- 1人~5人
- 40分~60分
- 10歳~
- 2024年~
カバンゴ月向こねこさんのレビュー
アフリカ大陸に存在する、世界最大の自然保護区『カバンゴ・ザンベジ国際保全区(Kavango Zambezi Transfrontier Conservation Area)』。5カ国の国境を跨ぎ、面積は約52万平方キロメートル。その広大な土地の中に、様々な自然風景によって生まれた生態系と、それを元とする生物多様性が存在し、重要な動物の個体群が数多く存在する。
プレイヤーは保護区の自然保護専門家として、自分の受け持つ保護区で生態系のバランスを整え、絶滅に瀕した動物を保護し、 調査研究により資金援助を得て、投資により自然保護へ貢献する。
プレイ人数は1~5人、記載プレイ時間は40~60分、インスト込み実プレイ時間は2時間程(インスト30分+プレイ1.5時間ほど)。
なお補足として、各プレイヤー用の個人ボードが大きいため(縦約30cm、横約63cm)、プレイヤー全員の個人ボードを置くことができて、更に中央ボードやサプライを置くだけのスペースを確保する必要がある点に留意されたい。
※自家翻訳のため、レビュー内の用語には独自の単語、表現を使用している点に留意して下さい
※ルール、システムに興味が無い方は『2.プレイした感想』まで飛ばしてもらって構いません
1.ゲーム概要
ゲームは3ラウンドに渡ってプレイされる。1ラウンドは10ターンで構成される。プレイは全員同時に行われるため、個々の手番という概念は存在しない。
1ターンは4ステップで構成される。
1.プレイするカードの選択
2.カードのプレイ
3.研究達成と資金投資
4.カードドラフト
『1.プレイするカードの選択』では、ラウンド開始時に配られた手札の中から1枚を選択する。全員がプレイするカードの選択を完了したら、次のステップに進む。
『2.カードのプレイ』では、上述のカードを一斉に公開し、処理を行う。
カードは主にアクションカード、生産者カード(Aデッキ)、動物カード(B、Cデッキ)に分類できる。プレイされたカードの中にアクションカードが存在する場合は、先にその処理を実行する。それが終わった後に、生産者カード、動物カードを盤面に配置する。
アクションカードは即座に能力を発揮するカードで、資金を得る、再自然化カードや研究カード(後述)を入手する、自他の盤面の動物カードを交換するなど、5種類が存在する。
生産者カードは、後述する動物カードを盤面に出す際のコストとなるカードだ。草、木、虫、魚の4種類が存在し、それらをプレイした際は盤面の左上のスペースに差し込む。一度差し込まれたカードのアイコンは基礎コストとして永続して所持しているとみなされる。
動物カードは、メインの得点源となるカードだ。基本的に動物カードをどれだけ出せるかがゲームの主軸となる。これも2種類に分類でき、Bデッキは生産者カードのみ、あるいは比較的コスト達成難度が低いカード群、CデッキはBデッキの動物カードもコストとするコスト達成難度が高いカード群となっている。また、動物カードはここまで説明した食料のコストに加え、保護レベル(後述)を要求する場合もある。
これらのカードを、効果を解決するか、盤面に出す。カードを出せない、出したくないという状況であれば、選んだカードをプレイする代わりに捨て札にすることで、1資金キューブを得ることができる。
また、コスト条件を満たしていないため盤面に出せないが、将来的には出したいと考えた場合には、盤面右端に3枠ある『サンクチュアリ(特別保護区)』に出すことでカードを予約することもできる。こちらはコスト達成の必要なく出せて、しかもその後のプレイで条件を満たした瞬間に手番を消費せずに盤面にプレイできる。ただし、ゲーム終了時に得点要素としてカウントしない点には注意が必要だ。
『3.研究達成と資金投資』では、中央ボードに公開されている4枚の研究カード(ラウンド中の小目標カード)の達成と、それによって得られた資金を投資することができる。
まず研究達成では、研究カードに示された条件(~のアイコンを集める、~の特徴の動物を盤面に配置する、等)を満たすことで、示された資金と勝利点を得ることができる。示された条件をどれだけ満たしたかで報酬が変動する。研究カードは早取りではなく、条件さえ満たせば全員が1つの研究カードから報酬を得ることができる。
次に資金投資では、自分が持っている資金を許す範囲で(=任意数)投資することができる。投資先は保護レベル、すなわち自分の保護区のみに適用される生息地保護、密猟保護と、全員が共有するの気候保護の3種類となる。これらのレベルが一定以上に上がっていることが盤面に出す条件となっている動物カードがある。また、これらのレベルを上げることで、ゲーム終了時にボーナス点(後述)が得られる。
