グランドオーストリアホテルハナさんのレビュー

ルチアーニ&ジーリによる名作。

グランドオーストリアホテルは、ホテル経営をテーマにした重めの中量級ゲームです。かなり面白かったので感想をレビューします。

(※画像には非正規のアップグレードトークンが含まれています)

・分かりやすさと悩ましさ

まずこのゲームの一番の良さは、テーマからゲームの流れ、仕組みを直感的に理解しやすい分かりやすさとだと思います。

①客をホテルのカフェに誘致

②希望のメニューを提供

③満足した客がホテルに宿泊、勝利点やボーナスが貰える

という一連の動きはテーマからイメージしやすく、それを達成するためのアクションも、どれも非常に明快。そこそこ要素が多くて複雑なのですが、重さのわりにはかなりプレイしやすいと感じました。

それでいて、ちゃんと悩ましいのが素晴らしいですね。アクション自体はとにかく明快なのですが、アクションの選択方法であるダイスドラフトが良いスパイスになっています。「今やりたいアクション」と「強く打てるアクション」がなかなか一致せず、やりたいアクションを優先して強いアクションをスルーすると後続プレイヤーを利するというジレンマが効いています。逆に強いアクションばかり選択していても肝心のホテル経営が立ち行かず、、常に難しい選択を迫られます。

・大量のユニークカード

ホテルを訪れる顧客カードがけっこう個性的だったり、ホテルの業務をサポートしてくれるスタッフカードがなんとなくその業務をイメージさせる能力を持っていたりと、こちらもホテル経営のテーマにうまくマッチしています。見ていて楽しくなります。

テーマ性だけでなく、カード間のコンボや展開の多様化にも繋がり、ゲーム的にも好印象。

カードにかなり強弱がある点は好みが分かれそうです。個人的には、オールユニークのカードゲームは強さにムラがあった方が楽しいと思っているので問題ないですが、カードの引き運で負けるのが許せない人には合わないかもしれません。

・ダウンタイムとプレイ人数

他のレビューを拝見しても、皆様漏れなく待ち時間を指摘してますね。これはスネークドラフトを採用しているのが最大化の要因だと思います。スネークドラフト(カタン周り)はABCDDCBAの順番でドラフトする事。これだとAの人は1手番プレイしたら6手番待たないと次の手番が回ってきません。手番順による差の緩和のためとはいえ、さすがに4人プレイの6手番待ちは長すぎ感があると思います。ベストプレイ人数は2人、多くても3人までがおすすめです。

拡張に手番順を時計回りにするルールが収録されているので、4人でやるなら採用したいところです。

・ミスに対して不寛容

ゲーム自体は分かりやすくてプレイしやすいのですが、金欠や皇帝トラック、微妙な顧客カードを呼び込んだ時など、プレイミスの代償がかなり大きいシビアな面も感じました。

金欠に関しては「お金を入手するためには、ある程度お金や時間がかかる」というのを知らない初回が特に問題で、無策で資金が尽きると建て直しがかなり難しい印象でした。

他にも「条件が厳しい客をうっかり呼び込んだら、何ラウンドもカフェに居座られた」みたいな展開に対する打開策が少なく、ゲームが結構長いので、プランが崩れた後の消化試合感は難点かもしれません。

【まとめ】

テーマとゲーム内容が上手くリンクしており、分かりやすくてプレイしやすい傑作中量級ゲームでした。ダイスやカードの引きによる揺らぎも、適度にプレイ感を丸くしていて良いと思います。

ダウンタイム等の明確な弱点や、シビアな側面は確かにありますが、ある程度長めのゲームに抵抗がなければ幅広い人におすすめしたいです。