挙げてみる。
ゲームにおいて物事ままならないのは当たり前だが、初期調合カード、いわば最初期におけるプレイ指標となるものに縛られた結果どちらも立たず、という状況になってしまう点は首を少し傾げてしまった。今回のプレイでは4人中、自分を含め2人が初期調合カードで目標を定めてゲームを進行する、という戦略を取った(初期段階で得点要素を持っているなら、それを主軸にするのは思考としては至極普通だろうと思う)。しかし、獲得したいタイルを狙い通り取りに行けない状況こそが当たり前だと分かり、戦略を変えざるを得なかった。そしてゲーム終了後にその事を話し合い、「調合カードのレシピ達成は積極的に達成を狙うのではなく、達成できたらラッキーくらいの感覚が良い」という結論に至った。ゲーム中、調合カードを引く際は3枚のうち1枚を選択できるとしているものの、結局は運次第であり、戦略として主軸に据えるには不安定要素が大きすぎるように感じた。
ただ、先述の通り調合カードのレシピ達成を『目標』ではなく『追加得点要素』として捉え、あくまで戦略の主軸はタイルの獲得なのだと割り切ってしまえば、そこまで気にはならなくなる(ただそうであるなら、なぜゲーム開始時に調合カードが配られる設計になっているのか、という点が依然疑問として残るのだが)
月夜の森で魔術を使いアイテムを集めるという幻想的なテーマに対して、アートワークのこだわりを強く感じた。もともと箱絵に引かれてのKickStarterでの支援だったので、これにはとても満足している。箱絵だけではなく、キャラクターカードやタイルのイラストも綺麗で (特にタイルは同種でも複数絵柄が存在する)、ただ眺めるだけでも飽きない。
ゲームのルール自体は難しくなく、慣れてしまえばもっと短い時間で(記載の通りの30~45分とまでいかずとも1時間ほどで)プレイできるだろう。盤面の変化、プレイヤーによる思考の変化でのリプレイ性も高い。
先述の評を『計画通りにいかない』と捉えるか『臨機応変に対応してみせる』と捉えるかで、ゲーム性の評価が変わってくるかもしれない。
総評としては、『支援出資した後悔は全く無い』といったところ。両手を挙げて凄いゲームだとは言えないものの、概ね良作であるとは言える。このレビューを読んで気になった方は、日本語版の発売までしばし待ってみてはどうだろうか(ゲームマーケット24春にて発売元のFlatoutGamesが出展しており、日本語版発売予定と発表あり)
まぁ、きちゅねさんがかっこかわいいからね、ぶっちゃけそれだけでまんぞくなんだけどね!!
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