研究カードの条件をより多く満たすと報酬も多く得られるので、ラウンド後半か終了時に達成した方が良いだろう。ただ、達成度に関わらずこのステップで研究を途中で切り上げ、低い資金と勝利点を獲得することもできる。後半まで研究を続けて満額の報酬を得るか、動物が出せる状況を早々に満たすために早めに研究を切り上げるか、状況に応じて方針を柔軟に切り替える必要がある。
またこのステップでのみ、再野生化カードの購入ができる。4資金キューブを支払うことで得られるこのカードは、生産者カード4種のアイコン1つを増やすことができる。資金が潤沢で初期コストに不安がある場合は、こちらに資金を投入するのもいいだろう。
『4.カードドラフト』では、手番で選択しなかった手札を全て左隣のプレイヤーに渡す。右隣のプレイヤーから手札を受け取り、次のターンを開始する。
10ターンを終えた後、達成していない研究に対しての確認(達成していれば報酬を得られる)と、それを踏まえた上でのラウンド最後の資金投資を行う。その後、場のクリーンアップを行い、新たな手札を配り、次のラウンドが開始される。
第3ラウンドのラウンド終了処理を終えた後、自然保護賞の達成確認を行う。いわゆるゲーム終了時のボーナスで、生物多様性賞、気候賞、保護賞の3賞がある。1つを達成する毎に10点が得られ、これも条件を満たしているすべてのプレイヤーが獲得できる。
ゲーム開始時に目標カードを配っていた場合には、その目標達成に応じて点を得ることができる。この目標カードには動物の特徴や生息域などが記載されており、盤面上にその条件を満たす動物カードがどれだけ存在するかで点数が上下する。(なお、目標カードの目標は達成が比較的難しく、導入しないでプレイするシンプルプレイルールも存在する)
上述の点に加え、盤面上の動物カードの得点を全て足し、合計点数が一番多いプレイヤーが勝者となる。なお、1位が同点の場合は勝利を分かち合い、"自然"が勝者となる(In the case of a tie, share the victory, nature is the winner!)。
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2.プレイした感想
ここからはプレイした感想を述べる。
ゲーム概要を読んだ方は、薄々気付いているかもしれない。コストを生み出すカードを配置し、それを参照して新たなカードを配置していき、手札はドラフトする。このシステムは『世界の七不思議』と同じシステムである。ではテーマを変えただけの焼き増しゲーなのかと言うと、これも概要を読んだ方なら違うと判断できるだろう。ラウンド毎の研究カードによる中間報酬や、資金の投資によるプレイ可能域の拡張は独特な要素と言える。特に気候保護に関しては、全員が協力して投資をしないとレベルが上がらず、動物カードを盤面に出すことができない。一人の努力ではどうにもならないという現実世界のそれを盤面に持ち込んだ形となっている。
生息域と生物多様性というテーマをカードのコストにしっかりと反映しており、例えば生産者カードで草木のみを伸ばしていると、草食動物とそれらを捕食する狩猟動物は出しやすくなる反面、虫や魚を食料とする鳥類やそれを捕食する猛禽類、水生動物は場に出せなくなる。満遍なく生産者カードを出せば良いかと言うと、今度は多様性が中途半端さに置き換わり、中途半端な動物を配置せざるを得なくなる。微妙なバランスで成り立つ自然に対して、カードのドラフト状況と自分の采配でどうバランスを取っていくかはとても悩ましい。
手札をドラフトするので、ある程度手札は透けて見えていると言っても良い。次プレイヤーに渡すと確実に盤面に出されるカード、使用しておかなければ他プレイヤーが相手が有利になる可能性があるカード、自分が出しておきたいが出せないカード、それらは一周回ってくるのか、あるいはどこかでピックされるのか。そういった状況を見渡したうえで思考するのはドラフト系システムを持つゲームの常ではあるものの、食料コストと保護レベルを見れば分かるのがシンプルで、その辺りはわかりやすいと言えるだろう。
プレイヤーそれぞれが専門家カードという能力カードを持っており、その能力も含めた上での戦略を考えていくのもこのゲームの特徴と言える。どの行動が得意で、どの場面で輝くのか、それを見極めて行動していくのも重要な要素となる。自らの力を最大限に発揮するのが専門家であり、それ自体が自身の能力をアピールする最大の方法なのだ(と、ルールブック上にルールとは関係ない注釈の記載がある)。
