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  • 1人~4人
  • 20分~90分
  • 13歳~
  • 2015年~

シェイクスピア山本 右近さんのレビュー

254名
6名
0
約1年前

朝からちょっとした賑わいをみせるスミスフィールド・マーケットで買い物を終えたウィリアムは、テムズ川を右手に見ながら彼が居を構えるビショップス・ゲートへと東へ向かう。ちょうど今仕上がりつつある新作のことで頭の中はいっぱいになっている。

程なく右手にロンドン橋が見えてくる。最近流行りの兆しを見せている妙な病のせいか、少し活気を失っているようにも見える。様々な家や店舗が橋の上に立ち並ぶため、昼間でも少し薄暗いのもそんな印象を与えるのかもしれない。

すると、1人の男がロンドン橋の方角からウィリアムに向かって駆け寄って来た。

「なんだ、リチャードか。君が私に向かって走ってくるなんて、悪いが私には妻もいるし、そんな趣味はないぞ。」

ウィリアムの仕事仲間であるリチャードは普段より些か興奮した様子だったので、ウィリアムは何かあるとすぐに察した。

「いやいや、ウィリアム、いいところで会ったな。新作はできたのか?進捗を聞かせてくれよ。」

「脚本は殆どできている。あとは細部を調整したら役者と衣装、それに舞台装置を用意するだけだ。」

それを聞いたリチャードはニヤリとほくそ笑んだ。

「それは良かった。ならば1週間後に上演するぞ。」

「1週間後だって!?」

ウィリアムの驚いた声に、周りの人々が一瞬振り向いた。2人は気まずそうに人々の視線から背を向け、テムズ川の方向に歩きながら話を続ける。

「最近流行り病のせいでどこの劇場も経営が苦しくなってるのは知ってるだろう。女王陛下がそれを知って、1週間後にロンドンの劇場4ヶ所を観劇しに回って、ちょっとしたコンテストみたいなことをやるらしいんだ。そのうちのひとつがオヤジがやってるThe Theatreだ。お前も名前が売れてきたところで更に飛躍したいと思ってるだろうし、ここでペンブルック伯の劇団でお前の新作をやるのが良いと思うんだがな。いいアイディアだろう?」

女王陛下が観劇して優劣をつける、という催しに参加するのはリスクもあるが、かなり多くの注目を集めるだろう。ここで参加しないというのは自身のキャリアの上で選択肢としてはあり得ない、とウィリアムは思った。

「私の才能を妬んで影で悪口を書いてまわる業界の古株にひと泡吹かせてやる良い機会だし、そういうことなら吝かではないが、1週間か…。大変な7日間になりそうだな」

この箱絵のオジサンがシェイクスピア。実は自分の作品に自ら出演する役者でもある。

リチャードはウィリアムの才能を誰よりも評価しており、1週間後の公演の成功を微塵も疑ってはいなかったが、同時に大変な仕事になることも覚悟していた。ウィリアムは歴史物語である「ヘンリー6世」がヒットし名を知られた存在になったが、今度の新作「じゃじゃ馬ならし」は喜劇のようだ。大衆にもウケるだろうし、同じ歴史物をやるよりも斬新な印象を与えられるだろう。しかし舞台装置や衣装などは新しく揃える必要がある。ペンブルック伯の劇団にはいわゆる何でも屋の職人がいるにはいるが、彼1人で衣装や道具を全て用意する事は不可能だ。舞台を成功させるためには役者も職人も足りていない。まずは新しく有能な人材を獲得しなければならないことは明らかだった。有能な人材も限られたリソースなので、他の劇団に先んじて雇用を進める必要がある。

各プレイヤーはラウンド中に1度だけキャラクターを雇用できる。ゲーム終了時に彼らの給料を支払うことになるので、雇用のしすぎには要注意だ。当時実際には女性の役者はいなかったが、ゲームの演出上女性のキャラクターも登場する。