動物カード、特にCデッキの枚数が多く、1回のプレイで全部は使用されない(体感5~7割しか使用していないと思う)。また専門家カードも(ミニ拡張も含めると)12枚ある。個人ボード上に記載されている初期生産者も異なっている。システム的にはシンプルな一方で、上記の要素からリプレイ性は高いと感じた。特に専門家カードに関しては『複雑度』が設定されており、初回プレイから分かるさっぱりした効果から、何度もプレイしていないと扱えない玄人向け効果まで存在する。それらの能力差でプレイングがどう変化するのかを楽しむのも良いだろう。
欠点として挙げたいのは、物理的なスペースが要求される点だ。最初に書いた通り個人ボードが大きく、人数分のボードを並べるとそれだけでテーブルの大半のスペースが削られてしまう。会議室で使用する長机を2つ並べた状態でプレイしたのが載せている写真なので、テーブルのサイズによってはプレイが難しい、あるいはプレイできないということもあるかもしれない。(ゲーム終了時に動物カードが並んでいる光景は見ていて勝敗に関わらず達成感が出るし、個人的にはとても好きなのだけれど…)
次に、好き嫌いが分かれるだろう点についても言及しておく。先述の通り『世界の七不思議』と同じようなシステムであるとしたが、明確に異なる点がある。それはプレイヤー間の相互作用の有無だ。『世界の七不思議』では戦争や、隣プレイヤーから資源を一時購入する、隣プレイヤーの状況により効果が発揮される、というように両隣プレイヤーを参照するシステムとなっていた。一方『Kavango』におけるプレイヤー間の相互作用は手札のドラフト以外ほぼ存在しない。唯一、アクションカード『移転』によりサンクチュアリに配置した動物の交換と専門家『外交官』の能力が、このゲーム内で他プレイヤーに影響を与える要素だろう。他プレイヤーの動きが直接盤面に影響を及ぼさないのを、落ち着いてプレイできると捉えるか、ソロゲーム感が強いと捉えるかで、このゲームの評価は変わるかもしれない。
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カードドラフトによるピックの悩ましさ、生態系構築とそれによるコストの達成、研究達成のタイミングと保護レベルへの投資、環境保護賞の獲得、多種多様な動物たちの保護…考えるべき要素としては様々。しかしながらプレイの筋道は一つ、すなわち『どれだけ動物を自分の保護区に呼び寄せる(=配置する)ことができるか』に集約されているのが分かりやすいと感じた。
リプレイ性の高さもしっかり確保できていて、それでいて物理的サイズ感とは裏腹にシステムはかなりミニマルに感じた。初回プレイ時はしっかりインストする必要があるので時間がかかるが、慣れてしまえばサクサクとプレイできるので、箱に記載の『40~60分』はあながち間違いではないと言える。ただし、シンプルさの裏に隠れた思考の深さを考慮しなければ、の話だが(実際プレイ中、特に後半は手札を片手に「どうすりゃいいんだ…」となることしばしば)。
先にも書いた通り、ゲーム終了時にボード上に動物が勢揃いしているのは壮観で、そのために個人ボードが大きくなるのを許容してデザインしたのだなと感じる。ルール原文では個人ボードは『Landscape Board(風景ボード)』と記載されている。自分が専門家としてカバンゴに立っている、見える風景にはこの動物たちが居るのだなと思うと、なるほどその名付けには納得がいく(ちなみに自家版ルールブックでは『保護区ボード』と翻訳した)。
総評としては『支援出資して良かった!』と思っている。未翻訳ではあるものの、動物カード下に書かれたフレーバーメモを読むのも楽しいだろう。上記のシステムで、多種多様な動物に触れられるゲームが好きなら、お勧めしたいゲームだ。
俺のターン!!
食料に木3と草1、更に気候保護レベル3と生息地保護レベル4をコストにして、俺の保護区に『デザート・アダプテッド・エレファント』を召喚!! このゾウは砂漠に生息する特殊なゾウで、体長450cm、体重は5トン! 水を求めて群れで移動する、『Migratory』のタグが付いている! 人間の密猟や土地利用で生息域が脅かされている貴重な種で、呼び寄せた際の勝利点は…全カード最高の11点だぜ!!(ドン☆
Q.遊戯王TCGプレイしたこと無いくせにエアプするのやめません?(A.正直上の文章考えるの大変だった…
Q.あと「俺のターン!」って言ってますけど、このゲーム、ターンの概念ないですよね?(A.あっハイ…サッセン…ッス……
(なんか知らんけど1枚だけキラカードが入ってたの…ソロプレイで使用するとかなんとか聞いたけどどうなんじゃろ…?)
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