また、舞台に必要な材料の仕入れもリチャードの仕事を難しくする要因の一つだった。やるべきことは大量にあるので多くの劇団員に仕事の指示をしたいところだが、あまり多くの団員を同時に働かせるとなるとどうしてもスケジュール管理やマネジメントに時間を取られるため、動き出しが遅れてしまうのだ。

そうなると他の劇団に先に舞台装置や衣装の材料を取られてしまい、作成したかった舞台装置や衣装が作れなかったり、優秀な人材を確保し損ねたりしてしまう。働かせる人数が少ない劇団は動き出しが早くなる分、行えるタスクの量は少なくはなるが、良質なものを獲得しやすい状況となる。このようなリソースの奪い合いは基本的に早い者勝ちなのが世の常だ。

ラウンド開始時に決まった数だけ供給される舞台装置や衣装。これらは早い者勝ちですぐに枯れてしまう。また、4人プレイだといわゆる欠けがなく全て使用するため、残りの数を考慮する必要があり、全てにおいて計画性が大事なゲームと言えるだろう。

また、団員の労務管理も同時に行わなければならない。彼らは基本的に2日連続で働くことができないからだ。1日1人は何とか説得して連勤させることができるだろう。誰を連勤させ誰を休ませれば効率よく仕事を進められるかという判断も腕の見せどころとなる。

俳優業をこなしながらのマネジメントは激務だったが、このような困難に直面することをリチャードは「楽しい」と感じていた。彼は役者としても高い評価を得ていたが、経営者にも向いているのかもしれない、と自分のことを思っていた。

舞台装置は劇場に配置するとボーナスが得られるが、左右対称にしか置くことができない(黄3はオールマイティ)。この配置制限がインタラクションや手番順の重要度を高めていて面白い。

公演まであと4日になる頃には稽古や舞台の準備も進み見通しも明るくなってはきたが、同時に新たな問題も発生していた。

「ウィリアム…ちょっと話がある。問題発生だ。」

3日目の稽古のあと、リチャードは神妙な面持ちでウィリアムに話しかけた。

「問題?稽古も順調だし、衣装も舞台装置も必要なものは揃ってきているが、何があった?」

「カネだよ。ちょっと調子に乗って人を雇いすぎたようだ。彼らの給料は公演後の後払いでね。そこでだ…。」

公演が成功したとしてもその後給料の未払いが明らかになれば、その噂は女王陛下の耳にも届き評価の大幅な下落は避けられないことになる。そのような不名誉な事態はなんとしても避けたいところだ。ちょっとしたピンチとはいえ、リチャードには経営者らしい秘策があった。

「明日通し稽古、リハーサルをやる。そこにパトロンを呼べば、寄付が期待できるだろう。6日目にもやるぞ。」

通し稽古では完成された衣装を着た役者たちが本番さながらの演技をすれば舞台の印象をより良いものにし、訪れたパトロンたちを喜ばせることになるだろう。そうなればいくばくかの寄付への期待ばかりでなく、その際の彼らの評価も本番での評価に少なからず響いてくるのは間違いない。負の影響が出るリスクももちろんあるが、成功した場合のリターンも大きい。ウィリアムは二つ返事で了承した。それまでにできるだけ衣装を完成させていればより評価が上がるだろうが、やるべきことは他にもたくさん残されており、リチャードの仕事は更に悩ましいものとなった。

舞台装置は即時効果をもたらすが、衣装は完成させると勝利点やお金が手に入るほか、4Rと6R終了後に行われるドレスリハーサルを有利に進めることができる。シンプルながら何を重視するか悩ましい。

まるで90分程度に感じられるような怒涛の7日間を過ごした彼らが問題を全て解決し、この公演で成功を収めたならば、彼らの名声は更に高いものになるだろう。そうして彼らは富を得て、リチャードはサザークに新しい劇場を建設し、ウィリアムはストラトフォード・アポン・エイヴォンの自宅にある2番目に良いベッドと家具をより良いものに買い替えることができるはずだ。

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山本 右近
山本 右近
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